進化的に保存された中心体の複製と成熟過程の分子機構
国立遺伝学研究所分子遺伝研究系中心体生物学研究部門 ◇ 静岡県三島市谷田1111
中心体は,動物細胞を含む多くの真核生物において進化的に保存された細胞小器官であり,微小管形成中心として機能する.中核的構造体である中心小体を中心体マトリックスが取り囲み,機能的な中心体が形成される.この特徴的なシリンダー型構造体は1細胞周期ごとに一度だけ,1コピー複製される.さらに,増殖を停止した細胞においては,中心小体は細胞膜にアンカーし,細胞外のシグナルを感知する繊毛の基底部としても機能する.すなわち,細胞分裂を含む多様な生命現象において中心小体は重要な役割を果たしている.近年,さまざまなモデルシステムを用いた網羅的アプローチにより,中心小体形成に必要な制御因子と構成因子,またそれら因子間の相互作用ネットワークの解析が精力的に進んでいる.細胞周期進行に応じて,複数の構成因子がどのようにコントロールされ,この複雑な構造体を構築するのか? 中心小体を1細胞周期中に1コピーだけ複製することを保証するメカニズムとは? 中心小体構造はどのように微小管形成中心としての機能を獲得するのか? 細胞がん化,遺伝病,男性不妊症を含むさまざまな疾患と密接に関連することで注目されている中心小体の複製機構,機能を獲得する成熟のメカニズムに関して,本稿では筆者らのこれまでの報告も交えて,最新の知見を紹介する.
© 2017 公益社団法人日本生化学会
This page was created on 2017-06-22T17:06:07.72+09:00
This page was last modified on 2017-08-18T09:12:46.570+09:00
このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。