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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
SEIKAGAKU: Journal of Japanese Biochemical Society 87(1): 82-90 (2015)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2015.870082

総説Review

水素医学の創始,展開,今後の可能性広範な疾患に対する分子状水素の予防ならびに治療の臨床応用へ向かってInitiation, development and potential of hydrogen medicine: Toward therapeutic and preventive applications of molecular hydrogen against a variety of diseases

日本医科大学大学院医学研究科細胞生物学分野Department of Biochemistry and Cell Biology, Graduate School of Medicine, Nippon Medical School ◇ 〒211-8533 神奈川県川崎市中原区小杉町1-3961-396 Kosugi-machi, Nakahara-ku, Kawasaki-shi, Kanagawa 211-8533, Japan

発行日:2015年2月25日Published: February 25, 2015
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水素分子(H2)は不活性で,哺乳類細胞内では機能を持ちえない分子と考えられてきた.筆者らは,水素が細胞中ではヒドロキシルラジカル(·OH)のような酸化力の強い物質を消去することを示し,従来の概念を変換した.そして,水素が疾病予防や治療に応用しうることを提唱した.水素は組織や細胞の中に迅速に拡散し,酸化還元反応系を乱すこともなく,活性酸素種によるシグナル伝達を阻害することもない.さらに水素は,遺伝子の発現を制御することで抗酸化作用を示す上,抗炎症作用,抗アレルギー作用,抗アポトーシス作用を示し,さらにエネルギー代謝を活性化させる.実験動物モデルで得られたエビデンスが蓄積していることに加え,広範な臨床試験が実施され,現在も実施中である.従来の医薬品の多くが標的に特異的に作用するので,水素は従来の医薬品とは異なる概念を持つ.

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