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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 89(3): 436-440 (2017)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890436

みにれびゅうMini Review

トレードオフを利用した植物のウイルス防御戦略Paired immunities that impose trade-offs on viruses secure durability of the immunities in plants

北海道大学大学院農学研究院Research Faculty of Agriculture, Hokkaido University ◇ 北海道札幌市北区北9条西9丁目 ◇ Kita 9, Nishi 9, Kitaku, Sapporo, Hokkaido, 060–8589 Japan

発行日:2017年6月25日Published: June 25, 2017
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1. はじめに

動植物のウイルス防御機構は,病原ウイルスとの進化的な軍拡競争を繰り広げていると言われている.しかし,ウイルスは動植物に比べゲノム複製での変異頻度が高く,世代間隔も短く,集団が大きいためにはるかに進化が速いことから,動植物の免疫機構を完全に打ち負かせるようにも思える.本稿ではなぜウイルスが覇者にならないのかを考えてみたい.植物では主に2種類の自然免疫受容体,受容体様リン酸化酵素(receptor-like kinase:RLK)と優性抵抗性(R)遺伝子の多くがコードするNB-LRR(nucleotide-binding site-leucine-rich repeat)型免疫受容体(以下,NB-LRRタンパク質)がウイルスを含む種々の病原体の侵入を認識する.RLKは動物の自然免疫受容体と同様に病原微生物に共通/必須の分子パターン(pathogen-,またはmicrobe-associated molecular patterns:PAMPsまたはMAMPs)を認識することで広範囲の病原体に対して防御反応(pattern-triggered immunity:PTI)を誘導する.一方,NB-LRRタンパク質の認識は特異的で,病原体の一部の種や系統だけが発現するタンパク質を認識する.この場合,上記のように進化が速く,NB-LRRタンパク質による認識を逃れる変異を獲得しやすいと思われる病原微生物に対しても,特異的な認識を介した防御が有効に働くのはなぜなのだろうか.上記PTIとETIに加えてメカニズムの異なる独立のウイルス防御機構がいくつか知られており,それらの中にもETIと同様に,PAMPsではないウイルスタンパク質を特異的に認識したり,結合して不活化したりするタイプの防御機構がある.これらについてもなぜ防御の有効性が保たれるのであろうか.筆者らのエンドウのウイルス防御機構の研究で1, 2),ウイルスは感染のために一つの防御機構を克服するための変異を獲得すると,変異ウイルスがもう一つ別の防御機構による制御をより強く受けてしまうトレードオフを強いられていることが示唆された.すなわち適応変異に同時に懲罰を与えるトレードオフの関係により,防御機構を逃れようとウイルスが変異しても防御機構の有効性が保持できていることが示唆された(図1).このようなウイルスにトレードオフを強いる関係は他の防御機構の組合わせでも見いだされることから,進化の速いウイルスに対抗するための植物の一般的な防御戦略と思われる.以下では,それらウイルスにトレードオフを強いるウイルス防御機構の組合わせに焦点を当てて概説する.

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図1 進化の速いウイルスに対抗するための植物の防御戦略

(A)ウイルスエフェクターはPAMPs誘導免疫を阻害するがNB-LRRタンパク質などの免疫受容体/阻害因子によりウイルスエフェクターが認識される場合には,エフェクター誘導免疫によりウイルスの感染が抑制される.免役受容体/阻害因子はウイルスエフェクターが防御機構1を抑制するために重要な領域や活性を認識するように仕組まれているため,免役受容体/阻害因子の認識を逃れようとウイルスがエフェクターに変異を獲得しても,今度はPAMPs誘導免疫により感染を抑制されるトレードオフを強いられる.(B)特に,RNAサイレンシングによるPAMPs誘導免疫とNB-LRRを介したエフェクター誘導免疫によるウイルスのRNAサイレンシング抑制タンパク質(RSS)に強いられるトレードオフは,より強固に仕組まれている.NB-LRRタンパク質の発現がmiRNAを介したRNAサイレンシングにより制御されているからである.(C)この植物の戦略を比喩的に表した変則ジャンケン.ウイルスは後出しする権利(進化が速い)を持つが,その代わり植物は一度に二つの手を出す権利(同じウイルスエフェクターに対する二つの防御機構)を持つ.このとき,ウイルスは引き分け(強毒化しない)しか手がない.

2. ジグザグモデルが示唆するウイルスのトレードオフ

植物免疫と病原微生物の関係については,両者間の進化的軍拡競争を概念的にモデル化したジグザグモデル3)が有名である.このジグザグモデルは,ウイルスではなく細菌や糸状菌と植物の相互作用に関する研究に基づいて提唱され,なぜ植物ではRLKとNB-LRRタンパク質の2種類の免疫受容体を介した防御機構が発達したのかを明快に説明する4).すなわち,はじめに記述したとおり,植物はRLKによる病原体のPAMPs/MAMPsの感知により,初めて侵入してくる病原体や病原体ではない微生物も含め広範囲にPTIを誘導することができる.これに対して,病原性のある微生物はエフェクターと呼ばれるPTIを阻害する遺伝子を獲得していて,侵入した植物細胞にエフェクターを分泌することでPTIを抑えて感染増殖する.そこで病原微生物のエフェクターに対抗するために,植物はNB-LRRタンパク質でエフェクター分子を特異的に感知して過敏感反応(hypersensitive response:HR)と呼ばれるプログラム細胞死を含む強い防御反応(effector-triggered immunity:ETI)を誘導して感染を阻害する.ジグザグモデルでは,さらに,病原微生物がNB-LRRタンパク質に認識されるエフェクターを捨て去り,代わりに新たなエフェクターを獲得して病原性を回復する.植物側もその新たなエフェクターを認識するNB-LRRタンパク質を進化させて対抗という関係が示されている.この進化上の攻守の入れ替わりがジグザグの名前の所以である.

このジグザグモデルをウイルスと植物の相互作用に当てはめて考えるとウイルスにトレードオフを強いる関係がみえてくる(図1).すなわち,植物ウイルスの多くはRNAをゲノムに持つRNAウイルスで,植物に感染するDNAウイルスを含めてゲノムサイズは小さく(<20 kb),3~13個の遺伝子しか持たない.だから,それぞれの遺伝子がコードするタンパク質は複数の機能を果たし,ウイルスの感染・増殖を成立させるために必須の働きを担う.そのため,あるウイルスタンパク質がエフェクターとしてNB-LRRタンパク質に認識される場合,ウイルスはその認識を逃れるためにウイルスエフェクターを捨てるわけにはいかず,NB-LRRタンパク質が認識する部位に変異を獲得して認識を逃れようとする.このとき,もしNB-LRRタンパク質がエフェクターのPTIを抑制するために重要な活性領域を認識すると,ウイルスはエフェクターの変異によりNB-LRRタンパク質認識によるETIを逃れられてもPTIを抑制できずに,今度はPTIによる制御をより強く受けることになる(図1A).このウイルスエフェクターの変異に強いられるトレードオフにより,PTIを完全に阻害し,かつETIを完全に逃れるようなウイルスの強毒化は起きえないため,結果としてウイルスに対するPTIとETIによる防御の有効性を維持できているのではないかという解釈である.

では実際に,植物のPTIとETIの組合わせで,ウイルスにトレードオフを強いる関係が成り立っていると思われる過去の研究について例示する.残念ながら,これまでにウイルスを認識してPTIを誘導するRLKは同定されていないが,最近,二本鎖RNAをウイルスPAMPsとして認識するRLKの存在が示唆されている5).二本鎖RNAをウイルスPAMPsとして認識することは理にかなっていて,上記したように,ウイルスの多くがRNAウイルスであるため,ゲノムRNAの複製過程や分子内高次構造として二本鎖RNAが感染細胞内で形成されるからである.実際,RLKを介したPTIではないが,二本鎖RNAにより誘導され,二本鎖RNAに相同な配列を持つRNAを分解するRNAサイレンシング(RNA干渉,RNAiとも呼ばれる)がウイルスに対する植物のPTIの一つと考えられている6).これを裏づけるようにほとんどの植物ウイルスがRNAサイレンシングを抑制するエフェクター因子(RNA silencing suppressor:RSS)をコードしている.これらRSSを認識するNB-LRRタンパク質が同定されるか,同定されていなくてもETI,つまりHRが誘導される例が複数報告されている6).そして,これらRSSを認識する受容体(おそらくNB-LRRタンパク質)が,RSSのRNAサイレンシング抑制活性を認識する例が報告されていることから7),ウイルスRSSの適応変異にトレードオフが強いられることが考えられる(図1B).

このウイルスRSSの適応変異へのトレードオフは,この後に述べる別の側面からも強固な仕掛けになっているのではないかと思われる.RNAサイレンシングは真核生物の多くの内生遺伝子もマイクロRNA(miRNA)と呼ばれる内生の小RNAを介して制御していることが知られる.最近,このmiRNAにより多くのNB-LRRタンパク質遺伝子発現が制御(抑制)されていることが報告された8, 9).ウイルスRSSを認識するNB-LRRタンパク質がmiRNAに制御されている場合,miRNAを介したRNAサイレンシングがRSSに阻害されるとRSSを認識するNB-LRRタンパク質の発現が増して防御反応が増強することになる.この場合,たとえNB-LRRタンパク質がRNAサイレンシングを抑制する活性の強弱とは無関係にRSSを認識するとしても,miRNAによるNB-LRRタンパク質の発現制御を介して,結果的にRNAサイレンシングを抑制する活性の強いウイルスRSSほどより強く認識され,より強い防御反応が誘導されることになる(図1B).さらにいえば,たとえNB-LRRタンパク質がウイルスRSSを認識せずに別のウイルスタンパク質を認識する場合でも(むしろ,ウイルスの外被タンパク質などRSSではないタンパク質を認識する例の方が多く見つかっている),RNAサイレンシングとの協働によりウイルスRSSの適応変異にトレードオフが強いられていると筆者は考えている(図2A).なぜなら,一般にウイルスRSSのRNAサイレンシングを抑制する活性が強いほど,ウイルスは感染細胞でより多く増殖するため,結果としてNB-LRRタンパク質に認識されるタンパク質の発現量も多くなる.そして,認識されるウイルスタンパク質の発現量の違いがNB-LRRタンパク質に認識されるかされないかを決定することが我々や他のグループの研究で示唆されている.すなわち,エンドウのNB-LRRタンパク質の一つと思われるCyn1はクローバ葉脈黄化ウイルス(ClYVV)のRSSであるHC-Proではないウイルスタンパク質(後述するP3N-PIPO)を認識するが,筆者らはClYVVの自然変異株の中に,HC-ProのRSS活性を弱める変異を持つことでCyn1を介したHRによる防御を逃れる変異ウイルスを見いだしている2, 10, 11)図2A).このようにNB-LRRタンパク質が直接認識するRSSの部位がどこであれ,さらには認識するウイルスタンパク質が何であれ,RNAサイレンシングとNB-LRRタンパク質を介したETIによりウイルスRSSの適応変異にトレードオフを強いることになるとすれば,RNAサイレンシングとNB-LRRタンパク質による協働で思いの外広範囲のウイルスRSSにトレードオフを強いる仕掛けがなされていると考えられる.

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図2 クローバ葉脈黄化ウイルス(ClYVV)にトレードオフを強いるエンドウの防御機構

(A)エンドウは,Cyn1によりP3N-PIPOタンパク質を感知することでClYVVの感染を認識して全身HRを誘導する.このとき,Cyn1が感知するP3N-PIPOはClYVVのRNAサイレンシング抑制タンパク質(RSS)ではないが,Cyn1を介した全身HRとRNAサイレンシングによりClYVVのRSSであるHC-Proの適応変異にトレードオフが強いられる.なぜなら,HC-Proが変異によりRSS活性を失うとRNAサイレンシングによるウイルス防御が増強して,ClYVV増殖が抑えられ,結果としてCyn1に感知されない程度までP3N-PIPOの発現量が低下するからである.(B)一方で,P3N-PIPOはcyv1による遺伝的に劣性のウイルス防御を打破するエフェクターとして働く.そして,Cyn1を介した全身HRとcyv1劣性防御によりP3N-PIPOの適応変異にもトレードオフが強いられている.

3. トレードオフを強いるのはRNAサイレンシングとETIに限らない

最近,筆者らは,RNAサイレンシングとは関係のないエンドウの劣性ウイルス防御機構とETIが協働して,ClYVVにトレードオフを強いることを見いだした.この劣性は,遺伝的に表現型が劣性形質を示すという意味である.上記のように植物ウイルスがコードする遺伝子は少なく,感染・増殖に宿主側の遺伝子を多く利用していることが示唆されている.この劣性ウイルス防御は多くの場合,翻訳開始因子などウイルスが感染・増殖に利用している宿主因子に変異が生じて,ウイルスのために機能しなくなることに起因する防御機構であり,ウイルス感染を阻害するためには変異遺伝子をホモに持つ必要があるため劣性形質となる.筆者らはエンドウの一部の品種が持つClYVVに対する遺伝的に劣性の防御機構cyv1が,ClYVVのP3N-PIPOタンパク質をコードする遺伝子の変異で打破されることを解明した.つまり,P3N-PIPOがcyv1による劣性防御に対してエフェクターとして働くということである.そしてエフェクターP3N-PIPOは,Cyn1(おそらくNB-LRRタンパク質をコードする)を持つエンドウで認識され,全身HRと呼ばれるETIが誘導される.P3N-PIPOとエンドウのcyv1とCyn1の関係についてさらに解析した結果,cyv1防御を打破する作用の強いP3N-PIPOほどCyn1により全身HRがより強く誘導されるというトレードオフの関係であることがわかった(図2B).

次に,NB-LRRタンパク質を介したETIではない防御機構とRNAサイレンシングの組合わせで,ウイルスにトレードオフを強いていると考えられる過去の研究について紹介する.一つは,トバモウイルス属のウイルスに対する非宿主抵抗性の原因となっているトマトのtm-1遺伝子である.非宿主抵抗性とは,種全般が示すウイルスの感染を完全に阻害する強い抵抗性で,石橋らによりtm-1がコードするタンパク質が同定された.tm-1タンパク質はトバモウイルス属の複製酵素(RNAポリメラーゼ)に結合し,複製を邪魔することでウイルスの増殖を阻害する12).実は,ウイルスの複製酵素は,多機能でRSSとしても働き,tm-1はそのRNAサイレンシングを抑制する機能に重要な領域に結合する.そのため,ウイルスがtm-1による抵抗性を逃れるために複製酵素に変異を獲得すると,同時に,変異複製酵素はRNAサイレンシングを抑制する活性を失うことが報告された13).つまり,tm-1による複製酵素を阻害するウイルス抵抗性とRNAサイレンシングが協働することでウイルス複製酵素の適応変異にトレードオフが仕掛けられているということが考えられる.

もう一つの例は,筆者らのカルモジュリン様タンパク質についての研究である.植物は脊椎動物の獲得免疫のような防御機構を持たないが,病原体の二次感染に対して抵抗性が高まる現象が古くから知られ全身獲得抵抗性と呼ばれている.この全身獲得抵抗性が誘導された植物で増強するキュウリモザイクウイルス(CMV)の抵抗性にタバコのカルモジュリン様タンパク質の一つrgs-CaMが関わることを見いだした14).rgs-CaMはCMV 2bを含むいくつかのウイルスRSSに結合して,RSSをオートファジーによる分解に導きRNAサイレンシングによるウイルス防御活性を高める働きを持つ15).このrgs-CaMによるウイルス防御は普段あまり働かず,一次感染で生じるサリチル酸シグナリングにより全身獲得抵抗性が誘導された植物で活性化するよう相変化することでウイルスに対する全身獲得抵抗性の増強に貢献している.rgs-CaMはRSSの二本鎖RNA結合領域に親和性を持つことでRSSに結合することが示唆された.RSSはさまざまなやり方でRNAサイレンシングを抑制するが,最も多いのは二本鎖RNAに結合してRNAサイレンシング機構から隔離することで,RNAサイレンシングの誘導やその後のターゲットRNAの特異的な分解を阻害するタイプである.このタイプのRSSは二本鎖RNAに結合することが必須で,たとえばCMV 2bは変異で二本鎖RNA結合能を失うと,同時にRNAサイレンシングを抑制する能力も失う.そして,この変異でCMV 2bのrgs-CaMとの親和性も低下したことから,rgs-CaMもRSSの活性を感知している,つまりrgs-CaMによるウイルス防御とRNAサイレンシングの組合わせでも,ウイルスRSSの適応変異にトレードオフを強いると考えられる.

この他にも,一つのウイルスタンパク質が独立した二つの防御機構もしくは防御関連タンパク質と相互作用している例はいくつかあり(ベゴモウイルス属のNSP1,カブクリンクルウイルスの外被タンパク質,トマトブッシースタントウイルスのP19, CMVの2b,ポティウイルスのHC-Proなど7)),今後の研究で,それらの組合わせでもウイルスにトレードオフを強いる関係が明らかになるかもしれない.このように,多様なウイルス防御機構の組合わせで,ウイルスエフェクターの適応変異にトレードオフを強いる関係が見いだされたことから,進化が速いウイルスに対して防御機構の有効性を維持するための植物の一般的な防御戦略ではないかと考えている(図1C).

4. おわりに

二つの事柄について言及して,本稿を終えたいと思う.一つは,NB-LRRタンパク質によってPAMPsではないウイルスタンパク質を特異的に認識する防御機構の有効性が維持される理由は,上記の二つの防御機構が強いるトレードオフだけではないということである.むしろ,こちらの場合の方が以前から語られてきたことであるが,NB-LRRタンパク質がウイルス粒子の安定性や複製酵素のポリメラーゼ活性など,ウイルスの生存や生活能力に重要な部位を認識している場合にも,その認識を逃れる変異がウイルスに不利に働くため,NB-LRRタンパク質による防御が有効に維持されると考えられる16, 17)

もう一つは,現存するウイルスを認識できず明らかな防御反応は誘導されない隠れたNB-LRRタンパク質がかなり存在するのではないかということである.これらのNB-LRRタンパク質はいらなくなった残骸であろうか? そうではない.たとえば,RNAサイレンシングと協働でウイルスにトレードオフを仕掛けている場合,ウイルスRSSがRNAサイレンシングをより強く抑制するような変異を獲得したときには,再度,変異RSSを認識して防御反応を誘導すると思われる.つまり,隠れたNB-LRRタンパク質もウイルスが変異で強毒化することを防ぐために依然として役立ち,備えられているのではないかと考えている.今後,ウイルス防御機構を研究したり,ウイルス抵抗性作物を育種したりする上で,トレードオフや隠れた抵抗性遺伝子についても考慮する必要があるのではないかと思われる.

謝辞Acknowledgments

本文は,北海道大学 上田一郎先生と農学部・農学院の学生・院生と行った共同研究をもとに執筆した.日本学術振興会の科学研究費補助金(25450055, 16H04879),ノバルティス科学振興財団,旭硝子財団などの助成により研究を遂行した.

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著者紹介Author Profile

中原 健二(なかはら けんじ)

北海道大学大学院農学研究院講師.博士(農学).

略歴

1993年北海道大学農学部農業生物学科を卒業し同農学研究科に入学.学位取得後,農林水産省果樹試験場リンゴ支場,秋田県立大学助手,ノースウェスタン大学博士研究員を経て,2004年北海道大学大学院助手,12年から現職.

研究テーマと抱負

植物のウイルス防御機構の分子メカニズムについて研究しています.それをもとに,ウイルス抵抗性を新たに作物に付与する実用的な成果をあげたいと思っています.

ウェブサイト

http://www.agr.hokudai.ac.jp/rfoa/abs/abs1-4.html

趣味

テニス.

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