新たに同定された赤血球のS1P輸送体MFSD2B
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赤血球は血漿中S1P濃度の維持に重要な役割を果たしており,S1Pが関与するさまざまな現象に関わっている.赤血球からのS1P放出が細胞膜輸送体を介していることが示されて以降,その分子実体の解明が待たれていた.最近になって,MFSD2Bが赤血球のS1P輸送体として機能することが明らかとなった.MFSD2BによるS1P輸送は赤血球反転膜小胞を用いて明らかにしたS1P輸送と同様の生化学的特徴を持っており,その輸送機構は受動的輸送であると考えられる.MFSD2B欠損マウスでは,赤血球と血小板からのS1P放出活性がなくなり,赤血球自体が溶血しやすくなるなどの表現型がみられた.しかし,MFSD2B欠損マウスの血漿中S1P濃度は野生型マウスの50%程度に保たれており,リンパ組織から血液中へのリンパ球移行はほぼ正常であった.MFSD2Bの同定により生体内の主要なS1P輸送体が同定されたことになり,S1Pシグナリングの全体像の解明が可能となった.
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