生体を構成する細胞は多様な機械的刺激を受けている.細胞が力学的なシグナルを感知し,応答することは,細胞の形態,運動,増殖,分化の制御や恒常性維持に必須である.細胞のメカノセンシングにおける細胞骨格,細胞接着の役割と制御機構について概説する.
安定同位体利用NMR技術の高度化により,高分子量のタンパク質,およびタンパク質複合体に関する多彩なNMR構造情報の入手が可能となるとともに,NMR法によってのみ解明できるタンパク質‒薬剤複合体界面の揺らぎの検出等,新たな応用分野が拓ける.
植物細胞の細胞質分裂は,主に微小管から成る細胞質分裂装置の中に形成される細胞板の拡大成長により実行される.植物の細胞質分裂に必須の制御系として同定されたMAPキナーゼカスケードの特徴と植物の細胞質分裂における役割を紹介する.
自然免疫において中心的な役割を果たすToll様受容体(Toll-like receptor:TLR)の構造生物学的な研究が進展してきた.本稿では,これまで明らかになったTLRによるリガンド認識とシグナル伝達機構に関して紹介したい.
PNKPはDNA修復の際にDNA損傷末端をリン酸化および脱リン酸化する活性を持つDNA修復酵素である.本稿ではマウスを用いた実験系により,PNKPが脳神経の発生時におけるゲノム安定性維持に必須であることを明らかにしたので紹介する.
ジストログリカンは,細胞外基質分子と結合し組織構造の維持に寄与する接着分子である.ジストログリカンのリガンド結合活性を担う糖鎖の構造と生合成機構,およびその修飾不全が引き起こす大脳皮質形成異常の発症機序に関する最近の知見を紹介する.
細胞外脂質輸送を制御するアポリポタンパク質群は,可逆的な脂質結合能ゆえに不安定なフォールディング構造を有し,変異や酸化修飾によってアミロイド化を起こしやすい.本稿では,HDLタンパク質アポA-Iによるアミロイド線維形成機構について紹介する.
侵襲的虚血負荷の前に非侵襲的虚血を経験しておくと虚血傷害が劇的に軽減される現象「虚血耐性」は,グリア細胞,特にアストロサイトの活性化が必須であること,その分子メカニズムとしてP2X7/HIF-1α経路が重要であることを明らかとした.
“対人関係やコミュニケーション能力の障害”,“興味の限局と反復的で常同的な行動”を特徴とする自閉症には遺伝素因が深く関わっていると考えられている.筆者がこれまでに行ってきたCAPS2遺伝子を中心とした自閉症の遺伝子研究に関して紹介する.
ラジカルSAM酵素は鉄硫黄クラスターにより生成した5-デオキシアデノシルラジカルを利用して各種の難化学反応を触媒する.本稿ではその特徴について概説するとともに,ペプチドを分子内架橋する新規ラジカルSAM酵素に関する研究成果を紹介する.
MUC1は上皮組織に普遍的に発現する膜結合型ムチンであり,腫瘍の悪性化に関与するとされてきた.その分子的背景について,MUC1へのレクチンの結合により惹起されたシグナルが,腫瘍の悪性化をもたらす新規な機構を明らかにした.
上皮細胞はトランスポーターやチャネルなどのタンパク質を介してさまざまな物質の吸収や排泄を行っている.本稿では膜輸送体分子の機能・局在制御に関わる足場タンパク質の一種であるエズリンの生体内における役割について紹介する.
核内にはクロマチンに加え,タンパク質やRNAから構成される核内ボディが存在する.近年,核内ボディの機能の一つに,遺伝子転写制御が示唆されている.本稿では核小体やPMLボディを例にあげ,核内ボディによる転写制御について概説する.
HIVの侵入には,HIV外被タンパク質Envを介した膜融合を伴う.近年,膜融合の発生箇所およびタイミングの多様性が明らかになってきた.本稿では複雑化する最新の研究動向と,動的側面の理解のために筆者らが開発した方法論を概説する.
環境水と接する魚類の皮膚は,水中に多量に存在する細菌に対する生体防御においてきわめて重要な役割を担っている.魚類の皮膚粘液にはさまざまな種類のレクチンが存在しており,体表の重要な防御因子として機能している.そのいくつかを紹介する.
最近,単粒子解析法により,生体高分子複合体などの立体構造が原子モデルを決定できる分解能で解析できるようになった.そこで,本稿では,高分解能解析が可能となった背景を概説する.また試料調製法や,特に膜タンパク質への応用について述べる.
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