最近,炎症や細胞死の原因となることから,酸化リン脂質が非常に注目を集めている.そこで本稿では,その分子情報を得るために有用な,脂質過酸化連鎖反応中心である脂質由来ラジカルおよび酸化リン脂質の検出・構造解析技術に関する最近の 知見を紹介する.
間期植物細胞では微小管は細胞表層で誕生し,多様なパターンを形成する.微小管異常は左右性を持つねじれや極性伸長異常をもたらす.また,乾燥ストレスに応答して表層微小管は一時的に不安定化する.独自の進化を遂げた植物微小管の制御機構を概説する.
シアノバクテリア特異的な光受容体であるシアノバクテリオクロムは,結合色素や色調節機構が多様化することで,さまざまな光質を感知することが可能となっている.本稿では,特に結合色素に着目して,その多様性を概説する.
ミトコンドリア外膜上では,ミトコンドリアダイナミクス,炎症応答,ミトコンドリアの品質管理など細胞に重要なさまざまな機構が制御されている.本稿では,ミトコンドリア外膜貫通型ユビキチンリガーゼMITOLに関する知見を紹介する.
がん細胞に発現するPD-L1は免疫細胞上のPD-1に結合することで免疫寛容を引き起こす.近年,細胞内のPD-L1に焦点を当てた研究が進められ,免疫寛容以外の新たな機能が明らかにされつつある.本稿では細胞内PD-L1の機能をいくつか紹介する.
多くの膜タンパク質は,膜型プロテアーゼによる切断,いわゆるエクトドメインシェディングを受け,さまざまな生理的機能を発揮する.この役割を理解するためには,切断部位の同定が必要不可欠である.プロテオミクスによるシェディング研究の現状を概説する.
我々は,セレノプロテインP(SELENOP)mRNAと相補的な配列を持つ機能不明の遺伝子CCDC152を発見した.CCDC152はRNAとして機能し,SELENOPの翻訳を抑制するlncRNA(L-IST)として機能することを明らかにした.
変性したかのような構造を持ちながらも機能する天然変性タンパク質(IDP)は構造タンパク質とはかなり性質を異にするため,その構造解析は従来技術では難しい.高速原子間力顕微鏡によるIDP分子の直接観察はアミノ酸残基レベルでの動的構造解析を可能にした.
筆者らは,トランスゴルジネットワークから細胞膜への構成性分泌経路を仲介するCARTS輸送小胞を発見した.本稿では,その生化学的特徴および,小胞体‒ゴルジ体膜接触部位を介した脂質輸送がCARTS形成を制御する仕組みについて解説する.
正常上皮細胞層に少数のRasV12発現誘導細胞(RasV12細胞)が生じると,RasV12細胞は頭頂側に逸脱し,排除される.正常細胞とRasV12細胞の境界に着目した電顕解析により,cdc42-FBP17経路を介して形成されるfinger-like protrusionが,正常-RasV12細胞間の相互認識の仕組みとして機能する可能性が示された.
近年,アミロイドを酸素化する化学触媒(=酸素化触媒)の創製,およびこれを利用した神経変性疾患の治療法開発が進められている.本稿では,光照射条件下で機能する酸素化触媒によるアミロイドの性質変化や臨床応用を目指した研究展開について概説する.
オートファジーは主にオルガネラやタンパク質の分解機構として解析されてきた.一方で,オートファジーによるRNA分解は既存の研究で示唆されつつも,理解が遅れている.本稿では,最近明らかになってきたオートファジーによるRNA分解について概説する.
CD133は,がん幹細胞マーカーとして広く知られており,細胞膜のみならずエンドソームとして中心体に局在することが知られている.ここでは,CD133エンドソームによるオートファジー制御機構と非対称分裂の関連について紹介したい.
筆者らは,中心体タンパク質のCEP76が,細胞分裂の進行に必要な重要キナーゼPLK1の適切な活性制御を介して,PLK1の凝集抑制や紡錘体の配向維持に寄与することを明らかにした.本稿では,分裂期PLK1の制御に関するこれまでの知見と本研究の内容を概説する.
真核生物では,さまざまなストレスに対して共通したストレス応答「統合的ストレス応答」が活性化され,細胞運命が決定される.本稿では,統合的ストレス応答の制御異常がもたらす疾患発症と,その治療薬開発について解説する.
コロナウイルスの世界的感染拡大の一方で,ひっそり息を潜めているインフルエンザウイルス.A型インフルエンザウイルスの細胞内侵入を制御する宿主因子HDAC6およびTNPO1の分子機能を紹介する.
細胞分裂期中期でみられる染色体動態,染色体オシレーションを介した染色体分配の堅牢性を維持するために必要な新たな染色体分配制御機構について紹介する.
小児がんのように全ゲノム解析を行ってもドライバー変異がきわめて少ないがんが存在する.網羅的DNAメチル化解析で見いだした低メチル化エンハンサー領域よりWntシグナルの標的遺伝子に結合する分化制御因子ASCL2を同定した一連の解析例を紹介する.
液液相分離によって生じた単一液滴のラベルフリー解析手法としてラマン顕微鏡を提案する.疾病関連タンパク質であるataxin-3の液滴を試料として,ラマン顕微鏡を用いた液滴内タンパク質の濃度定量や分子構造などについて検討した結果を紹介する.
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