Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 89(3): 325-332 (2017)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890325

特集Special Review

バイスペシフィック抗体を用いた血友病A治療への新たな挑戦New challenge for treatment of hemophilia A by using bispecific antibody

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2奈良県立医科大学小児科Department of Pediatrics, Nara Medical University ◇ 〒634–8522 奈良県橿原市四条町840 ◇ 840 Shijo-Cho, Kashihara, Nara 634–8522, Japan

発行日:2017年6月25日Published: June 25, 2017
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血友病Aは血液凝固第VIII因子(FVIII)の先天性欠乏に起因する出血性の疾患であり,小児期より重篤な出血傾向を呈する.標準治療としてFVIII製剤による補充療法が実施されるが,頻回の静脈注射の必要性,およびFVIIIインヒビター(抗FVIII中和抗体)の発現とその後の治療は未解決の課題である.この解決のため,我々は抗体工学技術を駆使し,活性型第IX因子(FIXa)および第X因子(FX)に対するヒト化バイスペシフィック抗体“エミシズマブ”を創出した.エミシズマブは長期持続型皮下投与製剤であり,FVIIIと同様FIXaが触媒するFX活性化を促進する作用を有する.国内第I相臨床試験では,週1回の皮下投与により,FVIIIインヒビターの有無に関わらず重症血友病A患者の出血頻度を激減させた.本稿では,本剤の基礎研究を臨床応用につなぐこれまでの道のりを概説する.

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