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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 87(2): 183-187 (2015)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2015.870183

総説Review

肥満と肝がん腸内細菌と細胞老化の関与についてObesity and liver cancer: The roles of gut microbiota and cellular senescence

1大阪大学微生物病研究所Research Institute for Microbial Diseases, Osaka University ◇ 〒565-0871 大阪府吹田市山田丘3番1号3-1 Yamadaoka, Suita-shi, Osaka 565-0871, Japan

2公益財団法人がん研究会がん研究所The Cancer Institute, Japanese Foundation for Cancer Research (JFCR) ◇ 〒135-8550 東京都江東区有明三丁目8番31号3-8-31 Ariake, Koto-ku, Tokyo 135-8550, Japan

発行日:2015年4月25日Published: April 25, 2015
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肥満は糖尿病や心筋梗塞のリスクを高めるだけでなく,さまざまながんの発症率を高めることが知られており,近年先進国でみられるがんの発症率増加原因の一つになっていると考えられている.このため,がん予防の観点からも肥満の防止が重要であることは明らかであるが,残念ながら肥満人口は世界中で増加の一途をたどっている.したがって,肥満防止の取り組みだけではなく,肥満してもがんを発症しないようにする方法の開発も行ってゆく必要がある.これまで,肥満に伴う発がん促進機構については不明な点が多かったが,炎症反応がその中心的な役割をしていることが明らかになってきた.では,なぜ,肥満すると炎症反応が起こるのだろうか? 最近,我々はマウスを用いた実験により肥満によって増加した腸内細菌の代謝産物が肝臓に運ばれ,肝星細胞に細胞老化を起こさせることで炎症反応が起き,肝がんの発症が促進されることを見いだした.そこで,本稿では肥満に伴う肝がんの発症を腸内細菌と細胞老化の関係から見直すことで肝がん発症機序の解明とがん予防の可能性に迫る.

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