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公益社団法人日本生化学会
Journal of Japanese Biochemical Society 88(5): 600-608 (2016)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2016.880600

特集

神経疾患とRNA編集異常—孤発性ALSの分子病態モデルマウスを用いたALSの治療法開発

1東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻神経病理学分野 ◇ 〒113–0033 東京都文京区本郷7–3–1

2東京大学大学院医学系研究科/国際医療福祉大学臨床医学研究センター ◇ 〒113–0033 東京都文京区本郷7–3–1/〒272–0827 千葉県市川市国府台6–1–14, 化学療法研究所附属病院

発行日:2016年10月25日
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RNA編集酵素ADAR2の活性低下によるAMPA受容体サブユニットGluA2グルタミン/アルギニン(Q/R)部位のRNA編集低下は,孤発性筋萎縮性側索硬化症(ALS)運動ニューロンにみられる疾患特異的分子変化である.我々はADAR2活性低下によるQ/R部位未編集型GluA2の発現が運動ニューロン死の直接原因であることを,この分子病態を再現する孤発性ALSモデルマウスの開発とその解析から明らかにした.またALSの病理学的指標であるTDP-43病理(核内RNA結合タンパクであるTDP-43の核からの喪失と細胞質封入体の形成)がRNA編集低下に伴うAMPA受容体からのCa2+流入増大により引き起こされるメカニズムを明らかにした.本稿では,ALSでわかってきたRNA編集異常が細胞死を引き起こすに至る分子カスケードを概説し,そこから導き出された新規分子標的治療法の可能性にふれるとともに,他の神経疾患とRNA編集についてもふれたいと考える.

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