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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 87(5): 560-572 (2015)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2015.870560

総説Review

ガングリオシドファミリーの分子種選択的発現と生理活性脂質としての意義Physiological significance of distinct expression of ganglioside moleculer species as bioactive lipids

東北薬科大学分子生体膜研究所機能病態分子学教室Division of Glycopathology, Institute of Molecular Biomembrane and Glycobiology, Tohoku Pharmaceutical University ◇ 〒981-8558 宮城県仙台市青葉区小松島四丁目4番1号Komatsushima 4-4-1, Aoba-ku, Sendai-shi, Miyagi 981-8558, Japan

発行日:2015年10月25日Published: October 25, 2015
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スフィンゴ糖脂質は,セラミドにグルコース,ガラクトース,N-アセチルグルコサミン,N-アセチルガラクトサミン,シアル酸などの糖が酵素により段階的に付加したもので,とくにシアル酸を含むスフィンゴ糖脂質をガングリオシドと呼ぶ.糖鎖構造による約60種,セラミド構造による約40種の構造多様性により,理論的には2400種という膨大な数の分子が存在しうる.我々はこのように多様なガングリオシド分子種をなぜ必要とし,個々の細胞や組織・器官に選択的かつ特異的な発現機構をどのように獲得したのか,その生物学的意義は何か.進化の過程で獲得されたスフィンゴ糖脂質の分子種多様性は,生体恒常性の維持に必須であることは疑う余地はない.本稿では,スフィンゴ糖脂質生合成阻害剤の開発を契機として始まった筆者のライフワークであるスフィンゴ糖脂質研究の軌跡の中から,インスリン抵抗性発症におけるガングリオシドの関与とマイクロドメイン病の提唱,T細胞レパトア選択におけるガングリオシドの選択的発現と分子種特異的機能,GM3合成酵素欠損と聴覚機能障害について述べ,残されたスフィンクスの謎解きへの道標を探ってみたい.

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