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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 91(1): 114-119 (2019)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910114

みにれびゅうMini Review

肺がんのがん分子標的薬耐性の基盤Drug resistance mechanisms in non-small cell lung cancer

公益財団法人がん研究会がん化学療法センター基礎研究部Div. of Experimental Chemotherapy, Cancer Chemotherapy Center, Japanese Foundation for Cancer Research ◇ 135–8550 東京都江東区有明3–8–31 ◇ 3–8–31 Ariake, Koto-ku, Tokyo 135–8550, Japan

発行日:2019年2月25日Published: February 25, 2019
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1. 肺がんのドライバーがん遺伝子と分子標的薬

わが国におけるがんの死亡原因の第1位は肺がんであり,がん全体の死亡者数の20%以上に上る.肺がんは,病理組織学的に腺がん,扁平上皮がん,神経内分泌がん(小細胞肺がん)に大別することができ,中でも腺がんは喫煙者ばかりでなく非喫煙者の方からも見つかる肺がんである.肺腺がんにおいては,近年,上皮増殖因子受容体(epidermal growth factor receptor:EGFR)活性化変異やALK融合遺伝子などのドライバーがん遺伝子が発見され,それらを標的としたがん分子標的薬の開発が相次いで行われており,顕著な腫瘍縮小効果を示す薬剤が複数承認され,実臨床で使用されている.それにより,それまでIV期の進行肺がんと診断されてからの平均生存期間は1年から1年半程度であったが,対応するがん分子標的薬が開発されたドライバーがん遺伝子陽性の進行肺がんでは,平均生存期間が3~4年を超えるまでになってきている.しかしながら,それでもほとんどの症例で,がん分子標的薬に対する獲得耐性が生じ再発してしまうことが問題となっている.EGFR変異陽性肺がんやALK融合遺伝子陽性肺がんなどでは,獲得耐性時にも有効ながん分子標的治療薬が開発されているものの,それらに対するさらなる耐性も出現し,完治を目指すことが難しいのも現実である.本稿では,EGFR変異,ALKおよびROS1融合遺伝子陽性肺がんに焦点を絞り,がん分子標的薬と獲得耐性,さらには最新の耐性克服の可能性について紹介する.

2. EGFR変異陽性肺がんと薬剤耐性

EGFRは受容体型チロシンキナーゼであり,EGFだけでなく,HB-EGFやTGF-Aなど複数のリガンドが同定されている.通常はリガンド依存的に二量体形成が起こり,活性型構造をとることで自己と基質のチロシンリン酸化を介して,細胞内に増殖シグナル等を伝えている.主な下流因子としては,RAF/MEK/ERKのMAPキナーゼカスケードや,PI3K/AKT/mTOR経路などが知られており,いずれも細胞の生存・増殖に重要な役割を果たしている1)

EGFR変異陽性肺がんの約9割においては,EGFRのエキソン19の5アミノ酸程度の欠損(del19)や,エキソン21の点突然変異(L858Rなど)のいずれかが起こっており,それらによりキナーゼがリガンド非依存的に恒常的に活性化する.それにより,過剰な生存・増殖シグナルがEGFRから伝達されることで,がん化が引き起こされる2).このEGFR活性化変異は,日本人肺腺がんの約半数を占め,欧米人に比べても突出してその比率が高い.しかしながらその理由は明らかとなっていない.また,EGFRの活性化変異は肺がん以外では非常にまれである.EGFRは肺組織以外に上皮組織でも発現しているにもかかわらず,なぜEGFRの活性化変異によるがんが肺がんで特異的に多いのか,理由はいまだに明らかでない.

このEGFR活性化変異体陽性の肺がんは,EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対する感受性が非常に高く,これまでに複数のEGFR-TKIが開発され,実臨床に応用されている2).最初に開発・承認された第1世代EGFR-TKIのGefitinibやErlotinibは,ATP競合型のチロシンキナーゼ阻害薬であり,その後開発された第2世代EGFR-TKIのAfatinibなどは分子内にマイケルアクセプターを持つ共有結合型の阻害薬である.その共有結合部位は,図1に示すように797番目のシステイン残基(C797)であるといわれている3).これらの第1, 2世代のEGFR-TKIは,del19にもL858R変異型にも高い有効性(抗腫瘍効果)を示している.しかしながら,ほとんどの症例において,1年から数年の間に耐性が生じ再発してしまう.その主な理由として,T790M変異(ゲートキーパー変異と呼ばれる)がキナーゼのATP結合ポケット内に生じ,ATPに対する薬剤の親和性が相対的に低下するためと考えられている4).残りの約半数弱の症例では,①別の受容体型チロシンキナーゼであるcMETやERBB2の遺伝子の増幅や活性化,②EGFRの下流因子PI3Kの活性化変異,③非小細胞がんが小細胞がんに転化するといった多様なメカニズムにより獲得耐性が生じると考えられている(図2).T790M変異型EGFRに対しても,低濃度で増殖阻害活性を有する薬剤として,OsimertinibやEGF816, TAS121などさまざまな薬剤が開発されてきた.これらはいずれもC797に共有結合するタイプの薬剤であり,中でもOsimertinibは第1, 2世代EGFR治療後にT790M陽性であったEGFR変異肺がん患者において,6割程度にもなる奏効率(30%以上の腫瘍縮小率が認められた症例の割合)が認められており,まずT790M陽性EGFR変異肺がんに対する治療薬として承認された5).Osimertinibの大きな特徴の一つとしては,野生型EGFRに比べて活性化変異(del19やL858Rなど)とT790M型EGFRの阻害に必要な薬剤濃度が数十倍以上低い,選択的な活性化型EGFR阻害薬であることである6).さらに,第1世代EGFRとOsimertinibを,EGFR変異陽性肺がんの初回治療薬として比較する臨床試験の結果,Osimertinibが有意に長い無増悪生存期間を示したことから,2018年からはEGFR変異陽性肺がんの初回治療からの使用も承認された7).T790M変異陽性肺がんにOsimertinibを使用した際の獲得耐性機構については,最近相次いで報告がなされており,約20~25%の症例においてはOsimertinibの共有結合部位であるC797がセリンにかわる変異(C797S)が見つかっている.その他にも第1, 2世代EGFR-TKIによりみられたのと同様な耐性機構や,新たな耐性メカニズムなど多様な耐性機構が報告されている8).しかし,Osimertinibを初回治療で使用した際の耐性機構についてはまだ報告が少なくあまり明らかとなっていない.臨床試験において初回治療としてOsimertinibによる治療を受けた方のうちで耐性となった9症例を解析した結果においては,C797S変異が2例で認められた以外にもKRAS遺伝子の変異や増幅,cMET遺伝子の増幅,PI3K遺伝子の変異など,多様な耐性機構が報告されている9).また,C797S変異を獲得したEGFR活性化変異陽性がんにはどのような薬剤が有効か,そしてその薬剤によりどのような耐性変異が起こりうるかを予測するために,DNAアルキル化剤であるENU(N-ethyl-N-nitrosourea)を用いてBa/F3細胞に人為的に多数の変異を導入し,各種EGFR-TKIによりセレクションすることでその耐性変異の探索を行った.ここで使用したBa/F3細胞はマウスPro-B細胞株であり,通常の培養条件ではIL-3依存的に増殖している.しかし活性化変異型EGFRやALK融合遺伝子などの強力ながん遺伝子を発現させると,それらからの細胞増殖シグナルがIL-3によるIL-3受容体を介した増殖シグナルを代償することにより,IL-3非存在下でも生存・増殖するようになる.このドライバーがん遺伝子に依存して増殖するようになったBa/F3細胞は,導入したがん遺伝子産物(EGFRやALKなど)に対する分子標的薬に高い感受性を示すため,薬剤のスクリーニングや,ENUなどを用いた薬剤耐性変異の同定等の研究にしばしば利用される.活性化変異EGFRを発現するBa/F3細胞をENU処理してGefitinibまたはOsimertinibでセレクションした場合には,それぞれEGFR-T790MとC797S変異がドミナントな変異であることが,予想どおり確認できた.次に,C797S/活性化変異(del19またはL858R変異)型EGFRを発現する細胞で同様の検討を行った場合には,Gefitinibによるセレクションにより,T790M/C797S/活性化変異が,Afatinibによるセレクションでは,T790M/C797S/活性化変異だけでなくT854AやL792HとT790M/活性化変異が耐性変異として得られた(図310).なお,この実験系においては,活性化変異EGFRを発現させてENU処理したBa/F3細胞にOsimertinibとGefitinibを同時投与した場合には,EGFR遺伝子内の二次変異による耐性クローンはみられず,耐性として出現してきたクローン数は著しく少なかった.Osimertinib耐性となった患者検体やこの実験で得られたC797S/T790M/活性化変異型EGFRは,あらゆる既存のEGFR阻害薬に顕著な治療抵抗性を示すが,我々は,後述するALK融合遺伝子陽性肺がんの治療薬として開発が進められている(米国では承認されている)ALK阻害薬のBrigatinibと抗EGFR抗体を併用することで,C797S/T790M/活性化変異EGFRによる耐性を克服できることを見いだした11).この他にも,EGFRのアロステリック阻害薬と抗EGFR抗体の併用によりC797S/T790M/L858R耐性変異の克服が期待できることが報告されている12)

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図1 EGFRチロシンキナーゼの構造

AfatinibとEGFR(キナーゼ領域)の共結晶構造データ(PDB:4G5J)を元に,PyMOLを使用してその構造をリボン図で示した.AfatinibがEGFRのC797に共有結合してATP結合ポケットにすっぽりと収まるようすが示されている.del19, L858Rの場所は図中に矢印で示した.

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図2 T790M耐性変異以外のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬耐性メカニズムの概要

(A) cMETの増幅やHGFを介したcMET活性化によるバイパス経路活性化.(B) ERBB2の遺伝子増幅等を介したバイパス経路活性化.(C) PI3Kなどの下流シグナル伝達分子の活性化変異等によるバイパス経路活性化.(D)その他のメカニズム.

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図3 EGFR活性化変異陽性肺がんの治療順と耐性変異予測

EGFR活性化変異陽性肺がんのEGFR阻害薬による治療ストラテジーと起こりうる主な耐性変異を図示した.青矢印で示す従来の治療順序に加えて,赤で示す第3世代EGFR-TKIのOsimertinibを初回治療で使用することまでが承認されている.オレンジや緑の矢印で示した治療の可能性と耐性変異出現の可能性は実験的に示された結果に基づく予測である.

3. ALK融合遺伝子と治療抵抗性の分子機構

ALKはEGFRと同様に受容体型チロシンキナーゼタンパク質であり,そのリガンドとしてFAM-150が同定されている.しかしながら,ALKは胎児期の脳神経細胞を除いてはごく一部の細胞にしか発現しておらず,またノックアウトマウスは正常に発生し,はっきりとした異常が観察されないことから,成体における機能は十分明らかでない.がんにおけるALKは,1994年に未分化大細胞リンパ腫(ALCL)においてALK融合遺伝子NPM-ALKとして発見された13).さらに,2007年には初めて肺がんにおける融合遺伝子としてEML4-ALKが発見され,その後肺がんではさまざまな融合遺伝子が発見された14).ALK融合遺伝子では,恒常的に発現し二量体を形成できるタンパク質をコードする遺伝子がN末端側に融合することで,ALKのチロシンキナーゼの恒常的発現と活性化が起こり,下流のRAF/MEK/ERKや,PI3K/AKT/mTOR経路などの過剰活性化によりがん化が促進される.したがって,EGFRと同様に,ALKのチロシンキナーゼ活性を阻害することでALK融合遺伝子陽性がん細胞の増殖停止と細胞死を誘導できると考えられることから,ALK-TKIの開発が盛んに進められてきた.CrizotinibはcMET阻害薬として開発されていたが,ALKの阻害活性もあった(図4)ことから,急遽ALK阻害薬として臨床試験が実施された.その結果,殺細胞性抗がん剤に比較して有意に無増悪生存期間を延長したため2012年にはわが国においても承認され,第1世代ALK-TKIとして広く臨床で用いられてきた15).Crizotinibからやや遅れて,複数の第2世代ALK阻害薬(AlectinibやCeritinib)が開発された.それら第2世代ALK阻害薬の特徴としては,Crizotinib耐性変異として最初に見つかったL1196Mゲートキーパー変異(EGFRのT790Mに相当)をはじめ複数のCrizotinib耐性変異にも有効であったことがあげられる16, 17).実際にCrizotinib耐性後の患者を含むALK陽性肺がん患者を対象とした第2相臨床試験において,Crizotinib既治療患者であっても半数以上の症例で腫瘍縮小効果が認められ,第2世代ALK阻害薬として承認された.なお,Alectinibについては,本邦においてはCrizotinib未治療の患者を対象とした第2相臨床試験の結果に基づき,承認時より,Crizotinib既治療例に限らずALK陽性肺がん患者への使用が承認されていた.のちに,CrizotinibとAlectinibを初回治療薬として直接比較する第3相臨床試験の結果,AlectinibがCrizotinibに比べ2倍以上の有意に長い無増悪生存期間を示したことから18, 19),現在AlectinibがALK陽性肺がんに対する初回治療薬として幅広く使用されるようになっている.これら第2世代ALK-TKIに対する耐性機構としては,Alectinib耐性機構として,I1171N/T/S, V1180L, G1202R変異などが,Ceritinib耐性変異としては,F1174V/C, G1202R変異などの二次変異によるものが約半数の症例で認められている.これらの二次変異の一部はCrizotinib耐性変異としても認められているものもある.また,その他の耐性メカニズムとしては,cMETの遺伝子増幅(Crizotinib耐性時は除く)やIGF1Rの活性化,EGFRの活性化,cKITの遺伝子増幅とそのリガンドであるSCFの発現上昇などを介したバイパス経路の活性化が見つかっている.これらの受容体型チロシンキナーゼ(cMETやEGFR, IGF1R, cKIT)が活性化すると,ALK融合遺伝子産物からの増殖シグナルがALK阻害薬によって抑制された状況においても,ALKに代わってこれらの受容体型チロシンキナーゼから同じ下流シグナル経路(RAF/MEK/ERK経路やPI3K/AKT経路など)の活性化が生じ,がん細胞は“バイパス経路”を利用して増殖できるようになり,薬剤耐性となる.また,CeritinibとCrizotinib耐性症例の一部からは,薬剤排出ポンプであるP糖タンパク質の過剰発現により,ALK阻害薬が細胞外へと排出されることで耐性となっていることが見つかっている20)

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図4 ALKチロシンキナーゼの構造

CrizotinibとALK(キナーゼ領域)の共結晶構造データ(PDB:2XP2)を元に,PyMOLを使用してその構造をリボン図で示した.CrizotinibがATP結合ポケットにすっぽりと収まるようすが示されている.

また,本邦では未承認ではあるが,米国においては,第2世代ALK阻害薬Brigatinibも二次治療以降のALK-TKIとしての使用が承認されている21).第1, 2世代のALK阻害薬に共通した耐性変異としては,G1202R変異が比較的高頻度に見つかっており,その耐性克服薬の一つとしては,Crizotinibを12員環構造に構造最適化したALK-TKIのLorlatinibが創製されており,臨床試験においてもG1202R変異が確認されたALK-TKI耐性症例における有効性も報告されている22).2018年9月には本邦において世界に先駆けてLorlatinibが承認された.このLorlatinibは,血液脳関門において薬剤の脳内移行を防いでいるP糖タンパク質による排出を受けにくいため,脳脊髄液への分布がよく,Crizotinib耐性時によくみられる脳や脳脊髄液中への転移にも有効であるとされている.しかし,このLorlatinibに対する耐性も,臨床検体や細胞株を用いた実験により明らかにされている.これまでの報告では,耐性変異が二つ以上起こることでLorlatinibに強い抵抗性を獲得することなどが報告されている.たとえば,Crizotinib耐性時にC1156Y変異があった患者がLorlatinib後にC1156Y+L1198F変異が見つかったケースでは,興味深いことにLorlatinibに耐性を示すC1156Y+L1198FがCrizotinibに再感受性を示し,実際にLorlatinib耐性後に受けたCrizotinibでの再治療により顕著な腫瘍縮小が認められている.この現象は,L1198F変異がCrizotinibとの親和性増加に大きく寄与している一方でLorlatinib親和性を大きく損ねる変異であることが構造解析から明らかにされている23)

肺がんにおけるALK融合遺伝子で最も高頻度に認められるのはEML4-ALKであり,その中でもEML4のエキソン13とALKのエキソン20が融合するvariant1とEML4のエキソン6とALKのエキソン20が融合するvariant3が最も多く認められているが,がん化や,ALK阻害薬感受性においては,これらのvariant間での違いはあまり明らかとなっていない.しかし,このvariantによってALK-TKI耐性変異の出現パターンが異なる可能性が報告されている.特にG1202R変異はEML4-ALK variant1ではほとんど認められずvariant3の患者でのみ見つかる.このメカニズムはまったく不明であり,今後のさらなる研究成果が期待される.

4. ALK以外の融合遺伝子と分子標的薬およびその耐性

肺がんにおいて,ALKのようなチロシンキナーゼ融合型のドライバーがん遺伝子として,ROS1融合遺伝子,RET融合遺伝子,NTRK融合遺伝子が見つかっている24).いずれもN末端側に,比較的恒常的に発現し二量体化能や細胞内膜へ局在する性質を有する遺伝子が融合し,C末端側には完全なキナーゼ領域がin frameで融合する.それにより,恒常的に発現したROS1やRETなどのチロシンキナーゼが恒常的に活性化し,がん化を誘導する.したがって,ALKと同様にチロシンキナーゼ阻害薬がそれらの融合遺伝子陽性がんの増殖を顕著に抑制する.ROS1チロシンキナーゼはALKチロシンキナーゼとの相同性が非常に高く,複数のALK阻害薬がROS1阻害薬としても開発されてきており,なかでもCrizotinibは現時点でROS1融合遺伝子陽性肺がんに対する治療薬として承認されている.Crizotinib耐性機構については,ALKのG1202R変異と相同な部位にあたるG2032R変異が最も高頻度で認められており,それらに対する治療薬候補として,Cabozantinibが有効であることが実験的に示されているが,現時点で臨床上有効性が確認された治療薬はない25).また,RETやNTRK融合遺伝子陽性がんに対しては,現在複数のチロシンキナーゼが開発途中にあり,その耐性機構も併せて明らかにされつつある.

5. おわりに

非小細胞肺がんの治療は,EGFR活性化変異やALK融合遺伝子などのドライバーがん遺伝子の発見とその数多くのチロシンキナーゼが開発され,進行がんであってもドライバーがん遺伝子陽性で対応する分子標的薬がある場合にはその平均生存期間が3年以上にもなってきた(殺細胞性抗がん剤を中心とした治療しかなかった時代には進行肺がんの平均生存期間は1年程度しかなかった).しかしながら,ほとんどのケースで耐性腫瘍が出現し,完治が望めないというのが現実である.耐性の出現は,ごくわずかな細胞集団であっても治療抵抗性残存腫瘍があることが,そもそもの原因である.より効果的な治療を目指すためには,それらの残存腫瘍の薬剤存在下での生存メカニズムと,変異等の耐性獲得のメカニズムを明らかにする基礎研究が必要であろう.

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著者紹介Author Profile

片山 量平(かたやま りょうへい)

(公財)がん研究会がん化学療法センター基礎研究部部長.博士(薬学).

略歴

1978年和歌山県に生る.2001年東京大学薬学部卒業.06年同大学院薬学系研究科博士課程修了・学位取得.10~12年に学振海外特別研究員として米国留学.17年より現職.

研究テーマと抱負

がんの研究がしたいと研究者になり,がんの基礎研究,トランスレーショナル研究を行ってきた.現在は主に肺がんの治療薬抵抗性機構と克服法の探索,新規治療標的の探索研究に勤しんでいる.

ウェブサイト

http://www.jfcr.or.jp/chemotherapy/department/fundamental/

趣味

ジョギング・サイクリング・子供と遊ぶこと・おいしいものを食べること.

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