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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 89(1): 7 (2017)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890007

特集:緒言特集:緒言

生体機能性ペプチドを応用した次世代ナノメディシンの展開

新潟大学大学院医歯学総合研究科

発行日:2017年2月25日Published: February 25, 2017
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最近,医学研究の領域では“分子標的医療”,“ナノメディシン”,“プレシジョンメディシン”などという言葉を頻繁に耳にするようになった.今日の科学の進歩とともに医学分野においてもテクノロジーは加速的な進化を遂げており,わずか四半世紀前には存在しなかった手法で創薬や医療機器の開発が可能となり,その成果が現行の医療現場に登場している.近年の多様な方面におけるイノベーションが実際の患者医療に有益な貢献を成していることは確かに紛れもない事実であり,今後の発展が医療への貢献に大いに期待されるところであろう.

しかし,このような言葉は自らの研究を表すファッションとしてはいけないと思っている.当たり前の話だが,医学研究というのは日々の泥臭い努力の積み重ねと粘り強さで一歩一歩進めていくもので,流行の波にうまく迎合した研究というだけで本物の成果が得られるものではないことは,真摯に研究を行っている者皆が自ら認識していることである.

ペプチドもようやく昨今,他のバイオツールとともに医療技術への応用の可能性が注目され始めてきた.本特集では,これまでコツコツと地道な努力で研究成果を積み上げてこられた国内第一線のアカデミアのペプチド研究者の方々に寄稿をお願いした.それぞれの研究者が個々の専門分野から立ち上げたオリジナルの研究——ペプチドの細胞内吸収機構,新規単離技術,腫瘍や神経など多彩な応用分野,融合的DDSの開発など基礎から臨床応用を志向した新鮮で内容に富む研究の紹介をしてくださった.これらの専門家の方々の研究の礎には,ペプチド製バイオツール創成の実現を目指し,表には出ていない数多くのトライ・アンド・エラーやご苦労があることであろう.しかし,それぞれがペプチドの持つ課題の克服とその長所を最大限生かす工夫を考案しながら,新たな知見の獲得と展開を進めている.

本号に紹介した総説をご高覧いただいて,ペプチドの持つダイバーシティと未来へのポテンシャルを感じとり,「ペプチドが拓く次世代医療への可能性」に大いに興味を持っていただければ,我々一同たいへん幸いである.

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