Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会
Journal of Japanese Biochemical Society 92(3): 307-322 (2020)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2020.920307

特集

ミルクオリゴ糖・マイクロビオータのグライコミクス

1帯広畜産大学 ◇ 〒080–8555 北海道帯広市稲田町西2線11番地

2京都大学大学院生命科学研究科 ◇ 〒606–8502 京都市左京区北白川追分町

発行日:2020年6月25日
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ヒトの母乳には初乳で22~24 g/L,常乳で12~13 g/Lのミルクオリゴ糖が含まれる.ヒトミルクオリゴ糖(HMOs)は人乳において,ラクトース,脂質に次ぐ三番目の固形分である.HMOsはこれまでに168種類が構造決定され,コア骨格に基づいて20系列に分類されるが,わずかの例外を除き,還元末端側にラクトースを含み,N-アセチルグルコサミン,ガラクトース,フコース,N-アセチルノイラミン酸が付加した構造を有する.HMOsは母乳栄養児が母乳を摂取した後,ビフィドバクテリウムの腸管内増殖を促進する働きが知られていたが,近年Bifidobacterium bifidumBifidobacterium longum subsp. infantisにおいて菌体外グリコシダーゼ活性,ならびにトランスポーターと菌体内グリコシダーゼ活性に依存する異なる代謝経路が解明された.さらにビフィドバクテリウムには,フコシルラクトーストランスポーターに依存する第三のHMOs代謝経路の存在も示された.一方,HMOsは母乳栄養児に抗感染,抗炎症,壊死性腸炎予防,脳機能活性化,栄養改善効果などの機能性も付与する.本稿では,HMOsの化学構造とともにビフィドバクテリウムによるHMOs代謝経路と腸内細菌叢への調整,および明らかになった機能性について紹介する.

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