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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 89(6): 841-855 (2017)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2017.890841

総説Review

痛みの生化学 最近20年の進歩Biochemistry of pain, progress in these 20 years

関西医科大学医化学講座Department of Medical Chemistry, Kansai Medical University ◇ 〒573–1010 枚方市新町2–5–1 ◇ 2–5–1 Shin-machi, Hirakata, 573–1010

発行日:2017年12月25日Published: December 25, 2017
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痛みはだれもが日常生活で常に体験するものであり,病院を訪れる患者の最も多い理由である.高齢社会を迎えた日本にあって,痛みは人々にとって最大の関心事であり,人類の克服すべき課題である.アリストテレスが「痛みは魂の苦悩」といったように,長い間,痛みは主観的,観念的であり,科学にはなりえないと考えられてきた.1997年にカプサイシン受容体が熱の侵害受容器として発見され,生化学的な研究がスタートしたのを契機として,1999年に痛みの分子機構について「痛みの生化学」と題して本誌に総説を執筆した(伊藤誠二,南敏明(1999)生化学,77, 17‒33).現在,痛みの感覚受容面だけでなく,情動認知面に関わる脳の痛みのネットワークが理解されつつある.本稿では,機能分子から動物個体にわたる痛みのメカニズムについて「痛みの生化学 最近20年の進歩」としてまとめる.

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