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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 91(4): 565-571 (2019)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2019.910565

みにれびゅうMini Review

銅含有アミン酸化酵素触媒反応におけるコンホメーション変化のin crystallo熱力学解析In crystallo thermodynamic analysis of the cofactor conformational change induced during the catalytic reaction of copper amine oxidase

1大阪医科大学生化学教室Department of Biochemistry, Osaka Medical College ◇ 〒569–8686 大阪府高槻市大学町2–7 ◇ 2–7 Daigakumachi, Takatsuki, Osaka 569–8686, Japan

2高輝度光科学研究センタータンパク質結晶解析推進室Protein Crystal Analysis Division, Structure Analysis Promotion Group, Japan Synchrotron Radiation Research Institute ◇ 〒679–5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1–1–1 ◇ 1–1–1 Kouto, Sayo-cho, Sayo-gun, Hyogo 679–5198, Japan

3大阪大学産業科学研究所生体分子反応科学研究分野Department of Biomolecular Science and Reaction, Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University ◇ 〒567–0047 大阪府茨木市美穂ケ丘8–1 ◇ 8–1 Mihogaoka, Ibaraki, Osaka 567–0047, Japan

発行日:2019年8月25日Published: August 25, 2019
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1. はじめに

現在,タンパク質結晶のX線構造解析は,放射線損傷を低減するため極低温で凍結結晶の回折測定を通じて行われることが多い.その結果得られた構造は,タンパク質が実際に機能する20~30°C付近での立体構造とは,基本的には大きく変わらないとされている.しかし,凍結時に室温でとりうる多彩な構造のいくつかが失われており,タンパク質が実際にどのように働くかを説明できないことが懸念されている.さらに,フラッシュクーリングによって凍結された結晶構造は温度情報があいまいなことから,エネルギー的な議論を行うことが困難であることも,酵素反応論を専門とする研究者などから指摘されていた.タンパク質を含む化学反応の解析は,一般には正確な温度条件下で行われ,その実験結果をもとに議論される.すなわち,速度論的な解析や,分光学的手法を用いた構造変化の測定(CDスペクトルや表面プラズモン共鳴など)などは,正確な温度情報と組み合わせることでエネルギー的な解釈が可能となるが,これまでのX線結晶構造解析では,その点が考慮されていなかった.

近年,上記理由により,非凍結結晶を用いたX線回折測定が脚光を浴びつつある1).特に,本稿の著者の一人,馬場清喜らが開発したHumid Air and Glue-coating method(HAG法;以下の3節に詳細を述べる)は,凍結と非凍結結晶測定のそれぞれの利点をあわせ持ち,かつ実験デザインの自由度が高いことから,多くのタンパク質研究者の注目を集めている2, 3).本稿では,最近著者らによって発表された,HAG法を用いた銅含有アミン酸化酵素コンホメーション変化の熱力学的解析4)について紹介する.

2. 銅含有アミン酸化酵素

銅含有アミン酸化酵素は,微生物から哺乳動物に至る生物界に広く分布し,種々の生理活性一級アミン類の酸化的脱アミノ反応を触媒する5).本酵素はサブユニット分子量70,000~95,000のホモ二量体構造を持ち,各サブユニットは,補欠金属の2価銅イオンとペプチド・ビルトイン型キノン補酵素,トパキノン(TPQ)を含有している(図1A).TPQは酵素遺伝子の中でアミノ酸残基のチロシンとしてコードされており,銅と酸素の存在下で自己触媒的にチロシン残基から形成される.本酵素の触媒過程は,TPQの酸化還元状態により,還元的半反応と酸化的半反応の二つに分けられ6),各反応中間体は可視領域に特徴的な吸収スペクトルを持つ.

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図1 AGAOの構造と触媒メカニズム

(A)AGAOの構造.拡大図は活性中心.off-Cu(TPQamr)とon-Cu(TPQsq)を,それぞれマゼンタと緑で色づけした.(B)推定される触媒機構.TPQox:酸化型,TPQamr:アミノレゾルシノール,TPQsq:セミキノンラジカル.

我々はこれまで土壌細菌Arthrobacter globiformis由来の銅アミン酸化酵素(AGAO)を用いて,反応機構の解析を行ってきた6–9).最近,嫌気条件下では前半の還元的半反応のみが進行し,二つの反応中間体,アミノレゾルシノール(TPQamr)とセミキノン(TPQsq)の平衡状態となることを明らかにした(図1B10).TPQamrからTPQsqへの過程は吸熱反応であり,補酵素TPQは銅イオンに配位しないoff-Cu型から銅イオン配位型であるon-Cu型へと大きくコンホメーション変化する(図1A拡大図).分光学的な解析からは,TPQamrとTPQsqの平衡は,温度およびpHに依存することが明らかとなった10, 11)

そのため我々は,次にpHに依存した構造変化の解析を試みた.具体的には,さまざまなpHで調製した反応中間体結晶を液体窒素で凍結し,回折測定を行った.ところが同一pHで調製しても,結晶ごとのデータのバラツキが非常に大きく,また,溶液実験のデータとも大きく異なった.これは,TPQamrとTPQsqの平衡はpHだけでなく温度にも依存することから,凍結作業時の温度変化により平衡が移動したためと考えられた.ここで疑問となったのが,結晶の温度である.たとえば上記実験では,結晶は以下のようにさまざまな温度を経由している.

  • 結晶析出(16°C)
  • 嫌気ボックス内で嫌気化→基質溶液への浸漬(25~30°C)
  • 結晶のピックアップ(室温~嫌気ボックス内の顕微鏡の発熱により30~40°C?)
  • 液体窒素に浸して凍結(およそ−200°C)

フラッシュクーリングにより凍結した結晶構造は,どの温度における構造を反映しているのだろうか? そもそも,すばやく液体窒素に浸し,結晶を凍結した場合と,徐々に液体窒素に近づけ凍結した場合では,結晶は同一条件といえるのだろうか? 化学平衡は基本的に温度の影響を受けるので,作業時の温度が異なれば,溶液組成が同じでも得られる構造は異なるはずである.すなわち,pH依存性を正確に測定するには,温度を一定にしなければならない.また,このことは,もし結晶の温度を正確に調節できれば,温度変化による平衡の移動と,それに伴うコンホメーション変化を直接観察することが可能であることを示唆している.

3. HAG法による測定

前節のアイディアを確かめるため,我々はタンパク質結晶の新しいマウント法であるHAG法2, 3)を用いた解析を試みた.HAG法では凍結法と同様なループ上に結晶をすくうが,ポリビニルアルコール(PVA)で結晶を包み,湿度が調節されたガス(調湿ガス)を吹きつけながら回折測定を行う.PVAが結晶と調湿ガス間で水分を緩やかに仲介することによって,結晶の乾燥が防がれる.また,凍結結晶作製の際に添加されるグリセロールなどに比べ,PVAは分子量が大きく結晶内に浸透せず,結晶が損傷しにくい.上記の利点により,凍結結晶に比べ大幅なデータの改善がみられた例がいくつか報告されている.より詳細な内容については,原著論文および日本語の総説を参照されたい2, 3)

さらに,本研究の実施時期にあわせて,いくつかの改良が既存のHAG法装置に加えられた.まず湿度調整ガスは,これまで大気ガスを湿潤したものを室温で用いていたが,窒素ガスでの利用が可能になり,そこに温度制御装置が加えられた.さらに温度調整が可能な嫌気ワークベンチが作製され,SPring-8のビームライン内に設置された.これらにより,結晶への基質添加から回折測定までを,嫌気状態下で,かつ温度が正確に制御された環境下で実施することが可能となった12)

実験のアウトラインを以下に示す.まず著者らの研究室でAGAO結晶の嫌気化を行い,嫌気状態を保ったままSPring-8に輸送した.その後,ビームラインに設置した調温嫌気ワークベンチ内で結晶温度を調節後,基質アミンを添加した.結晶の色の変化から反応が平衡に達したことを確認したのち,HAG法により結晶をマウントし,温度と嫌気環境を保ったまま回折測定を行った.凍結条件と比べて非凍結条件での回折実験は,X線照射による損傷が甚大である.そこで,十分な厚みのアルミニウムでX線量を弱め,かつ比較的大きな結晶を用いて照射位置を少しずつ移動させながらX線を照射することにより,吸収線量を1データあたり4.8 kGyに抑えて測定を行った13)

4. 結晶内におけるTPQsq/TPQamr平衡の熱力学的解析

各温度における平衡状態の構造を図2Aに示す.基質はエチルアミンとし,pH 6.0で測定を行った.本酵素は2-フェニルエチルアミン(2-PEA)がよい基質になるが,親和性の高い基質を用いると,生成物アルデヒドが活性中心に残り反応に影響することが示唆されている.このため,今回は親和性の低い基質(すなわち,生成物も活性中心から速やかに排出されると期待される)を用いた.構造解析の結果,溶液での測定と同様に,温度が上昇するに従ってTPQamrの割合が減少し,それに伴いTPQsqが増加した(図2B).また,HAG法を用いた結晶顕微分光測定によっても,温度に依存したTPQsqの特徴的な吸収スペクトルの変化が観測され,上記の構造データとよく一致した4)

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図2 TPQsq/TPQamr平衡の温度依存性

基質はエチルアミンを用い,pH 6.0で測定した.(A)4, 10, 15, および20°CにおけるTPQsq(緑色)およびTPQamr(マゼンタ)のモデルを,残基382(TPQ)についてのFoFcオミットマップ(3.5σ,灰色メッシュ)と重ね合わせた.水分子と銅原子は,それぞれシアンとオレンジの球で表した.(B)各温度でのTPQamrおよびTPQsqの平均占有率(n≧6)をS.E.とともに棒グラフで示した.マゼンタ(棒グラフのパターン,ドット):TPQamr,緑(塗りつぶし):TPQsq.(C)溶液および結晶中のTPQsq/TPQamr平衡のvan’t Hoffプロット.溶液中の値は黒(丸),結晶中の値は赤(四角)で示した.(D)結晶内でのパッキングによる熱力学的なパラメータへの寄与を模式的に示した.

構造解析により得られた中間体の比率(TPQsq/TPQamr)をvan’t Hoffプロットし,TPQsq形成過程の熱力学的パラメータを求めた(図2C).その結果,溶液中(ΔH°solution=26 kJ/mol, ΔS°solution=83 J/mol/K)と結晶中(ΔH°crystal=38 kJ/mol, ΔS°crystal=139 J/mol/K)の両方とも,ΔH°とΔS°の両方が正の値であり,本過程が,エントロピー項に依存して進行(エントロピー駆動*1)することを示した.また,TPQamrからTPQsqへの構造変化における熱の消費(ΔH°>0)は,エントロピーの増加(ΔS°>0)によってほとんど相殺され,その結果,自由エネルギーの変化(ΔG°)はわずかであった(溶液中2.0 kJ/mol,結晶中−3.0 kJ/mol).つまり,TPQsq/TPQamrの平衡は,結晶中と溶液中のいずれにおいても,両方向に起こりうるエネルギー的にバランスのとれた過程といえる.

得られた熱力学的パラメータについて,活性中心の構造(図1A拡大図)に基づき考察する.off-Cu型のTPQamrの状態では,TPQ環がAsn381およびTyr384/Val282の側鎖にはさまれ,さらにTyr284との短い(強い)水素結合(約2.2 Å)があるため,動きが制限されている.一方,on-Cu型のTPQsqでは,Met602との弱い水素結合(約3.0 Å)はあるものの,TPQの芳香環の周囲には,Cβ–Cγ結合で回転するのに十分な空間がある.また,Asn381およびTyr384/Val282の側鎖自体も,TPQをはさんでいる(TPQamr)状態よりも,はさんでいない(TPQsq)方が自由度は増す.以上より,TPQsqはTPQamrよりも高いエントロピーを持つといえる.つまり,TPQsqへの構造変化の過程で消費される熱は,主にTPQamrとTyr284との強い水素結合の切断に使用され,エントロピーの増加は,TPQ環とTPQamr周辺残基の自由度の増加によるものと考えられる.また,ΔH°とΔS°は,溶液中よりも結晶中の方が大きな値を示したが,この理由は以下のように説明できる.結晶中における分子の充填効果(パッキング)は,エネルギー的に有利な非共有相互作用をもたらすと予想されるが,これはTPQsqよりもTPQamrの方がより顕著であると考えられる.なぜなら,TPQsqと銅イオンとの結合は,結晶と溶液の両方で基本的に同様であり,パッキングの影響は低いが,TPQamrは周辺残基に柔軟に保持されているため,パッキングによる相互作用の増加(最適化)が期待できる.つまり,結晶内では溶液中と比べ,TPQamrのエンタルピーとエントロピーが減少し,ΔH°とΔS°が溶液中よりも増加したと考えられる(図2D).得られたデータより計算した結晶内でのパッキングの寄与は,ΔΔH°(ΔH°crystal−ΔH°solution)が12 kJ/mol, ΔΔS°(ΔS°crystal−ΔS°solution)が56(J/mol)/Kと見積もられた.このように結晶のパッキング効果の熱力学的パラメータを実験的に決定したのは,著者らの知る範囲内では本研究が初めてである.

5. 結晶内における平衡のpHプロファイル

次に我々は,温度一定(15°C)の条件で,結晶内でのTPQsq/TPQamr平衡におけるpHの影響を調べた.まずはエチルアミンを基質として測定したが,結晶中のTPQsqとTPQamrの占有率は測定されたpH 6.0~10.0でほぼ一定であり(図3A),また,溶液中でも同様であった10).この結果は,基質として2-PEAを用いた溶液実験の結果(TPQsq/TPQamr平衡がpHに依存し,pKa=5.96および7.74を持つ二つの解離基が関与)と対照的であった.そこで,pH依存性の構造的根拠を得るため,2-PEAを用いて結晶内での平衡のpH依存性を調べた.得られた構造は,pHにより大きく異なった(図3B).pH 6.0では,off-Cu型である生成物シッフ塩基(TPQpsb)が認められ,おそらく,基質結合ポケット内に残存した生成物(フェニルアセトアルデヒド:PAA)とTPQamrとの縮合反応により形成されたと考えられた.pH 7.0では2種類のTPQpsb(pH 6でみられたcis型と,シッフ塩基二重結合に関して配置が異なるtrans型*2)が形成された.さらにpHが上昇すると,pH 8.0ではTPQamrとTPQsqの平衡状態が観察され,pH 9.0と10.0ではTPQsqのみが得られた.また,pH 8.0, 9.0,および10.0では基質結合部位にPAAも結合していた.

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図3 温度一定条件下における平衡構造のpHプロファイル

基質は(A)エチルアミンおよび(B)2-PEAを用い,温度一定(15°C)条件下,各種pHにおいて測定した.pH 6.0, 7.0, 8.0, 9.0, および10.0での活性部位モデルを,残基382および生成物アルデヒドについてのFoFcオミットマップ(3.5σ,灰色メッシュ)と重ね合わせた.水分子と銅原子は,それぞれシアンとオレンジの球で表した.各pHでの中間体構造の中間体の平均占有率(n≧4)はS.E.とともに棒グラフで示した.図中の構造モデルは棒グラフと同色にした.シアン(棒グラフのパターン,横線):cis-TPQpsb,茶(斜線):trans-TPQpsb,マゼンタ(ドット):TPQamr,緑(塗りつぶし):TPQsq.(C)2-PEAを基質とした嫌気条件下における反応スキーム.

得られた構造に基づき,2-PEAを基質とした反応について考察すると,pH>8におけるTPQのoff-Cu型からon-Cu型へのコンホメーション変化の推進力の一つは,おそらく,活性中心内に残存するPAAの芳香環の疎水性によるものと考えられる.Tyr284とTPQamrとの短い水素結合は,プロトンを共有する強い極性相互作用であり,疎水性環境を好まない.プロトン濃度が低下する塩基性条件下では,PAAの疎水性の影響が増大するため,Tyr284は共有しているプロトンを受け取り電気的に中性となり,プロトンを解離し負電荷を持ったTPQamrはon-Cuへとコンホメーション変化することでPAAから離れたと考えられる.また,pHに依存したcis型およびtrans型のTPQpsbの形成は,異なる立体配座のPAAカルボニル炭素へのSiまたはRe面への求核攻撃により説明できた(図3C4)

6. おわりに

本稿では,HAG法を用いた銅含有アミン酸化酵素触媒機構の解析を紹介した.やや繰り返しになるが,本研究で目指したのは“非凍結結晶”の構造解析ではなく“温度情報を持った結晶(温度が明らかな結晶)”の構造解析である.非凍結結晶を用いた測定法については,石英チューブの中に結晶を封じ込めるキャピラリー法やX線自由電子レーザーを用いたシリアルフェムト秒結晶構造解析(SFX)14)などもあるが,温度情報が厳密に明らかな結晶構造を得る手段は,現在のところHAG法のみである.化学反応解析の両輪は速度論と平衡論(熱力学的なエネルギー論)であり,現時点では,前者についてはSFXが,後者についてはHAG法が,今後の有望な解析手段になりうる.したがって,両手法は本質的には競合せず,相補的な関係となる.

また,本研究では,溶液中に比べて結晶中ではΔH, ΔSの値が上昇することが観察されたが,このような変化は,多くのタンパク質が高濃度で存在する細胞内の状態,すなわちmacromolecular crowding15)において起きることが判明している.つまり,結晶内でのタンパク質の動きは,希薄な水溶液中よりも,むしろ生理的な細胞内の状態に近いのかもしれない.これまで結晶構造解析で得られた構造は,溶液構造と異なり非生理的なのではないかという懸念があったが,もしこの考えが正しく,結晶構造が細胞内のタンパク質の状態を反映しているということになれば,結晶構造解析に新たな意義を与えることができる.今後“in crystallo”熱力学解析により,多くのタンパク質の構造あるいはその構造変化が熱力学的パラメータとともに決定され,タンパク質の動的構造の解明に役立つことを期待する.

謝辞Acknowledgments

本研究は,大阪大学産業科学研究所(旧)生体触媒科学研究分野(谷澤克行名誉教授),大阪医科大学化学教室(林秀行教授),同生化学教室(矢野貴人教授),高輝度光科学研究センタータンパク質結晶解析推進室(熊坂崇室長),および理化学研究所放射光科学研究センター利用システム開発研究部門(山本雅貴部門長,河野能顕専任技師)との共同研究として行われました.関係の皆様に心より感謝申し上げます.

引用文献References

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著者紹介Author Profile

村川 武志(むらかわ たけし)

大阪医科大学生化学教室助教.博士(理学).

略歴

1975年茨城県に生まれる.99年神戸大学農学部卒業.2001年同大学院自然科学研究科博士前期課程修了.01~03年雪印乳業株式会社.06年大阪大学大学院理学研究科博士後期課程修了.06年より現職(06年まで助手,07年より助教).

研究テーマと抱負

タンパク質(特に酵素)の構造的および速度論的研究.酵素の活性中心の中で何が起きているのかを,原子レベルでエネルギー的に解明し,そのメカニズムを可視化することを目標としている.

ウェブサイト

https://www.osaka-med.ac.jp/deps/med/

趣味

旅行,プロ野球応援.

馬場 清喜(ばば せいき)

公益財団法人高輝度光科学研究センタータンパク質結晶解析推進室主幹研究員.博士(工学).

略歴

1976年福島県に生まれる.99年千葉工業大学工学部卒業.2001年同大学院工学研究科工業化学専攻博士前期課程修了.04年同大学院工学研究科工業化学専攻博士後期課程修了.07年より現職(17年まで研究員,18年より主幹研究員).

研究テーマと抱負

放射光構造生物学.タンパク質の構造から機能を解明する構造生物学の研究に貢献できるよう,放射光を用いたX線結晶構造解析について研究開発を行っている.

ウェブサイト

http://bioxtal.spring8.or.jp/

趣味

料理.

岡島 俊英(おかじま としひで)

大阪大学産業科学研究所准教授.博士(理学).

略歴

1992年大阪大学大学院理学研究科修了(生物化学専攻),同年近畿大学農学部助手,95年同講師.2000年大阪大学産業科学研究所助手,02年同助教授を経て2007年同准教授,現在に至る.この間1998年から1年間米国カリフォルニア大学バークレー校およびスクリプス研究所にて博士研究員.2010年から大阪医科大非常勤講師.

研究テーマと抱負

キノン補酵素含有酵素の触媒機構と翻訳後修飾機構を,生化学的手法に構造生物学を組み合わせ解明することを研究テーマとしている.

ウェブサイト

https://www.sanken.osaka-u.ac.jp/labs/smb/

趣味

旅行,町歩き.

1 ΔH>0である吸熱反応は一般に自発的に起こりにくく,エントロピー変化が負(ΔS<0)の値であれば,温度に関わらず反応は自発的に起こらない.しかし,ΔS>0でかつ|ΔH|<|TΔS|であれば,ΔHTΔS=ΔG<0となり,反応は自発的に起こる.これは,温度が高いときに成り立ち,高温のときに反応は自発的に起こる.このような反応は,エントロピー項の効果で進行し,エントロピー駆動であるという.

2 ここで観察されたtrans型TPQpsbは,シッフ塩基二重結合に関する異性体であり,基質部分の芳香環への角度がcis型TPQpsbとは異なる.cis型と同様に,こちらもPAAとTPQamrとの間の縮合反応によって形成されたものと考えられる.

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