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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 93(2): 203-211 (2021)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2021.930203

総説Review

酵母におけるプロリンの新しい生理機能と代謝調節機構Physiological functions and metabolic regulations of proline in yeast

奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域Division of Biological Science, Graduate School of Science and Technology, Nara Institute of Science and Technology ◇ 〒630–0192 奈良県生駒市高山町8916–5 ◇ 8916–5 Takayama, Ikoma, Nara 630–0192, Japan

発行日:2021年4月25日Published: April 25, 2021
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近年,アミノ酸はタンパク質の構成成分のみならず,それ自体に多様な生理機能があることが報告されている.中でも,プロリンは他のアミノ酸と比較して多くの生理機能が知られており,生体の恒常性維持に重要である.筆者らは20年以上に及ぶ研究によって,酵母におけるプロリンの生理機能として,活性酸素種レベルの制御,リボソームの選択的オートファジー(リボファジー)への関与,細胞寿命の調節などを明らかにした.さらに最近,プロリンの代謝調節機構に関連し,細胞内への取り込み抑制にアルギニンが関与することを見いだした.また,プロリン高含有酵母を育種し,発酵生産プロセスへの応用にも取り組んでいる.本稿では,筆者らがこれまでに解析してきた酵母におけるプロリンの生理機能と代謝調節機構について,最新の知見を応用展開も含めて概説する.

1. はじめに

近年アミノ酸は「筋力アップ」や「疲労回復力アップ」,「免疫力アップ」などのキーワードとともにマスコミで取り上げられる機会が急増しており,アミノ酸の生体内での働きが見直されている.アミノ酸はこれまで,タンパク質の構成成分としての認識が強く,遊離状態のものは単なる窒素源の貯蔵体や代謝産物の前駆体として考えられてきた.しかし,今では遊離状態のアミノ酸が生体の恒常性維持に必須であることが理解され始め,アミノ酸の重要性が再認識されている.実際,アミノ酸の機能性に着目したサプリメント・化粧品・医薬品は科学的エビデンスがあいまいなものも含めると数え切れないほど開発・上市されている.また,酒類やパンなどの発酵・醸造食品に関してもアミノ酸が多く含まれることで付加価値の向上が期待されている.

プロリンは環状構造を有する二級アミン(以前はイミノ酸と呼ばれていた)であり,タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の中できわめて特徴的な性質を有している.たとえば,タンパク質のペプチド鎖におけるプロリンは水素結合を形成できず,そのペプチド結合はシス–トランス異性化するため,αヘリックスやβシート構造を壊し,立体構造に大きな変化をもたらす.このため,タンパク質中のプロリン残基はさまざまな生命活動に関わっており,各種酵素,サイトカイン,成長因子の活性部位や他のタンパク質や低分子化合物との相互作用部位になることが知られている1, 2).一方,遊離状態のプロリンにおいても他のアミノ酸に比べて,多彩な生理機能が見いだされてきた.

本稿では,筆者らが20年以上にわたって研究を行ってきたプロリンの生理機能と代謝調節機構について,主に酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける最新の知見を応用展開も含めて概説する.

2. プロリンの代謝経路

酵母におけるプロリンは,出発物質としてグルタミン酸とアルギニンをそれぞれ用いた二つの経路から合成される(図1左)3).グルタミン酸からの経路では,まずγ-glutamyl kinase(Pro1)の働きによってグルタミン酸からγ-グルタミルリン酸が合成され,次にγ-グルタミルリン酸からγ-glutamyl phosphate reductase(Pro2)によってグルタミン酸-γ-セミアルデヒド(glutamate-γ-semialdehyde:GSA)が産生される.GSAは非酵素的にΔ1-ピロリン-5-カルボン酸(Δ1-pyrroline-5-carboxylate:P5C)に変換される.最終的に,Δ1-pyrroline-5-carboxylate reductase(Pro3)の活性によりP5Cが還元されることで,プロリンが合成される.一方,アルギニンからの経路では,まずarginase(Car1)によってアルギニンからオルニチンが合成され,次いでornithine aminotransferase(Car2)の働きによってオルニチンからP5Cが合成される.産生したP5Cは,Pro3によってプロリンへと変換される.

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図1 酵母におけるプロリンの代謝経路

酵母において,プロリンは細胞質で主にグルタミン酸から3種類の酵素(Pro1, Pro2, Pro3)により合成される.また,一部はアルギニンからCar1, Car2により合成される.一方,過剰のプロリンはミトコンドリアで2種類の酵素(Put1, Put2)により分解され,グルタミン酸に変換される.細胞外のプロリンは,主にPut4とGap1の二つのトランスポーターにより取り込まれることが知られている.GSA:glutamate-γ-semialdehyde, P5C:Δ1-pyrroline-5-carboxylate, Pro1:γ-glutamyl kinase, Pro2:γ-glutamyl phosphate reductase, Pro3:Δ1-pyrroline-5-carboxylate reductase, Car1:arginase, Car2:ornithine aminotransferase, Put1:proline oxidase, Put2:Δ1-pyrroline-5-carboxylate dehydrogenase, Gap1:general amino acid permease, Put4:high-affinity proline permease.

プロリンの資化は細胞内へのプロリンの取り込みとその分解からなる(図1右)3).プロリンの取り込み経路としては主に,high-affinity proline permease(Put4)とgeneral amino acid permease(Gap1)の2種のトランスポーターが存在する.Put4のプロリンに対するKm値はGap1に比べて500倍ほど低いため,Put4が主要なプロリン取り込み経路として考えられている4).細胞内に取り込まれたプロリンは,ミトコンドリアに移行し,proline oxidase(Put1)によってP5Cへと酸化される.そして,P5Cから非酵素的に産生したGSAがP5C dehydrogenase(Put2)の働きによってグルタミン酸へ変換される.産生したグルタミン酸が他のアミノ酸の出発物質となることで,プロリン資化が可能となる.

ヒトを含む高等真核生物では,分解経路は酵母と同様であるが,合成経路の初発段階の酵素P5C synthetaseがN末端側のγ-glutamyl kinaseドメインとC末端側のγ-glutamyl phosphate reductaseドメインの融合タンパク質として機能しており,グルタミン酸から直接P5Cを合成する5).γ-glutamyl kinase反応の産物であるγ-グルタミルリン酸は水溶液中でオキソプロリンへ非酵素的に変換することが知られている.このため,γ-グルタミルリン酸が反応産物として遊離しない高等真核生物型のプロリン合成経路は効率的であると思われる.大腸菌の場合,合成経路の遺伝子は酵母と同様で,Pro1ホモログとPro2ホモログが別々の遺伝子にコードされているが,細胞内では複合体を形成している6).酵母においては,Pro1とPro2の複合体は実験的に証明されていないが,おそらく複合体を形成して,その活性を担保していると筆者らは考えている.一方で,分解経路に関しては酵母と高等真核生物で同様であるが,大腸菌においてはproline oxidaseドメインとP5C dehydrogenaseドメインの両者を持つputAタンパク質によって,プロリンから1回の反応でグルタミン酸まで分解される7).また,酵母では不明であるが,原核生物や一部の真核生物では,オルニチンから直接プロリンを合成する経路も同定されている8)

3. プロリン代謝経路の調節機構

1)プロリン代謝関連遺伝子の転写制御

酵母では,多くのアミノ酸合成に関わる遺伝子が一般アミノ酸制御(general amino acid control)と呼ばれるシグナル伝達経路を介して転写因子Gcn4によって調節されており,アミノ酸飢餓に応答してそれらの発現が増加する9).プロリン合成経路においても,PRO1PRO2の発現がその支配下にあるとされているが,詳細はほとんど不明である.筆者らはプロリンの高生産を目指し,PRO1を恒常的に高発現させたが,細胞内プロリン含量は増加しなかった.このため,プロリン合成経路は転写レベルでなく,主に翻訳後レベルの制御(下項を参照)であると考えている.

プロリンの分解経路は主に転写因子Put3によって制御されている10).Put3は細胞内のプロリンと直接結合することで活性化され,PUT1PUT2の転写を強力に誘導する.Put1の酵素反応には,補酵素フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)が必要であるが,Put3はFADの前駆体であるリボフラビンのトランスポーターをコードするMCH5の転写も誘導することが知られている11)

2)プロリン代謝酵素の翻訳後制御

多くの細菌や植物では,初発酵素のPro1ホモログがプロリン合成を制御する鍵酵素であり,その活性は最終産物のプロリンによるフィードバック阻害を受ける12).筆者らはPro1も他の生物と同程度にプロリンによるフィードバック阻害を受け,酵母において同酵素がプロリン合成の鍵酵素であることを報告している13).実際,プロリンの毒性アナログであるアゼチジン-2-カルボン酸(AZC)を利用して,プロリン高含有酵母を育種したところ,Pro1変異体(D154N)の取得に成功した14).この変異体は,生化学的解析からプロリンによるフィードバック阻害感受性が野生型株の酵素に比べて大幅に低下していた.また,Pro1のさらなる高機能化を目的にPRO1にPCRランダム変異を導入した結果,取得した変異体のアミノ酸置換は154番目残基の近傍に集中し(I150T, E149K, N142D/I166Vなど),これら変異体のプロリンによるフィードバック阻害感受性は著しく低下していた13).これらの置換を含む領域はβシートとαへリックス間のループに位置しており,プロリンを結合するアロステリック部位を構成している可能性がある.Campylobacter jejuniや大腸菌におけるPro1ホモログの立体構造から,基質であるグルタミン酸とプロリンの結合部位は部分的に共有しているが,一部はアロステリック様部位であることが示唆されている(図215).ごく最近,筆者らは高濃度のプロリン存在下でも活性がまったく阻害されない変異体(Q79H)を取得しており16),この変異体の構造解析や生化学的解析を進めることでPro1に対するプロリンの阻害様式の全容が明らかになると期待している.また,大腸菌など多くの細菌と同様に,Pro1にはC末端側に100残基程度のPUAドメイン(真核生物・古細菌のRNA修飾酵素に広く見いだされ,アーケオシンtRNAグアニントランスグリコシダーゼでは位置特異的なtRNA認識に関与)が存在している.このドメインは基質であるグルタミン酸との親和性やプロリンによるフィードバック阻害には影響を与えないが,反応速度の制御(PUAドメインを削除するとVmax値が1/100に低下)に関与しており17, 18),本酵素の分子進化の点からも興味深い.

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図2 Pro1のホモロジー構造モデリング

Pro1の立体構造を大腸菌Pro1ホモログ(ProB)の立体構造(PDB ID:2j5v)に基づきSWISS-MODELによって作製した.Q79, I150, D154はこれまでに取得された高機能型Pro1変異体において,アミノ酸置換が導入された残基を示す.また,活性中心において,基質であるグルタミン酸とプロリンの結合部位は部分的に共有しているが,一部はアロステリック様部位となっている.オキソプロリンは結晶化の過程で,プロリン結合部位に結合したと考えられている.グルタミン酸の位置はドッキングシュミレーションから推定した.

3)プロリン取り込み経路の翻訳後制御

酵母はアミノ酸やアンモニウムイオンなどのさまざまな窒素源を資化することができるが,良質な窒素源(易資化性窒素源:グルタミン,グルタミン酸,アンモニウムイオンなど)と資化しにくい窒素源(難資化性窒素源:プロリンやロイシンなど)が同時に存在する場合,易資化性窒素源を優先的に資化することが知られている.難資化性窒素源トランスポーターは,易資化性窒素源が存在する場合にエンドサイトーシスによって分解される.易資化性窒素源が存在する場合,TORC1–Npr1経路が活性化する結果,細胞膜上のタンパク質の分解をつかさどるユビキチンリガーゼRsp5が活性化される19).Rsp5は,直接またはアレスチン様アダプタータンパク質を介して膜タンパク質をユビキチン化する.ユビキチン化された膜タンパク質は,エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ,初期エンドソーム,後期エンドソームを経て液胞で分解される.このように,易資化性窒素源の存在下においては,Rsp5によるユビキチン化経路が活性化されるため,難資化性窒素源トランスポーターのエンドサイトーシスが引き起こされる.プロリントランスポーターの一つであるGap1は,アンモニウムイオン存在下でエンドサイトーシス経路を介して分解されることが報告されている20).一方で,別のプロリントランスポーターであるPut4は易資化性窒素源存在下でエンドサイトーシス分解が起こることが示唆されているが,その詳細な条件や機構には不明な点が多い.

4. ワイン発酵環境におけるプロリン資化抑制機構

プロリンはワインの原料であるブドウ果汁に最も多く含まれているアミノ酸であるが,発酵中の酵母はプロリンをほとんど利用することができず,発酵後も多量に残存することが知られている21).残存したプロリンは苦味の増加や酸味の減少を引き起こし,最終製品であるワインの酒質を低下させる22).さらに,豊富に存在するプロリンを窒素源として利用できないため,発酵中に窒素源の枯渇がしばしば起こり,人工窒素源(アンモニウム塩)の添加が必要となる23).この添加物は,ワインの品質に影響を与えるだけでなく,製造コストが増加する要因にもなっている.このため,プロリンは30年以上前から「最もむだで厄介な窒素源」として認識されている.しかし,プロリン資化抑制の詳細な機構やその意義については,これまで理解されていない.そこで,筆者らは発酵環境下においてプロリンを効率よく資化できる酵母の創製を目的に,プロリン資化抑制に関わる因子を同定し,解析を行った.プロリン資化能を酵母の生育によって評価するために,プロリン要求性株を用いて解析したところ,ブドウ中に2番目に多い窒素源であるアルギニンが阻害因子であることを見いだした24).さらに,アルギニンはRsp5とそのアダプタータンパク質であるArt3依存的にPut4のエンドサイトーシスを強力に誘導することで酵母のプロリン取り込み能を抑制していることも判明した(図325).現在,アルギニン存在下でもプロリン資化が可能な自然突然変異株を単離し,解析を行っている.今後,実験室酵母で得られた知見をもとにワイン酵母を育種することで,プロリン含量の低いワインの製造につながると考えている.このようなワインは「スッキリ」・「豊かな香り」・「オーガニック」をキーワードとした高品質かつ個性的なワインの創出につながり,ワインの高付加価値化と差別化が期待できる(図4).世界中で飲まれているワインはこの30年あまりで国内消費量が2倍以上増えているのにもかかわらず,7割以上が輸入に頼っている.つまり,日本産ワインは現在のところ国際競争において優勢であるとはいいにくい.このような状況を打開するために,プロリン含量の低下したワインを開発し,日本産ワインのブランド力の向上に努めていきたい.

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図3 アルギニンによるプロリン資化抑制機構

アルギニンが存在しない場合,プロリンはトランスポーターPut4によって細胞内に取り込まれ,資化される.一方,アルギニンが存在する場合は,ユビキチンリガーゼRsp5とそのアダプタータンパク質Art3が活性化し,速やかにPut4をユビキチン化する.ユビキチン化されたPut4は液胞までエンドサイトーシス経路で運ばれ,分解される.現在,アルギニンの感知機構やRsp5-Art3の活性化機構については明らかになっていない.

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図4 プロリン資化抑制機構の理解とその応用(展望)

プロリンの資化抑制を受けない酵母(プロリン高資化性酵母)を育種することで,高品質かつ香味豊かなワインの創出が可能となり,ワインの高付加価値化につながることが期待できる.

5. プロリンの生理機能

1)細胞保護効果

プロリンは植物や細菌において,塩や乾燥などの浸透圧ストレスに応答して細胞内に蓄積し,浸透圧調節物質(適合溶質)として機能することが知られている5).また,プロリンはスーパーオキシドアニオンや過酸化水素などの活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)を直接消去することで酸化ストレスから細胞を保護している.さらに,プロリンは細胞内に主要な抗酸化酵素であるカタラーゼやスーパーオキシドジスムターゼの活性上昇や安定化に関与する26).加えて,凍結・乾燥・高温下におけるタンパク質や細胞膜の保護,タンパク質のフォールディング促進,氷結晶の形成阻害,塩ストレス下での核酸のTm値低下など多種多彩な機能が明らかとなっている(図53).最近では,プロリンがタンパク質変性を低減することで,小胞体ストレスから細胞を保護していることが明らかとなっている.また,植物病原真菌において,プロリンが細胞内のROSを消去し,アポトーシス様細胞死を抑制することが示されている26).筆者らも,酵母において高濃度のエタノール処理により増加する細胞内のROSレベルが,プロリン高含有株ではほとんど増加しないことを報告している27).また,筆者らは以前にプロリン溶液に酵母を懸濁すると,冷凍後の細胞の生存率低下を防ぐことを見いだした28).プロリンはタンパク質を構成するアミノ酸の中で最も水に対する溶解度(163.6 g/100 g H2O)が高いため,細胞内の水分子との親和性が強く,冷凍状態での細胞内での氷結晶の形成や成長,あるいは細胞外への脱水を阻害するためと考えられる.また,筆者らはプロリンの細胞内含量を高めた酵母は,冷凍,乾燥,酸化,高温,エタノールなどのストレスに対する耐性が向上することを報告している14, 29–31).興味深いことに,プロリン高含有株は液胞の機能が欠損するとエタノールや高温などのストレスに感受性を示すことから,液胞の機能がプロリンによる細胞保護に必須であると考えられている32).しかし,個々のメカニズムには不明な点も多く,今後これらの解析および解明が期待されている.

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図5 プロリンの多彩な生理機能

プロリンはタンパク質の構成成分である他,細胞の保護に寄与しているが,詳細なメカニズムには不明な点が多い.また,プロリンは基本的に甘味を呈するが,多く存在すると苦味を呈することも知られている.

2)細胞寿命制御

筆者らは,プロリンの新たな生理機能を探索・解析した結果,プロリンが寿命を制御している可能性を見いだした.酵母の寿命は分裂寿命(replicative lifespan)と経時寿命(chronological lifespan)に大別され,分裂寿命は母細胞から娘細胞が何回分裂できるか,一方,経時寿命は分裂を停止した細胞がいつまで生存できるか,を示している.つまり,酵母の分裂寿命は幹細胞の寿命モデルであり,経時寿命は老化細胞の寿命モデルであるといえる.

まず,高機能型Pro1の発現,PRO1の破壊,およびPUT1の破壊を組み合わせることで,プロリン含量が増減した菌株を準備した.これらの株の寿命を測定した結果,プロリン含量に相関して分裂寿命が延びることが判明した33).細胞分裂においては,細胞膜が薄くなることで起こる浸透圧ストレスや物理的な機械ストレスなどさまざまなストレスが細胞に曝露されるため,プロリンはこれらのストレスを直接軽減していることが示唆された.一方で,面白いことに,経時寿命は細胞内プロリン含量とは無関係であり,PUT1の欠損によって顕著に短くなることが判明した.Put1はプロリンを酸化分解し,電子とプロトンをミトコンドリア電子伝達系に送ることから,膜電位の形成維持に関わっている可能性がある.経時寿命は糖源が枯渇した条件下における細胞の恒常性維持であるため,プロリン–Put1経路によるエネルギー産生が経時寿命の制御に関わっている可能性がある(図6).Put1のホモログ遺伝子はヒトを含むほとんどの生物で保存されているため,Put1とエネルギー代謝,寿命の関係が解明されることで老化防止や健康長寿,エネルギー代謝不全で引き起こされる難治性の呼吸器系・循環器系の疾患予防・治療法の開発につながることが期待される.

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図6 プロリン–Put1経路によるエネルギー代謝

プロリンはミトコンドリア内のPut1によって酸化分解される.このときに産生したプロトンと電子はユビキノンを介して,電子伝達系に供与される.その結果,プロトン濃度勾配の維持とATP合成が起こる.経時寿命期には,通常のエネルギー源であるグルコースが枯渇しているため,プロリンを利用してエネルギー代謝を維持している可能性が高い.

3)Pro1のその他の機能

筆者らは最近,Pro1のプロリン合成以外の生理機能も見いだしている.過酸化水素や高温ストレス条件下で,PRO1と遺伝的相互作用のある遺伝子を網羅的に探索した結果,リボソームの選択的オートファジー(リボファジー)に関わる脱ユビキチン化酵素Ubp3–Bre5複合体が同定された34).Pro1とリボファジーの関連性を解析した結果,Pro1タンパク質がリボファジー誘導に必須であることに加えて,Pro1のγ-glutamyl kinase活性がリボファジーの進行に重要であることが判明した.さらに,Pro1はリボファジーを制御することで,窒素源飢餓によって起こる細胞死を抑制することが明らかとなった.一方,筆者らはPRO1破壊株がエタノールや過酸化水素を含む各種ストレスに感受性であることに以前から気づいていた.この表現型は当初,PRO1が欠損することで,プロリン合成経路が弱化し,その結果,細胞内プロリン含量が低下するためと考えていた.しかし,γ-glutamyl kinase活性が低下したPro1変異体(D156A)をPRO1破壊株で発現させたところ,PRO1破壊株でみられたストレス感受性が回復した.これらの結果は,Pro1がプロリン合成経路以外で機能していることを示唆しており,大変興味深い.このようにPro1を含めたプロリン代謝の生理機能は未解明な部分が多く残されており,今後の研究の進展が大いに期待される.

6. プロリン高含有酵母の産業利用

酵母はパンや酒類,バイオエタノールなどの発酵生産環境において,高濃度エタノール,冷凍,乾燥,高浸透圧,高温,酸化,偏栄養など多くのストレスにさらされており,これが酵母の有用機能(アルコール,炭酸ガス,味・風味成分などの生成)の発現を著しく制限していると考えられる.したがって,発酵・醸造食品やバイオエタノールの生産性向上には,酵母に優れたストレス耐性を付与することが重要である.筆者らはプロリンが示す多種多彩な機能によって細胞のストレス耐性を向上させることを目的に,プロリン高含有株を育種し,発酵産業への応用を進めている(図7).

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図7 プロリン高含有酵母の発酵産業への応用

酵母は発酵生産環境において,冷凍,乾燥,酸化,高浸透圧,高濃度エタノールなどにさらされているため,有用機能(アルコール,炭酸ガス,味・風味成分などの生成)の発現が著しく制限されている.プロリンはさまざまなストレスから細胞を保護する機能があるため,プロリン高含有酵母は発酵産業への応用が期待されている.酵母において細胞内プロリン含量を人為的に制御し,高度なストレス耐性を付与すれば,発酵生産性の改善(酒類,パン,バイオエタノールなどの生産)に貢献できる.

1)清酒酵母の育種と清酒醸造への応用

酵母は清酒醸造において約20%に達する高濃度のエタノールを生産するが,エタノールの毒性により生育,生存率,発酵能が著しく阻害される.プロリンにはエタノールによるタンパク質変性やそれに伴う酸化ストレスを防ぐ効果が期待できるため,プロリンを高含有する清酒酵母を作製し,醸造への応用を考えた.清酒酵母の二倍体から遺伝子操作の容易な一倍体を分離し,染色体上での相同組換えによりPUT1の破壊と高機能型Pro1(D154N)の発現を行った.作製した菌株は予想どおり細胞内にプロリンを蓄積し,エタノール存在下での生存率も対照株(野生型株)に比べて有意に上昇した31).将来的な実用化を見据え,セルフクローニング法(外来遺伝子や合成遺伝子を使用しない遺伝子組換えの方法で,カルタヘナ法などの規制の対象外)により作製したプロリン高含有株の一倍体どうしを接合後,生育の速い二倍体を分離し,醸造特性への効果を調べた.1日あたりの炭酸ガス減量を目安に小仕込み試験を終了させると,プロリン高含有株では対照株に比べ発酵が早く終了し,その時点でのエタノール濃度はわずかであるが高い傾向にあった35).このように,プロリン高含有株はエタノール生産効率の点で醸造時間を短縮できる可能性がある.また,異なるタイプのプロリン高含有株(Pro1のQ79H変異体の発現株)は,筆者らが予想しなかった醸造特性を示した.このプロリン高含有株で小仕込み試験を行ったところ,清酒中に含まれるコハク酸含量の顕著な低下が認められた16).コハク酸は旨味を伴う酸味を呈するため,コハク酸含量の低下は「淡麗辛口清酒」の製造につながることが知られている.現在,世界中でドライホワイトワイン(辛口白ワイン)が流行しており,ドライホワイトワイン飲用者は淡麗辛口清酒の受容性が高いと考えられる.このため,プロリン高含有株を用いて清酒を醸造することで,これまで以上に日本酒の海外展開やブランド化に貢献できる可能性がある.現在のところ,プロリンの高生産がコハク酸含量の低下につながるメカニズムはまったく不明であるが,Put1とコハク酸デヒドロゲナーゼがミトコンドリアの電子伝達系と共役して機能することが,この謎を解き明かすヒントになると考えている.

2)パン酵母の育種と製パンへの応用

製パン産業における重要な技術の一つは,高い発酵力と多様な製パン法に対応できる耐久性を備えたパン酵母の開発である.冷凍生地や高ショ糖生地(菓子パン用生地),ドライイーストの製造プロセスでは,酵母が冷凍や高浸透圧,高温乾燥などのストレス(製パン関連ストレス)にさらされることで,細胞内のROSレベルが上昇する「酸化ストレス」状態になり,多くの細胞が死滅している36).したがって,パン酵母の各種ストレス耐性を強化し,発酵に適した菌株を開発することで,製パンプロセスの低コスト化や高度利用が可能になる.近年の冷凍生地製パン法の普及に伴い,冷凍ストレスに耐性を示すパン酵母がすでに開発されている.しかしながら,冷凍生地の長期保存,フランスパンなど無糖生地への使用を可能にするためには,高度な冷凍ストレス耐性を有するパン酵母の育種が必要である.そこで,清酒酵母と同様にプロリン含量の高いパン酵母を作製し,その特性を解析した.セルフクローニング法を用い,パン酵母一倍体の野生型PRO1を変異型(D154NまたはI150T)に置換し,さらにPUT1を破壊した37).各一倍体を接合させ作製した二倍体は予想どおり細胞内のプロリン含量が著しく増加した.プロリン高含有株と対照株(野生型株)を用いてパン生地を調製し,9日間冷凍した後の炭酸ガス発生量を測定した.その結果,対照株では炭酸ガス発生量が冷凍前の約40%にまで低下したが,プロリン高含有株の炭酸ガス発生量は親株の約1.5倍を維持しており,強い冷凍ストレス耐性を有することが示された37).また,プロリン高含有株は高ショ糖生地においても野生型株に比べて高い炭酸ガス発生量を示した38).最近では,実用化を目指した育種にも取り組んでおり,AZC耐性変異株の中から,Pro1に新規なアミノ酸置換(P247S, E415K)が入り,親株に比べてプロリン含量および冷凍生地・高ショ糖生地での発酵力が向上した株を取得した39).以上のように,清酒やパンの製造に関わる産業酵母の高機能開発において,プロリンの有用性を実証することができた.

7. まとめ

プロリンはタンパク質の構成成分としてだけでなく,遊離状態のものがタンパク質や細胞膜,核酸,ROSなどに作用し,さまざまな機能を発揮する興味深いアミノ酸(本来はイミノ酸)である.また,有機合成の分野でも,カルボニル化合物間のアルドール反応の有効かつ安全な不斉触媒としても注目されている.このように,プロリンは他のアミノ酸と比較しても特に多くの生理機能を有しており,生体・細胞の恒常性維持にきわめて重要である.

筆者らは,細胞へのストレス耐性付与,味・風味の差別化などに寄与するアミノ酸(機能性アミノ酸)の新規な代謝制御機構と生理機能に着目し,人為的に細胞内外の含量を高めることで,酵母の高機能開発や有用物質の生産性向上を図る育種手法を「アミノ酸機能工学」と命名した(図840).プロリンを含むアミノ酸は全生物の細胞内に共通して存在する機能性分子であることから,「アミノ酸機能工学」は酵母や麹菌,細菌などの微生物のみならず,植物,昆虫,動物などの高等生物にも応用可能なきわめて汎用性が高い技術であると考えられる.

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図8 アミノ酸機能工学

「アミノ酸機能工学」は,細胞へのストレス耐性付与,味・風味の差別化などに寄与するアミノ酸(機能性アミノ酸)の細胞内・細胞外の含量を人為的に高めることで,酵母の高機能開発や有用物質の生産性向上を図る育種手法である(筆者の高木博史教授が命名)40)

謝辞Acknowledgments

本研究は主に,農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センターの「新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業(2004–08年度)」,「イノベーション創出基礎的研究推進事業(2009–11年度」),「イノベーション創出強化研究推進事業(2018–20年度)」,および科学研究費補助金「挑戦的研究(萌芽)19K22282(2019–21年度)」の助成を受けて行われました.この場を借りて感謝申し上げます.

引用文献References

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著者紹介Author Profile

西村 明(にしむら あきら)

奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域 助教.博士(バイオサイエンス).

略歴

2007年京都工芸繊維大学繊維学部卒業.12年奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科博士後期課程修了(バイオサイエンス博士).同年(株)カネカ入社.16年東北大学大学院医学系研究科助教.19年10月から現職.

研究テーマと抱負

プロリンやアルギニンを中心にアミノ酸関連の生理機能と代謝経路を研究しています.古くて新しいアミノ酸研究を通して,日本産の食品・飲料・お酒のブランド価値を上げていきたいと思います.

ウェブサイト

https://bsw3.naist.jp/takagi/

https://researchmap.jp/akira_nishimura

趣味

旅行,お酒.

高崎 友里恵(たかさき ゆりえ)

奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域 博士前期課程2年生.

略歴

2019年近畿大学農学部応用生命化学科卒業.同年奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域入学,現在在学中.

研究テーマと抱負

プロリン高含有株に見出された新規の変異について研究を行っています.プロリンの基礎研究を通じて得た成果を実際の発酵産業に活かしたいと思います.

ウェブサイト

https://bsw3.naist.jp/takagi/

趣味

お酒全般,絵画,楽器演奏.

高木 博史(たかぎ ひろし)

奈良先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科バイオサイエンス領域 教授.農学博士.

略歴

1980年静岡大学農学部農芸化学科卒業.82年名古屋大学大学院農学研究科生化学制御専攻博士前期課程修了.同年味の素株式会社中央研究所研究員.94年同社食品総合研究所主任研究員[この間,86年米国New York州立大学Stony Brook校客員研究員,88年農学博士(東京大学)].95年福井県立大学生物資源学部助教授.2001年同大学教授.06年奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科教授.18年同大学院大学先端科学技術研究科教授.19年同大学院大学学長補佐(兼任),現在に至る.

研究テーマと抱負

微生物機能の発見・解析とその応用に広く取り組んでいるが,特に「環境ストレスに対する微生物の応答・適応・耐性機構」「微生物におけるアミノ酸の代謝制御機構と生理機能」をキーワードに,基礎と応用のバランスを意識して研究を進めている.

ウェブサイト

https://bsw3.naist.jp/takagi/

https://researchmap.jp/read0183424

趣味

アメリカ野球,ゴルフ.

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