レット症候群病態に重要なMeCP2の新機能:MeCP2によるmicroRNAプロセシングを介したmTORシグナル制御
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自閉症スペクトラム障害の一つであるレット症候群(RTT)は女児に発症する重篤な精神・神経発達障害である.原因遺伝子MECP2の変異や発現異常はRTTを引き起こすだけでなく,種々の精神疾患の発症にも関与する.MeCP2はこれまでメチル化DNAに結合する転写抑制因子として働くと考えられてきたため,RTTの病態はメチル化された標的遺伝子の転写制御不全に起因すると想定されてきた.しかしながらRTTの表現型に直結するMeCP2標的遺伝子はこれまでに同定されておらず,MeCP2の機能異常によりRTTが引き起こされる分子メカニズムは長らく不明であった.しかし,最近の筆者らの研究により,MeCP2が特定microRNA(miRNA)のプロセシングを促進し,mTORシグナルを正に制御すること,MeCP2標的miRNAを欠損したマウスはMeCP2欠損マウスのRTT表現型を再現することが明らかになった.このことはRTTの病態にMeCP2のmiRNAプロセシング制御作用がきわめて重要な役割を果たしていることを示唆しており,自閉症スペクトラム障害の分子メカニズムの理解および治療法開発の糸口になると考えられる.
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