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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 88(1): 128-134 (2016)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2016.880128

みにれびゅうMini Review

Ca2+シグナルから解明するアストロサイト機能Clarification of astrocytic function through Ca2+ imaging

東京大学大学院医学系研究科細胞分子薬理学教室Department of Pharmacology, Graduate School of Medicine, The University of Tokyo ◇ 〒113–0033 東京都文京区本郷7–3–1医学部教育研究棟8階 細胞分子薬理学教室 ◇ Hongo 7–3–1, Bunkyo-ku, Tokyo, 113–0033 Japan

発行日:2016年2月25日Published: February 25, 2016
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1. はじめに

アストロサイトは,ニューロン等の脳細胞の間隙を埋めるように無数の微細突起を伸ばし,あらゆる脳細胞に接触するグリア細胞である.この形態的特徴の意義を裏づけるように,アストロサイトがシナプス伝達,脳血流,神経細胞死といった重要な生理/病理機能に関与することが多くの研究から示唆され,注目を集めている.アストロサイトの活動性は,細胞内カルシウム濃度上昇(Ca2+シグナル)でモニターすることが可能であり,これを可視化するCa2+イメージングを用いた研究が世界的に行われている.本稿では,このような手法を用いて著者らが見いだしたアストロサイト機能を中心に紹介する.また,Ca2+シグナル解析のための新しい手法も紹介する.

2. 損傷治癒を促進するアストロサイトCa2+シグナル

てんかんや梗塞,脳挫傷などがもたらす中枢神経系の損傷は,神経細胞死による脳機能の低下を誘発しうる.このような病態下では,損傷部位近傍のアストロサイトは形態変化を伴う大規模な遺伝子発現変動を起こし,反応性アストロサイトへと分化する.反応性アストロサイトは,炎症性サイトカインの放出やプロテオグリカンの発現などにより神経細胞死を誘発あるいは軸索の再投射を妨げるといった負の作用を持つことが知られていた1, 2).しかし,反応性アストロサイトを遺伝子工学的に除去することが可能なマウスに脳傷害モデルを適用した実験において,生存する神経細胞数の減少や脳実質に浸潤する血球細胞の増加,軸索再生の抑制といったダメージが増加する傾向が現れたことから,反応性アストロサイトが神経保護的な作用を持つことが示された3).このように反応性アストロサイトは,脳傷害からの回復過程で正と負の相反する作用を持つ.これらを人為的に操作できれば脳疾患治療への貢献が期待できるが,アストロサイトが正と負の相反する作用を発揮するメカニズムの多くは不明であるため,そのような応用は難しいのが現状である.

脳傷害時には,アストロサイトは物理的刺激や神経伝達物質,損傷した細胞からの細胞内容物などにさらされる.これらはいずれもアストロサイトのCa2+シグナルを惹起する刺激となる.Ca2+はさまざまな細胞機能を仲介する細胞内メッセンジャーである.筆者らはまず,反応性アストロサイトの形成過程および表現型獲得にCa2+シグナルが関与する可能性を検証した.

はじめに,脳損傷時にアストロサイトCa2+シグナルが惹起されるかを,二光子励起顕微鏡を用いたin vivoイメージングにより検証した.マウス大脳皮質の一部領域に高出力レーザーを照射して損傷刺激を与えると,周囲のアストロサイトでCa2+シグナルが誘発された(図1A上).アストロサイトのCa2+シグナル形成には,Ca2+放出チャネルであるイノシトール三リン酸(IP3)受容体2型が必須であり,そのノックアウトマウス(IP3R2-KOマウス)のアストロサイトではCa2+シグナルが消失することが報告されている4).IP3R2-KOマウスで同様の実験を行ったところ,高出力レーザー照射の傷害刺激によるCa2+シグナルはほぼみられないことが確認された(図1A下).そこで,大脳皮質へのメス刺入による傷害モデルをIP3R2-KOマウスに適用し,反応性アストロサイト形成への影響を評価した.その結果,IP3R2-KOマウスでは反応性アストロサイトが形成されにくく,損傷部位近傍で生存するニューロン数が少ないことを見いだした(図1B).すなわち,脳損傷時に生じるアストロサイトCa2+シグナルが反応性アストロサイト形成と神経保護作用を促進すると考えられる.

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図1 アストロサイトCa2+シグナルによる反応性アストロサイト形成促進機構

(A)傷害に誘発されるアストロサイトCa2+シグナル.成体マウス大脳皮質アストロサイトのCa2+シグナルをOregon Green BAPTAを用いて可視化しながら,“L”と記した領域(左)および“レーザー”と記した時間(右)に高出力レーザーを照射して傷害刺激を与えた.コントロールマウスのアストロサイトでは顕著なCa2+シグナルが見られたのに対し,イノシトール三リン酸受容体(IP3R2)ノックアウトマウスでは,見られなかった.(B)反応性アストロサイト形成のIP3R2依存性.大脳皮質へのメス刺入による傷害後5日目でアストロサイト細胞骨格タンパク質GFAPの免疫染色を行った.コントロールマウスで見られたGFAP強陽性アストロサイト(反応性アストロサイトを示す)は,IP3R2-KOマウスで顕著に減少した.また,IP3R2-KOマウスでは,損傷モデル適用後に生存する神経細胞数が低下した(右下,Nissl染色による定量).(C)大脳皮質におけるPum2およびN-カドヘリンの発現量と損傷による発現量変動.損傷によりPum2発現が減少,N-カドヘリン発現が増大することを免疫染色により確認した.これらの発現量変動はIP3R2-KOマウスでは有意に減弱した.(D)傷害誘発性アストロサイトCa2+シグナルによる反応性アストロサイト形成および神経保護機構の模式図.通常のアストロサイトではN-カドヘリンの発現量はPum2により抑制され低く保たれる(左).損傷によりIP3R2を介するCa2+シグナルが惹起されるとPum2発現量が低下し,N-カドヘリンの発現が増大する(中央).これにより反応性アストロサイト形成と神経保護作用が促進される(右).

次に,Ca2+シグナルの下流で働く経路を解明すべく,アストロサイトにおいてCa2+シグナルにより制御される因子を探索した.IP3脱リン酸化酵素であるIP3 5-ホスファターゼの安定発現によりCa2+シグナルを抑制した培養アストロサイトを作製し,対照群としてCa2+シグナルを自発的に発生させる通常のアストロサイトを用い,両者間の発現遺伝子の差を網羅的に解析した.そのなかで,Ca2+シグナル抑制により顕著に発現増加するpumilio2(Pum2)という分子に着目した.Pum2は3′非翻訳領域にUGUAA(U)AUAの配列を持つメッセンジャーRNA(mRNA)に特異的に結合し,そのmRNAからの翻訳を抑制する翻訳抑制因子である.筆者らは以前に,培養アストロサイトのCa2+シグナルがN-カドヘリンの発現を制御することを見いだしていたため5),N-カドヘリンmRNAの配列を調べたところ,3′非翻訳領域にPum2認識配列を持つことがわかった.N-カドヘリンmRNAの3′非翻訳領域におけるPum2認識配列は哺乳類から魚類まで広く保存されており,重要な機能を担う可能性が期待された.そこで,Pum2がN-カドヘリンの発現量を制御できるかを検証した.培養アストロサイトへのプラスミド導入およびマウス大脳皮質へのアデノウイルスベクター注入によりPum2を過剰発現させると,アストロサイトのN-カドヘリンの発現量が減少したことから,Pum2がN-カドヘリンの翻訳抑制因子として機能することが示された.この発現制御がN-カドヘリンのPum2認識配列に依存することも確認した.また,マウス大脳皮質におけるPum2とN-カドヘリンの発現量は,正常時にはPum2が多くN-カドヘリンが少ない,損傷後にはPum2が少なくなりN-カドヘリンが増える,といった逆相関がみられ,アストロサイト内因性のPum2がN-カドヘリンの発現を抑制することが示唆された(図1C).このような損傷によるPum2とN-カドヘリンの発現量変動は,IP3R2-KOマウスでは有意に減弱したことから,損傷によるCa2+シグナルがPum2をダウンレギュレーションすることが示唆された(図1C).

これまでの結果から,IP3R2-KOマウスでみられる反応性アストロサイトの形成不全と神経保護作用の低下(図1B)は,N-カドヘリンを介することで説明できる可能性がある.これを検証するため,アストロサイト特異的なN-カドヘリンKOマウスを作製した.このマウスに損傷モデルを適用した結果,反応性アストロサイトの著しい形成不全と生存する神経細胞数の激減というIP3R2-KOマウスと同様の表現型がみられた.

以上より,①健常な脳のアストロサイトに発現するPum2はN-カドヘリンの発現量を低く保つが,②損傷によりCa2+シグナルが惹起されるとPum2のダウンレギュレーションが起こり,③N-カドヘリンが発現増大する.これが反応性アストロサイト形成と神経保護作用を発揮する,という新しいシグナル経路が明らかとなった(図1D6).反応性アストロサイトは脳傷害だけでなくさまざまな病態で形成されるため,この経路は脳の病態に共通して起こる可能性がある.Ca2+シグナルがどのようにPum2発現を制御するか,また,N-カドヘリンがどのようにして反応性アストロサイト形成と神経保護作用に貢献するか,といった本研究で明らかにできなかったメカニズムの追究も含め,今後の解析が脳機能のさらなる理解と疾患治療に貢献することが期待される.

3. Ca2+シグナル可視化技術の改良1:生体内アストロサイトのCa2+シグナルを可視化するツール

従来の生体内イメージング解析(前述の図1Aを含む)では,fluo-4やOregon Green 488 BATPAなどといった低分子量化合物のCa2+指示薬をアストロサイトに導入して蛍光観察を行う.この手法では,すべての脳細胞にCa2+指示薬が導入されるため,細胞間相互作用の場であるアストロサイト微細突起におけるCa2+シグナルと,神経の軸索・樹状突起などの他の細胞で生じるCa2+シグナルを区別することがきわめて困難である.そのため,他の細胞由来のシグナルが混入しづらいアストロサイト細胞体に絞って解析するなどの制限があった.これを解決するために筆者らは,高感度Ca2+インジケーターyellow cameleon Nano50(YC-Nano50)7)を,KENGE-tet(knockin-mediated enhanced gene expression system with transactivator-tet operator strategy)8)によりアストロサイト特異的に発現させたマウス系統(Mlc1-YC-Nano50マウス)を作製した9)

YC-Nano50は見かけのCa2+解離定数が50 nM付近にあり,Ca2+シグナルを高感度で検出可能である.また,YC-Nano50はCa2+濃度依存的なcyan fluorescent protein(CFP)とyellow fluorescent protein(YFP)間の蛍光共鳴エネルギー移動(Förester resonance energy transfer:FRET)を利用したCa2+センサーであり,YFP/CFP蛍光強度比を算出することで,生体内イメージングにおいて不可避な体動・呼吸などに伴うノイズを軽減できる(図2A).また,YFPの蛍光強度は静止時Ca2+濃度においても非常に明るく,微細突起を含むアストロサイトの形態を鮮明に捉えながらCa2+イメージングすることが可能である(図2B).これらは,単波長蛍光測定型かつ静止時Ca2+濃度では蛍光が暗い非FRET型のCa2+インジケーターでは達成できない特徴である.

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図2 高感度Ca2+インジケーター発現マウスを用いた生体内アストロサイトCa2+イメージング

(A)アストロサイト特異的にYC-Nano50を発現するMlc1-YC-Nano50マウスを用いた高感度in vivo Ca2+イメージング.大脳皮質II/III層のアストロサイトを二光子励起顕微鏡で観察した.CFPおよびYFPそれぞれの蛍光強度の経時変化(左)には動物の体動によるノイズが混入するが,YFP/CFP比を算出することによりシグナルを抽出できる(右).(B)非刺激条件下でアストロサイト微細突起に好発するCa2+シグナル「Ca2+ twinkle」.YFP蛍光によるアストロサイト形態(左)とCa2+ twinkle発生箇所(中央)をマージして示した(右).YFP蛍光によりアストロサイトの微細突起まで観察することが可能であり,Ca2+ twinkleは細胞体ではなく微細突起で主に観察された.(C)細胞体を含む細胞全体に伝搬する刺激誘発性Ca2+シグナル.マウス尾部に電気刺激を与えると強いCa2+シグナルが惹起された.これは微細突起に始まり,徐々に伝搬して細胞体まで到達する様子が観察された.

麻酔下のMlc1-YC-Nano50マウス大脳皮質におけるイメージング解析から,微細突起に限局して発生し,細胞体では生じないという興味深い時空間動態を示すCa2+シグナルを筆者らは発見した(図2B).このシグナルが夜空に瞬く星々を連想させることから「Ca2+ twinkle」と命名した.Ca2+ twinkleの発生メカニズムに迫るため,Mlc1-YC-Nano50マウスとIP3R2-KOマウスを交配した産仔で生体内イメージングを行った.このマウスではCa2+ twinkleの発生頻度は著しく低下したが,発生箇所とシグナル強度・持続時間はMlc1-YC-Nano50マウスとほぼ同等であった.したがって,Ca2+ twinkleの発生頻度にはIP3R2が大きく寄与するが,これ以外のシグナル特性は他のメカニズムにより維持されることが示唆された.そのメカニズムの解明は今後の課題として残されている.

さらに,in vivoイメージング下のMlc1-YC-Nano50マウス尾部を電気刺激すると,多数の大脳皮質アストロサイトにおいて,微細突起先端から生じたCa2+シグナルが徐々に細胞内部へと広がり,最後に細胞体に到達するようすを鮮明に可視化することができた(図2C).このCa2+シグナルはIP3R2-KOマウスでは消失した.これらの結果から,刺激依存的なCa2+シグナルは細胞体を含む細胞全体に伝搬することができ,その発生メカニズムにIP3R2が大きく関わることが示された.小分子Ca2+指示薬を用いた従来法では,こうした大規模なCa2+シグナルのみを捉えていた可能性が高い.微細突起のCa2+シグナルを鮮明に捉えられる本手法は,いまだ謎の残るアストロサイトの機能解明に大きく貢献することが期待できる.

4. Ca2+シグナル可視化技術の改良2:オルガネラ内腔のCa2+動態を可視化するツール

最後にグリア細胞の話題から少し方向性を変え,さまざまな細胞種における細胞小器官(オルガネラ)内腔のCa2+イメージングが可能なツールを紹介する.小胞体およびミトコンドリアなどのオルガネラは細胞内のCa2+貯蔵庫としても機能し,細胞質のCa2+シグナル形成に重要である.しかし,従来のイメージング手法は細胞侵襲性があることや低いシグナル/ノイズ比などにより,適用できる細胞種が限られる,あるいはシグナルが小さいなどの問題があり,詳細な時空間動態の解析が困難であった.筆者らは,細胞質用タンパク質型Ca2+インジケーターであるGCaMPおよびGECO10, 11)のCa2+感受性をオルガネラ用に最適化し,小胞体およびミトコンドリア局在化配列を付与したオルガネラ用Ca2+インジケーター群CEPIA(calcium-measuring organelle-entrapped protein indicator)を作製した12).これにはgreen fluorescence protein(GFP)と同様に青色蛍光(約490 nm:最大励起波長,以下も同様)で励起,緑色蛍光(約510 nm)を測定するG-CEPIAと,これの赤色蛍光バリアントであるR-CEPIA(励起約560 nm,測定約580 nm),および紫色波長(約400 nm)で励起して青色(約460 nm)と緑色(約510 nm)の二波長を測定するGEM-CEPIAが含まれる(図3A左).

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図3 小胞体・ミトコンドリアCa2+インジケーターによるオルガネラCa2+イメージング

(A)(左)小胞体Ca2+インジケーターCEPIA1erシリーズのCa2+応答曲線.点線で示した既存の細胞質用Ca2+インジケーターを改変し,小胞体のCa2+濃度域で十分な蛍光強度変化が起こるよう調整した.(右)CEPIA1er発現HeLaで観察した小胞体Ca2+ウェーブ.細胞先端部から生じたCa2+放出(CEPIA1er蛍光強度の減少として検出される)が徐々に細胞体へと伝搬する様子が観察された.(B)CEPIAを用いたSTIM1と小胞体Ca2+濃度の同時イメージング.Ca2+フリーの細胞外液(図中の0 mM Ca2+)中でHeLa細胞にIP3産生刺激を与えると,小胞体からのCa2+放出が起こるため小胞体Ca2+濃度が徐々に低下し,これに合わせてSTIM1の凝集が起こる(パネル左から中央にかけての変化).細胞外液に2mM Ca2+を加えると(図中の2 Ca2+のバーで示した箇所),SOCE(store operated Ca2+ entry)として知られるプロセスにより小胞体にCa2+が補充され,これに合わせてSTIM1の凝集が解除される(中央から右にかけての変化).(C)小胞体局在型の緑色蛍光Ca2+インジケーター,G-CEPIA1erとミトコンドリア局在型の赤色蛍光Ca2+インジケーター,R-GECO1mtを用いた小胞体とミトコンドリアの同時Ca2+イメージング.同一細胞内の異なる2領域のCa2+動態をみると,小胞体はどちらも同じように刺激に応じたCa2+放出を示すのに対し,Ca2+を取り込まないミトコンドリア(上)と取り込むミトコンドリア(下)が存在することがわかった.

G-CEPIAおよびR-CEPIAはきわめて高い時空間解像度を持ち,HeLa細胞を刺激した際に小胞体の局所領域で生じたCa2+放出が,速やかに周辺の小胞体領域に伝搬するようすを鮮明に捉えることができる(図3A右).また,カラーバリアントのCEPIAを用いることにより,小胞体内腔のCa2+濃度低下を感知して凝集する性質を持つタンパク質STIM1(stromal interaction molecule-1)を赤色蛍光タンパク質(STIM1-mCherry)でモニターしながら,小胞体Ca2+の絶対濃度をGEM-CEPIAで同時に測定することも可能である(図3C).さらに,ミトコンドリアと小胞体のCa2+動態を同時に測定することで,細胞全体の小胞体が一様にCa2+を放出するのに対し,これを取り込むミトコンドリアとそうでないミトコンドリアが,同一細胞内に存在することが示された(図3C).これは近年,分子実態が明らかにされたミトコンドリアCa2+チャネルMCU(mitochondrial Ca2+ uniporter)13)の活性が細胞内で異なるなどといった,未知のメカニズムが存在する可能性を示す興味深い知見である.細胞死制御や神経変性疾患など,小胞体とミトコンドリアのCa2+動態が関与するとされる生命現象は数多く報告されている.今後,このような研究にCEPIAを応用することにより新たな知見が得られることが期待できる.

謝辞Acknowledgments

本稿で紹介した研究は,主に飯野正光教授(東京大学大学院医学系研究科)のご指導,田中謙二准教授(慶応大学医学部),関谷敬助教(東京大学大学院医学系研究科),および鈴木純二氏(東京大学大学院医学系研究科)との共同研究により行われました.深く感謝申し上げます.

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著者紹介Author Profile

金丸 和典(かねまる かずのり)

東京大学大学院医学系研究科細胞分子薬理学教室助教.博士(医学).

略歴

2006年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了.08年より現職.

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