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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 90(5): 581-587 (2018)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2018.900581

特集Special Review

新たに同定された赤血球のS1P輸送体MFSD2BIdentification of a novel S1P transporter in erythrocytes

1摂南大学薬学部生命融合化学分野Department of Biochemistry, Faculty of Pharmaceutical Sciences, Setsunan University ◇ 〒573–0101 大阪府枚方市長尾峠町45–1 ◇ 45–1 Nagaotoge-cho, Hirakata, Osaka 573–0101, Japan

2大阪大学産業科学研究所生体分子制御科学研究分野Department of Biomolecular Science and Regulation, Osaka University ◇ 〒567–0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘8–1 ◇ 8–1 Mihogaoka, Ibaraki, Osaka 567–0047, Japan

3大阪大学大学院薬学研究科細胞生物学分野Faculty of Pharmaceutical Science, Osaka University ◇ 〒565–0871 大阪府吹田市山田丘1–6 ◇ 1–6 Yamadaoka, Suita, Osaka 565–0871, Japan

発行日:2018年10月25日Published: October 25, 2018
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赤血球は血漿中S1P濃度の維持に重要な役割を果たしており,S1Pが関与するさまざまな現象に関わっている.赤血球からのS1P放出が細胞膜輸送体を介していることが示されて以降,その分子実体の解明が待たれていた.最近になって,MFSD2Bが赤血球のS1P輸送体として機能することが明らかとなった.MFSD2BによるS1P輸送は赤血球反転膜小胞を用いて明らかにしたS1P輸送と同様の生化学的特徴を持っており,その輸送機構は受動的輸送であると考えられる.MFSD2B欠損マウスでは,赤血球と血小板からのS1P放出活性がなくなり,赤血球自体が溶血しやすくなるなどの表現型がみられた.しかし,MFSD2B欠損マウスの血漿中S1P濃度は野生型マウスの50%程度に保たれており,リンパ組織から血液中へのリンパ球移行はほぼ正常であった.MFSD2Bの同定により生体内の主要なS1P輸送体が同定されたことになり,S1Pシグナリングの全体像の解明が可能となった.

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