血流による物理的力が招く血栓性疾患TTPと出血性疾患VWD
国立研究開発法人国立循環器病研究センター研究所分子病態部 ◇ 〒565–8565 大阪府吹田市藤白台5丁目7番1号
発行日:2017年6月25日
血管内皮細胞から超高分子量マルチマーとして分泌されるvon Willebrand因子(VWF)は,血小板と血管損傷部位に露出した内皮下組織のコラーゲンの双方に接着して血小板血栓形成を促進する.VWF遺伝子の変異によるVWFの量的・質的欠損は出血性疾患von Willebrand病を引き起こす.血中にはVWF切断酵素ADAMTS13が存在し,VWFのマルチマーサイズを調節することでVWFの血栓形成能を適度な状態に維持している.ADAMTS13がVWFのC末端側領域に結合すると,コンホメーション変化によりADAMTS13のN末端側領域のメタロプロテアーゼドメインおよび隣接ドメイン上のVWF結合エキソサイトが露出する.この領域がずり応力下でアンフォールディングしたVWF A2ドメインと特異的に相互作用し,A2ドメイン内のTyr1605-Met1606間を切断する.ADAMTS13活性の著減は超高分子量VWFマルチマーの蓄積をもたらし,血栓性血小板減少性紫斑病の原因となる.
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