抑制性免疫補助受容体PD-1によるがんと自己免疫の制御
徳島大学疾患プロテオゲノム研究センターゲノム情報部門ゲノム機能分野 ◇ 〒770-8503 徳島県徳島市蔵本町三丁目18番15号
発行日:2015年12月25日
免疫応答を利用することによりがんを治療する試みは,古くから精力的に行われていたものの期待するほどの効果は得られず,治療法として確立されるには至っていなかった.近年,抑制性免疫補助受容体PD-1の機能を阻害することにより,抗腫瘍免疫応答が増強され,腫瘍が排除されうることが,さまざまながん腫に対する臨床試験において示された.このことから,がん細胞に対する免疫応答が実際に生体内で惹起されているものの,PD-1をはじめとした免疫抑制機構によって無力化されていること,また,がんに対する免疫療法においては,免疫応答を増強するよりも,免疫逃避機構を破綻させることがより重要であることが明らかとなった.一方で,PD-1は自己に対する不適切な免疫応答や,過剰な感染免疫応答を抑制することから,PD-1シグナル阻害の副作用として自己免疫疾患や劇症型感染症を発症する危険性がある.本稿では,これまでに明らかとなっているPD-1の機能およびPD-1シグナル阻害によるがんの治療について概説する.
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