Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 88(5): 563-568 (2016)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2016.880563

特集Special Review

APOBEC3とVIFの構造からみえてきたウイルス戦略Structural basis of APOBEC3-Vif Interaction in the host-virus arms race

名古屋医療センター臨床研究センター感染・免疫研究部Nagoya Medical Center, Clinical Research Center, Department of Infectious Diseases and Immunology ◇ 〒460–0001 愛知県名古屋市中区三の丸4–1–1 ◇ 4–1–1 San-no-Maru, Naka-ku, Nagoya, Aichi 460–0001, Japan

発行日:2016年10月25日Published: October 25, 2016
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ヒトシチジン脱アミノ化酵素APOBEC3(A3)は7種存在し,おそらくレトロウイルスなどの共進化に伴い増幅・獲得された.一本鎖核酸に特異的に結合しシチジン脱アミノ化反応を触媒する生化学的な活性がA3の強力な抗ウイルス作用の機序と関連する.HIV-1感染細胞ではウイルスがコードする遺伝子産物Vifにより特異的にA3がポリユビキチン化・プロテアソーム系を介して分解される.このため,HIV-1はA3による抑制機構から逃れ増殖することが可能となっている.最近,A3タンパク質の分子構造が明らかになり,基質一本鎖DNA(ssDNA)あるいはVifへの特異的な結合機序について構造学的に明らかになりつつある.A3ファミリーのVif結合領域は3タイプに多様化し,ウイルスはそれに対抗するためにVif分子上に3領域の結合領域面を持つ.このような知見は,ウイルスと宿主防御因子A3とのしのぎ合いが共進化の過程で非常にダイナミックに行われてきたことをうかがわせる.本稿では,A3タンパク質の構造学的視点から,Vifおよび基質ssDNAの結合機序について概説する.

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