生化学 SEIKAGAKU
Journal of Japanese Biochemical Society

Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
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Journal of Japanese Biochemical Society 88(5): 660-663 (2016)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2016.880660

みにれびゅうMini Review

Mycobacterium avium complexの感染で誘導されるユニークなマクロファージによるT細胞の分化活性化の制御Unique macrophages induced by infection with Mycobacterium avium complex regulate the mitogenesis and differentiation of T cells

1国際医療福祉大学薬学科生体防御学分野Division of Immunobiology, Department of Pharmaceutical Sciences, International University of Health and Welfare ◇ 〒324–8501 栃木県大田原市北金丸2600–1 ◇ 2600–1 Kitakanemaru, Ohtawara, Tochigi 324–8501, Japan

2安田女子大学看護学科・児童教育学科Department of Basic Medical Sciences for Nursing, Yasuda Women’s University ◇ 〒731–0153 広島市安佐南区安東6–13–1 ◇ 6–13–1 Yasuhigashi, Asaminami-ku, Hiroshima 731–0153, Japan

3島根大学医学科Department of Microbiology and Immunology, Shimane University School of Medicine ◇ 〒693–8501 島根県出雲市塩治町89–1 ◇ 89–1 Enyacho, Izumo, Shimane 693–8501, Japan

発行日:2016年10月25日Published: October 25, 2016
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1. はじめに

マクロファージ(MΦ)は,細菌感染をはじめとする多様な刺激に応じて分極化(polarization)することが知られている.特にSalmonellaListeria,結核菌などの通性細胞内寄生菌の感染によって,「classically activated macrophage,別名M1マクロファージ(M1-MΦ)」と呼ばれる,一群のポピュレーションへと分極化する1).M1-MΦは炎症性サイトカインを高発現し,抗菌活性が強いことが特徴である.しかしながら,M1-MΦへの分極化が過剰な形で長期間持続することにより,M1-MΦの組織傷害性に基づく病態が形成される.そのような宿主にとって不都合な状態を回避するために,抗炎症・免疫抑制機能を持つ,いわゆる「alternatively activated macrophage,別名M2マクロファージ(M2-MΦ)」に分極化したポピュレーションが誘導される.M2-MΦは,抗炎症性メディエーターを産生し,組織の損傷反応の終息とその後の組織修復へと導く1–3)

他方,細胞内寄生菌や原虫の感染宿主では,感染症の遷延化と重症化に伴い,免疫抑制性MΦが誘導されることが知られている.この免疫抑制性MΦは,T細胞やB細胞の増殖やサイトカイン産生を抑制する.しかしながら,この免疫抑制性MΦが単一細胞集団で構成されているのか,または複数のポピュレーションからなるのか不明である.

本稿では,著者らが近年の研究で見いだした,Mycobacterium avium complex(MAC)の感染宿主で誘導されるTh17細胞分化誘導能を有する,M1-MΦやM2-MΦとは区別される形質を備えた免疫抑制性MΦポピュレーションについて,その分極化とその性状および機能との関連を概説する.

2. 各種の分極化マクロファージの性状

MΦは,サイトカインや細菌の刺激性成分などによるさまざまなシグナルに応じて分極化する.分極化したMΦは,現在,その呼称方法についての議論が続いており,明確に統一されていないという状況ではあるが4, 5),大きくは,M1-MΦとM2-MΦと呼ばれる主に二つのポピュレーションとして区別される1).M1-MΦはインターフェロンγ(IFN-γ)単独,あるいはIFN-γと腫瘍壊死因子α(TNF-α)や顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などの他のサイトカインまたはリポ多糖(LPS)などの菌体成分との協同作用により誘導される3, 6).一方,M2-MΦは,インターロイキン4(IL-4)やIL-13などのサイトカインにより誘導される3, 6)

また,M2-MΦはさらに三つのポピュレーション,M2a, M2b, M2c,に分かれることが報告されている.M2a-MΦは,狭義のalternatively activated macrophageであり,IL-4, IL-13で誘導される.M2b-MΦは,別名type II-activated macrophageと呼ばれ,免疫複合体によるFc受容体を介するシグナルで誘導される.M2c-MΦは,別名regulatory macrophage/deactivated macrophageと呼ばれ,IL-10や糖質コルチコイドホルモンによって誘導される1, 7–10)

典型的なM1-MΦは,IL-12, IL-23の発現量が高く,IL-10の発現量はきわめて低いことが特徴であり,細胞毒性の発現に関わる活性酸素分子種(reactive oxygen species:ROS)や活性酸化窒素分子種(reactive nitrogen species:RNS),さらにはIL-1β, TNF-α, IL-6などの炎症性サイトカインを高レベルで産生する.したがって,M1-MΦはTh1応答の誘導,ひいては細胞内寄生性病原体に対する生体の感染防御機構を支える役割を果たしている6, 7).これに対して,M2-MΦはIL-12やIL-23の発現量がきわめて低く,逆にIL-10を高発現することから,Th2タイプに偏向した免疫の形成に寄与しているものと考えられる.さらにM2-MΦでは,アルギナーゼ1(Arg1)の高発現に起因したアルギニン代謝のオルニチン産生系へのシフトとスカベンジャー受容体の高発現が特徴的である6, 7).M2a-MΦは,一般的にTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインの発現レベルが低く,他方,Arg1やFizz1を高発現する.これに対して,M2b-MΦでは,M1-MΦ(IL-10陰性)やM2a-MΦ(IL-10中等度陽性)と異なりIL-10を高発現する一方で,IL-12の発現はM2a-MΦと同様に低いといった特徴がある3, 8, 9).さらに,M2b-MΦは,M1-MΦと同様に誘導型NO合成酵素(iNOS)やCD86を高発現するのに対して,Arg1の発現は低い.これらの性状から,総じてM2b-MΦはM1-MΦとM2-MΦの中間型の形質を示すことが報告されている4, 9, 10)

なお,以上に紹介した各種のMΦポピュレーションの性状に関する知見はヒトとマウスでの実験成績に基づいたものである.しかし,ヒトとマウスのMΦ分極化の様相は基本的に共通しているものの,動物種による明確な違いが認められる場合があり,確定したものとはいえない.たとえば,M2a-MΦにおいて認められるArg1, Ym1, Fizz1の強い発現はマウスのM2a-MΦに限られた現象であり,ヒトのM2a-MΦには当てはまらないことが報告されている11)

3. M1, M2マクロファージのin vivoでの役割

組織への感染や組織の損傷の後に最初に応答して集積するM1-MΦは,ROSやRNS,およびTNF-α, IL-1などの炎症性サイトカインを産生し強力な抗菌活性を発揮する2).さらに,M1-MΦにより産生されるIL-12やIL-23は,Th1細胞やTh17細胞を誘導する.このように,M1-MΦは,急性感染の状態にある宿主の感染防御に重要な役割を担っている.しかしながら,M1-MΦにより産生されるRNSやROSは強い細胞毒性を示し,周辺の組織傷害を惹起する.したがって,こうした過剰な組織傷害反応を軽減し終息させるためには,強力な抗炎症作用を発揮するM2-MΦを誘導することが有効な手段となる.また,M2-MΦはTGF-β(transforming growth factor-β)や血小板由来増殖因子などの発現を介して,創傷治癒に重要な役割を担う2).このようにMΦは状況に応じて,炎症性・殺菌性を示すM1-MΦか,あるいは抗炎症性・組織修復性を示すM2-MΦのいずれかに可塑性を持って分極化し,その機能発現を行っている.

4. 抗酸菌感染症

抗酸菌は,好気性のグラム陽性桿菌である.抗酸菌は,結核菌群,MACやMycobacterium kansasiiなどの培養可能な非結核性抗酸菌群(NTM),ならびにらい菌などの培養不能あるいは困難な抗酸菌に大別される.わが国において抗酸菌感染症の原因菌として特に問題となる菌は,結核菌とMACである.結核は,年間2万人以上の新規患者が発生し,年間2千人以上が結核により死亡している.他方,MACを代表とするNTM感染症は近年増加傾向にあり,年間およそ1万人の新規患者が発生し,年間死亡者数は千人を超え,今後さらなる増加が懸念されている.わが国では,NTM感染症の原因菌の約8割がMACによるものである.

5. 抗酸菌に対する宿主の感染防御におけるマクロファージの役割

細胞内寄生菌である抗酸菌に対する宿主抵抗性においては,MΦによる殺菌メカニズムが重要な役割を担っている.また,抗酸菌に対するMΦの殺菌能の発現には,感染MΦを中心とした免疫担当細胞間の相互作用,なかでもサイトカインネットワークによる細胞性免疫機構の活性化が必須である12).他方,病原性抗酸菌は,さまざまなメカニズムを駆使しMΦによる殺菌作用に対する抵抗性を持ち,MΦ内にて増殖する13)

6. 抗酸菌に対する宿主の抵抗性に関わるT細胞

抗酸菌に対するMΦの殺菌活性の発現においては,Th1の活性化により産生されるTh1系サイトカインが重要な役割を担うが,抗酸菌感染時に誘導されるナチュラルキラーT細胞,γδT細胞,CD1 restricted T細胞や細胞傷害性T細胞もまたIFN-γを産生し,MΦの活性化に関わっている.

また,結核菌やBCG菌の感染時において,感染初期に誘導されるγδT細胞は,IL-17を産生し,抗酸菌に対する抵抗性に重要な働きを持つことが知られている.IL-17は,IL-17受容体を持つ内皮細胞や繊維芽細胞などのIL-17応答性細胞からG-CSFやCXCL8の発現を惹起し,好中球浸潤の誘導や,βデフェンシンなどの抗菌性ペプチドの発現が惹起される.また,結核菌やBCG菌の感染において,IL-17応答性に感染局所へのTh1細胞の浸潤の誘導や,肉芽腫の形成が惹起されるといった報告もなされている.

7. MAC感染マウスにおいて誘導されるユニークなマクロファージポピュレーションとその機能

著者らは,これまでに,MAC感染マウスの脾臓において誘導される免疫抑制性マクロファージ(MAC-MΦ)についての一連の研究を進めてきている.このサプレッサーマクロファージは,T細胞のTCR刺激に対する増殖性応答,IL-2受容体発現,およびIL-2産生に対する抑制作用を示す14).この抑制作用は,MAC-MΦと標的T細胞とのcell-to-cell contact,およびTGF-β,RNS,プロスタグランジンE2などの液性因子を介して発現することが明らかとなっている14).さらに,著者らの最近の検討により,MAC-MΦは,IL-6,TGF-β,抗IFN-γ抗体,抗IL-4抗体を添加した培養系において,正常マウスの脾由来T細胞からTh17細胞を強く誘導することが明らかになった15).そこで,MAC-MΦにおける免疫抑制性を発揮するポピュレーションとTh17誘導に働くポピュレーションがどのような分極化プロフィールを示すのかについて検討を行った.また,MAC-MΦが互いに異なった分極化状態にある複数のMΦポピュレーションからなるとした場合には,M1およびM2のいずれのタイプのMΦが各々サプレッサー活性あるいはTh17誘導活性を有しているのかについても一連の検討を進めた.その結果,以下のような成績が得られている15).すなわち,(1)MAC-MΦを脾T細胞と共培養した場合,TCR刺激によるT細胞のマイトジェネシスを強く抑制するとともに,MAC-MΦはTh17細胞の分化誘導を増強し,IL-17やIL-22の産生能を増大させる,(2)MAC-MΦによるTh17分化誘導増強作用は,IL-6やTGF-βに依存しており,他方,IL-21やIL-23には非依存的である,(3)この現象は,MAC-MΦポピュレーション中のIL-12, IL-1βhigh, IL-6, TNF-α, iNOS, CCR7high, IL-10high, Ym1high, CD163high, mannose receptorlow, Fizzlow, Arg1といった形質を有するユニークなタイプのMΦによって担われている,(4)このMΦは,MAC感染マウスの脾臓中に誘導されており,in vivoの系において,Th17細胞への分化を誘導する,などが明らかとなった(図1).以上の成績は,MAC感染で誘導されてくるMΦの主要なポピュレーションは,M1, M2-MΦ中間型の形質を有する新しいタイプの細胞であり,このMΦはサプレッサー活性を持つと同時にTh17細胞を誘導する機能を有することを示しているものと考えられる.

Journal of Japanese Biochemical Society 88(5): 660-663 (2016)

図1 MAC感染によりマウス脾臓で誘導されるマクロファージ(MAC-MΦ)の特徴

MAC-MΦは,遺伝子発現レベルにおいてIL-12, IL-1βhigh, IL-6, TNF-α, iNOS, CCR7high, IL-10high, Ym1high, CD163high, mannose receptorlow, Fizzlow, Arg1という形質を有する.また,MAC-MΦはTCR刺激によるT細胞のマイトジェネシスを強く抑制する.このとき,MAC-MΦはTh1, Th2系のサイトカインの産生を抑制し,他方,Th17系のサイトカインの産生を誘導する(文献15の図を一部改変).

8. おわりに

本稿では,著者らの研究で見いだされた,抗酸菌感染によって誘導されるM17型-MΦとも呼べるようなユニークなMΦポピュレーションについて,M1, M2-MΦとの関連から概説した.しかしながら,このMΦポピュレーションによるTh17の分化誘導増強作用が,抗酸菌に対する感染防御または病態発現にどのような役割を担っているのかについては,現時点で不明である.抗酸菌感染症の治療への応用を目指す上で,今回見いだされたユニークなMΦポピュレーションの機能についての詳細な解明が望まれる.

また,抗酸菌などの細菌をはじめとする病原体感染においてIL-17の重要性を示す報告が多くなされ,IL-17産生細胞の種類も多岐にわたり報告されている.近年では,自然リンパ球(Innate lymphoid cells:ILCs)と呼ばれる大きく三つのグループに分けられる免疫担当細胞群が見いだされている.特に,IL-17やIL-22を産生するグループ3の細胞群(ILC3s)をはじめとするこれらのILCsと抗酸菌感染に際してのマクロファージの分極化との関係についても大変興味深く,今後の研究の進展が期待される.

引用文献References

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14) Tomioka, H. (2009) in Current Topics on the Profiles of Host Immunological Response to Mycobacterial Infections (Tomioka, H. ed.), pp. 251–280, Research Signpost, Kerala.

15) Tatano, Y., Shimizu, T., & Tomioka, H. (2014) Sci. Rep., 4, 4146.

著者紹介Author Profile

多田納 豊(たたの ゆたか)

国際医療福祉大学薬学部講師.博士(薬学).

略歴

2001年徳島大学薬学部製薬化学科卒業,06年徳島大学大学院薬学研究科博士後期課程修了,06年島根大学医学部助教,10年同大学医学部学内講師,15年より現職.

研究テーマと抱負

抗酸菌に対する宿主の感染防御機構の解明,抗酸菌に対する抗菌活性物質の探索.

冨岡 治明(とみおか はるあき)

安田女子大学教育学部児童教育学科・看護学部看護学科教授.医学博士.

略歴

1970年東京大学農学部卒業,72年農学系修士課程修了,同年帝人入社,73年広島大学薬学科助手,77年島根医科大学微生物免疫学助手,88年助教授,94年教授,2013年名誉教授,14年現職.

研究テーマと抱負

抗酸菌症の感染免疫学,特に自然免疫をベースにした感染防御システムの詳細なプロフィールを明らかにすべく研究を続けているが,この十数年は抗酸菌の病原因子を薬剤標的とする分子創薬に関する研究も並行して進めている.

ウェブサイト

http://www.yasuda-u.ac.jp

趣味

読書,魚釣り.

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