生体内銅イオン動態に着目した筋萎縮性側索硬化症の病理解明
慶應義塾大学理工学部 ◇ 〒223–8522 神奈川県横浜市港北区日吉3−14−1
発行日:2018年6月25日
銅・亜鉛イオンを結合するタンパク質であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)は,活性酸素の除去を担う重要な抗酸化酵素であるとともに,神経変性疾患の一種である筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病因タンパク質としても知られている.ALSの主要な病変部位である脊髄運動ニューロンには,変異型SOD1の異常な蓄積が観察されることから,SOD1のミスフォールディングが神経変性に関与する可能性が指摘されている.筆者らは,SOD1が金属イオンを解離するとタンパク質構造が不安定化し,不溶性凝集体や可溶性オリゴマーが形成することをin vitro/in vivoの両面から明らかにしてきた.そこで本稿では,金属イオン結合プロセスの異常に伴うSOD1のミスフォールディング機序について解説し,生体内銅イオン動態の制御を通じたALS治療法の可能性について,近年の研究動向を紹介する.
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