アミノ酸はタンパク質の構成成分,栄養素やエネルギー源,呈味性だけでなく,細胞内で多彩な生理機能を担っている.本稿では,基礎・応用研究の両面で重要な酵母におけるアミノ酸の代謝調節機構と生理機能,産業応用に関して,筆者らの研究を中心に概説する.
ミトコンドリアは生命維持に必要不可欠な役割を担っており,ミトコンドリアの機能異常は,がん,虚血性疾患,神経変性疾患,代謝異常症,ミトコンドリア遺伝病など種々の疾患を誘発する.そのため,ミトコンドリアを標的とした分子送達技術(drug delivery system:DDS)は,医療・ライフサイエンス分野の発展に大きく貢献すると期待されている.本稿では,著者らが創製したミトコンドリアDDSである“MITO-Porter”,および本DDSを活用した細胞治療に関する研究を中心に紹介する.
ミトコンドリアと小胞体の接触領域(mitochondria-ER contact sites:MERCs)は両オルガネラの機能調節のみならずさまざまな情報発信の足場として細胞全体の機能を調節することがわかってきた.本稿では小胞体からミトコンドリアへの鉄供給機構を中心に最新のMERCsの役割を紹介する.
リン酸化反応は生物機能の根幹となるシグナルを担っており,それを担うプロテインキナーゼは各種疾患においても責任酵素として同定されてきた.本稿ではセリン/トレオニンキナーゼの一つCK2(遺伝子名CSNK2)を取り上げ,生理的およびがん病態と関連する機能について,核内局在との関連も併せ紹介する.
生後発達の過程において,神経回路はダイナミックに再編されることにより機能的な情報処理回路へと成熟する.本稿では,多様なE3ユビキチンリガーゼによる神経回路再編の時空間制御メカニズムについて紹介する.
ヒト免疫不全症ウイルスI型(HIV-1)の被膜は,宿主細胞膜と比べて特定の脂質が濃縮されている.この濃縮機構を解明するために,細胞膜上でのウイルスタンパク質と宿主脂質の相互作用を,特異的脂質プローブとさまざまな顕微鏡法を用いて定量的に解析した.
リソソームストレスは,多機能分子p62とNBR1の液‒液相分離を介したp62/NBR1液滴の形成を引き起こす.興味深いことに,リソソームストレス誘導性p62/NBR1液滴は,細胞の運動能を強力に制限することでがん細胞の遠隔転移を抑制する.
微生物は植物の多糖類に適応したさまざまな酵素を駆使して植物の多糖類を分解している.本稿では,陸上植物の細胞壁を構成する多糖類であるキシログルカンの分解に関わる酵素の機能と構造に焦点を当てる.
トランスポーターなどの膜輸送体は,その重要性にもかかわらず必ずしも研究が進んでいない.我々は生体から分子までの各階層をマルチオミクスや再構成系で解析し,輸送基質を軸として階層間をつなげることで,膜輸送体の生体内における機能を明らかにすることを目指した.
本稿では,代謝酵素の基質特異性を変えるためのアプローチとして,シミュレーションや機械学習を利用した最新の手法を紹介する.これにより,酵素の大規模な配列空間から有効な箇所を集中的に探索することや基質ポケットのリモデリングが可能となっている.
細胞内外へ漏出したmtDNAは炎症を強く誘導し,ヒト炎症性疾患の病態形成に関与することが明らかにされつつある.本稿では,ミトコンドリア傷害により漏出したmtDNAによる炎症誘導機構とヒト疾患との関連について,筆者らの研究を含めて紹介する.
筆者は最近,「幸せホルモン」オキシトシンを高感度に感知できる遺伝子コード型蛍 光センサーMTRIAOTの開発に成功した.本稿ではMTRIAOTの開発ストラテジーとin vivo計測への応用例について紹介する.
This page was created on 2023-12-19T07:25:03.118+09:00
This page was last modified on 2023-12-19T07:59:28.155+09:00