記憶制御に対する必須栄養素群の役割
東京大学大学院農学生命科学研究科応用生命化学専攻 ◇ 東京都文京区弥生1–1–1
発行日:2021年2月25日
我々の研究グループでは,脳機能に対する栄養素・食品の役割とその作用機構を明らかにするために,マウス遺伝学的手法や栄養学的手法と神経科学的手法を組み合わせて,脳機能に対する水溶性・脂溶性ビタミン,必須アミノ酸,ミネラルなどの役割の解析を行ってきた.その結果,海馬における必須栄養素群(ビタミンB1, ビタミンA, トリプトファン,マグネシウム)が記憶に必要とされること,この中で特にビタミンAは記憶能力を正に制御することを明らかにした.一方,ビタミンB1やマグネシウムの摂取不足が脳内炎症を招き,その結果,海馬の記憶機能に障害を与えることを示し,栄養状態の悪化が脳内炎症を介して脳機能の低下を導く共通機構を示唆した.今後,脳機能と栄養素との関連性を解明する脳栄養学的研究を進展させることで,精神疾患と神経変性疾患を含む脳疾患の予防・改善方法を開発することが重要である.
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