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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 91(2): 169-177 (2019)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910169

総説Review

胃プロトンポンプの結晶構造によって明らかになった胃酸分泌の分子機構Molecular mechanism for the gastric acid secretion revealed by crystal structures of the gastric proton pump

名古屋大学細胞生理学研究センター・大学院創薬科学研究科Cellular and Structural Physiology Institute, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Nagoya University ◇ 名古屋市千種区不老町 ◇ Furo-cho, Chikusa-ku, Nagoya, 464–8601, Japan

発行日:2019年4月25日Published: April 25, 2019
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胃の中は強い酸性である(pH 1).この状況は,細胞内溶液が中性(pH 7)であることを考慮すると,実に106=100万倍のH濃度勾配に相当する.これは胃プロトンポンプ(H, K-ATPase)が「酸」の実体であるH(水素イオン,プロトン)を輸送することで作り出されている.ヒトの遺伝子には,プロトンポンプや,Na,K等のカチオン輸送体が数多くコードされているが,我々の体には,胃の他にこれほど酸性度の高い,もしくは急峻なカチオンの濃度勾配を持った組織は存在しない.胃プロトンポンプは,どのようにしてpH 1もの酸性溶液を作り出しているのであろうか? 胃プロトンポンプの結晶構造解析によって,その仕組みの一端が明らかになってきた.

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