がん原遺伝子産物PPM1Dの細胞がん化機構および創薬を指向した阻害剤
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発行日:2015年10月25日
DNA損傷に応答し,p53依存的に誘導されるMg2+- or Mn2+-dependent protein phosphatase(PPM)ファミリーホスファターゼとして同定されたPPM1D(Wip1)は,乳がんや卵巣がんなどのさまざまながん細胞においてその遺伝子増幅や過剰発現が報告されており,抗がん剤の標的として大きく注目されている.PPM1Dはがん抑制タンパク質p53や,細胞周期制御に関わる多くのタンパク質を脱リン酸化・不活性化し,p53経路を含むさまざまな経路を負に制御している.PPM1Dを標的とした抗がん剤を開発するためには,PPM1Dの機能制御機構およびその発がん機構を詳細に解析していくことが必要である.本稿では,PPM1Dの構造や基質認識機構,PPM1D過剰発現による細胞がん化機構について概説するとともに,近年報告されているPPM1D特異的阻害剤について紹介する.
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