本稿では,形態形成に関わる多彩な集団細胞移動メカニズムについて解説する.リーダー細胞に先導される移動と,協調により自律的に動く移動の二つのモデルを通じて,細胞集団の秩序と動態の仕組みを紹介し,その生物学的意義を考察する.
ゲートウェイ(G)反射は,神経伝達物質と炎症性サイトカインIL-6を介して病態形成を制御する新しい神経系-免疫系クロストーク機構である.本稿では,G 反射機構の概説に加えて神経反射の最近の話題も議論する.
進行がんの治療はこの20年間で急速に進歩し,かつて平均生存期間1 年とされた進行がんでも,タイプによっては平均で5年以上の生存期間が期待できる時代となった.しかし薬剤耐性による再発が課題となっており,耐性機構の解明と克服法の発見が喫緊の課題である.
脳神経回路のシナプス伝達において,余剰量のグルタミン酸は速やかに回収される必要がある.我々は,神経細胞膜上のDSCAMとグリア細胞膜上のGLASTの相互作用が,余剰グルタミン酸の回収およびシナプス形成に重要であることを見いだした.
お腹がすいたときの「食べ物の匂い」は格別であるが,そのとき,匂いの識別だけでなく代謝機能にもスイッチが入る.脳からの指令で,まもなく始まる食事の代謝に備えるためだ.糖尿病の防止にも関与しており,嗅覚と代謝の連係は,今,注目の分野である.
光遺伝学は,光を使って細胞の活動を制御する技術である.近年,我々は,光でPLC活性を制御する新ツールを開発し,シナプス可塑性や恐怖記憶形成の制御に成功した.これにより,従来困難だった神経可塑性に関わる細胞内シグナルの精密な制御が可能となった.
DNA損傷の効率的な認識を保証するクロマチン構造動態については,いまだ不明な点が多い.本稿は,哺乳類ヌクレオチド除去修復の損傷認識機構を概説した後,著者らが近年発見した,ヒストン修飾を介して損傷認識を補助する新たな分子機構について紹介する.
上皮細胞は隣り合った細胞のMHC-I を認識することで異常な細胞を排除することがわかってきた.本稿では,これまで哺乳類細胞競合現象で見いだされてきた上皮細胞による異常細胞の排除機構,特に正常‒がん変異細胞間の相互作用について概説する.
我々はCas9を用いたタグのノックインによって生理的な発現状態でゴルジ体と糖鎖合成酵素の局在を解析し,ゴルジ体が直径1~3 μmのダイナミックに変形するユニットからなり,ユニットの辺縁を小さいゾーンを形成した酵素が動き回ることを明らかにした.
いまだ研究の進んでいない深海環境のメタゲノム情報を用いてβ-GalNAcに作用する酵素を探索したところ,既知酵素と配列類似性のない4系統の酵素群を発見した.これらの酵素群の網羅的なX線結晶構造解析から,β-GalNAcに作用する酵素の分子進化を考察したので紹介する.
ゴルジ体内の糖転移酵素は,異なる槽やサブ領域に分布し,糖鎖修飾を担っている.本稿では,糖転移酵素のゴルジ体における局在およびその局在メカニズムに関して,最近の筆者らの知見を含めて紹介する.
植物の分泌型ペプチド・タンパク質はしばしば機能的冗長性が高い遺伝子ファミリーを形成しており,逆遺伝学的解析を困難にしている.一方,それらの翻訳後修飾が機能に必須であることに着目すると,修飾酵素変異株の表現型変化を手がかりにした機能探索が可能となる.
線虫C. elegansを用いた研究から,これまで謎であった体内受精する動物の早期多精拒否機構にRING-CH型ユビキチンリガーゼMARC-3を介したユビキチン化機構が関与することが明らかとなってきた.
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