細菌はセカンドメッセンジャーとしてc-di-GMPを用いて環境応答を行う.この応答には数多くのc-di-GMP合成分解酵素と結合タンパク質が関与する.本稿では,Vibrio属菌におけるc-di-GMPに関する研究を中心に解説したい.
転写因子NFATは,遺伝子ファミリーを形成して機能分担することで,多くの生体イベントや疾患に重要な役割を果たす.各アイソフォームの機能的相違に基づき,それらを個別制御する意義と,その実現に向けた分子機構に関する研究成果も含め概説する.
細胞壁を持たないモリクテス綱細菌の3種類の独自の運動能を明らかにしたところ,そこには,シアル酸受容体,ATP合成システム,アデノシルホモシステインヌクレオシダーゼ,細菌アクチンホモログなどを起源とする驚愕のメカニズムが満載されていた.
コンデンシンIは分裂期の染色体凝縮に必須のマルチサブユニット複合体であり,その機能の破綻はがんや小頭症などの発症につながる.本稿では,構造解析により最近明らかとなったHEAT-kleisinサブユニット間相互作用とその生理機能を紹介する.
iPS 細胞を使った再生医療は実用化に向けて研究が進んでおり,臨床研究,臨床試験が続々と開始されている.本稿ではiPS細胞の持つ分化指向性のバラツキについて,最近の新しい知見と問題点について,分化指向性マーカーSALL3を中心に解説する.
筋ジストロフィー症に関わるO-マンノース型糖鎖には,リビトールリン酸というユニークな糖アルコールが含まれる.我々は,リビトールリン酸転移酵素であるFKRPの立体構造を決定し,その反応機構および患者変異との関係を明らかにした.
幼若なニューロン分化細胞の頂端側突起のアドヘレンスジャンクションに局在し,脳室面から離脱させる実行役分子Lzts1を同定した.Lzts1は神経前駆細胞の分裂方向を変化させouter radial glia(oRG)誕生にも関与する.
プロテアソームは異常タンパク質を速やかに分解することでプロテオスタシス維持に貢献しているが,その時空間的制御は不明である.今回我々は,高浸透圧ストレス下でプロテアソームが核内で相分離し,分解のための液滴を形成することを見いだしたので紹介する.
骨軟部肉腫には疾患特異的な融合遺伝子が存在する.我々は,融合遺伝子をマウス胎仔の間葉系細胞に導入することによって,Ewing肉腫,胞巣状軟部肉腫,CICDUX4肉腫,滑膜肉腫のモデル化を達成した.モデル化によって明らかになった肉腫の特性を概説する.
細胞外O-GlcNAcは,上皮成長因子様ドメインを含む糖タンパク質に限定されたユニークな修飾である.最近の研究で,細胞外O-GlcNAcの生物学的機能の一端が明らかにされた.本稿では,本研究室の知見を中心に,細胞外O-GlcNAcの構造と機能について紹介する.
腎臓病の病態生理を理解するためには複雑な細胞ネットワークを包括的に捉える手段が必要である.本稿では,我々が行ったCUBICによる腎臓病の3次元病態解析(CUBIC-kidney)を中心に組織透明化を用いたさまざまな腎臓研究を概説し,最新の技術的発展についても紹介する.
SDS-FRL法はおよそ25年前に日本人の手により発明され,その後,神経科学研究への応用を介して世界中で利用される技術となった.本稿では,この手法による膜分子局在解析の技術的特徴とこの手法ならではの解析結果について概説する.
セマフォリン3Aは難治性かゆみの一因となる表皮内神経線維の増生を制御する.正常ヒト表皮におけるセマフォリン3Aの発現は,表皮のカルシウムイオン濃度勾配の初期段階である基底層~有棘層下層で,MEK/ERKとAP-1によって制御されていることが明らかとなった.
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