Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
SEIKAGAKU: Journal of Japanese Biochemical Society 87(1): 56-63 (2015)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2015.870056

特集「核‒細胞質間分子輸送システム:基本分子メカニズムの理解とその応用」Special Review

核膜孔複合体内部構造とインポーティンβ依存的物質輸送の分子基盤の理解Inner architecture of the nuclear pore complex and molecular mechanism of importin β-dependent nuclear transport

京都大学大学院生命科学研究科Graduate School of Biostudies, Kyoto University ◇ 〒606-8501 京都府京都市左京区吉田近衛町Yoshida-Konoe-cho, Sakyo-ku, Kyoto-shi, Kyoto 606-8501, Japan

発行日:2015年2月25日Published: February 25, 2015
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核膜孔複合体という巨大なタンパク質複合体の構造解明が進んでいる昨今,孔内部の詳細な分子配置・構造的性質の解明が待たれる.構成サブユニットの一次構造からFGモチーフの重要性が指摘されてきたが,水酸基を持つアミノ酸の高い含有量や,天然変性領域の存在など,ほかにも数多くの構造的特徴を持つ.in vitroおよびin vivoでの解析から,核膜孔内部は疎水基と親水基が混在した複雑な分子クラウディング環境を形成していると考えられ,これが分子の自由拡散を阻害している.インポーティンβなどの輸送因子は,HEATモチーフと呼ばれる両親媒性αヘリックスに富む構造をしており,この構造的柔軟性が疎水性クラウディングを通過するのに適している.これはインポーティンβのみならず,多くのHEATモチーフを含むタンパク質が持つ性質であり,新たな部類の輸送因子の存在を示唆する.

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