ホスファチジルセリンは,細胞膜において非対称に分布するリン脂質であり,その分布の変化はさまざまな生体反応を引き起こす.ホスファチジルセリンの分布を制御する分子,フリッパーゼの機能について概説する.
睡眠覚醒など約24時間周期の生理リズムを生み出す仕組みは概日時計と呼ばれる.本稿では,哺乳類における概日時計の分子メカニズムを概説するとともに,最近の我々の研究成果として特に,時計因子の転写後および翻訳後制御に関する研究を紹介する.
神経終末には比較的電子密度が高いアクティブゾーンと呼ばれる構造体が存在し,シナプス小胞の動態を時空間的に制御している.本稿では,CAST/ELKSタンパク質ファミリーの機能解析を中心にアクティブゾーンの分子構造基盤とその生理機能について概説する.
微小血管周囲に存在するペリサイトは,長らく機能不明な細胞として扱われてきたが,近年ペリサイト関連ノックアウトマウスの作出などによって科学的意義が解明され始めた.本稿では,ペリサイトのheterogeneityと病態への関与について最近の話題を総括する.
悪性がん細胞におけるミトコンドリアの品質管理は細胞の生存・増殖のために必須である.我々は,転写因子E2Fファミリーの新規メンバーであるE2F3dを同定し,マイトファジー受容体として働くことでミトコンドリアの品質管理に関与することを発見した.
植物の葉緑体には細胞内共生に由来する多コピーのDNAが存在する.この過剰なDNAは,遺伝情報であるだけでなく,特異的ヌクレアーゼにより分解されて再利用されることで,リン貯蔵の役割も担っていることが最近明らかにされた.
本稿では,体外からの補給が必要な栄養素である単純糖質について,その摂取を調節する機序の一端を担う臓器連関シグナルfibroblast growth factor 21(FGF21)-オキシトシン系と,その学習適応について概説する.
生物活性化合物の創薬展開において,これら化合物が標的とするタンパク質の同定や機能解明は不可欠である.本稿では,創薬標的タンパク質の精製・ラベル化ツールの開発について,著者らの研究成果を含めて解説する.
本稿ではmicroRNAと肝臓におけるインスリン抵抗性との関わりについてこれまでの報告をまとめ,近年我々が明らかとしたイントロン性microRNAであるmiR-676とそのホスト遺伝子Edaによるインスリン抵抗性惹起メカニズムを解説する.
SNAP-23は,マクロファージにおいてファゴソームの形成と成熟を担うSNARE タンパク質(膜融合装置)である.最近,各ステップのSNAP-23機能は,Ser95 のリン酸化により調節されることがわかった.その生理的意義なども含めて紹介する.
アミノアシルtRNAのアミノ基をアセチル化して翻訳過程を阻害するトキシンとその活性を抑制するアンチトキシンの複合体構造解析から,アンチトキシンが活性型である二量体トキシンの二量体形成を阻害し,トキシンの活性を抑制することが明らかになった.
日本人に多い脳血管疾患もやもや病の責任遺伝子としてミステリンをクローニングした.ミステリン遺伝子にコードされるユニークな巨大複合体ATPアーゼ/ユビキチンリガーゼが,脂肪滴に局在して脂肪代謝制御に働くことを見いだした.
振動分光により得られる分子の指紋を,高速かつ高効率に取得できるcoherent anti-Stokes Raman scattering(CARS)分光を用いたラベルフリー・マルチカラーイメージングについて解説する.
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