Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会
Journal of Japanese Biochemical Society 93(3): 305-314 (2021)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2021.930305

特集

イネ(日本晴)における(3R)-β-チロシンの生合成

1京都大学大学院農学研究科応用生命科学専攻 ◇ 〒606–8502 京都市左京区北白川追分町

2山形大学農学部植物機能開発学コース ◇ 〒997–0037 山形県鶴岡市若葉町1–23

3京都大学大学院農学研究科農学専攻 ◇ 〒606–8502 京都市左京区北白川追分町

4摂南大学農学部農業生産学科 ◇ 〒573–0101 大阪府枚方市長尾峠町45–1

発行日:2021年6月25日
HTMLPDFEPUB3

非タンパク質性アミノ酸は,多くの植物により産生され,多彩な植物の防御戦略の一翼を担っている.我々は,イネが防御応答として産生する未知の非タンパク質性アミノ酸をターゲットとして化合物の探索を行い,ジャポニカ品種のイネに特徴的な代謝物として(3R)-β-チロシンを植物から初めて同定した.また,[13C9, 15N]ラベル化L-チロシンを与えたイネ抽出物のLC/MS分析から,イネはL-チロシンを前駆体としてアミノ基の転位により(3R)-β-チロシンを生合成することを明らかにした.さらに,(3R)-β-チロシンを生合成する日本晴(ジャポニカ品種)と生合成しないカサラス(インディカ品種)を交配して得られる染色体断片置換系統を用いて(3R)-β-チロシン生合成候補遺伝子を絞り込み,ammonia-lyaseに塩基配列が類似した遺伝子(LOC_Os12g33610)に着目した.この遺伝子をタバコおよび大腸菌において異種発現して得た酵素がtyrosine aminomutase(TAM)活性を示したことから,この遺伝子を(3R)-β-チロシン生合成遺伝子として同定し,OsTAM1と命名した.OsTAM1のアミノ酸配列をアライメント解析したところ,イネが持つphenylalanine ammonia-lyase(OsPAL8)と高い相同性を示し,微生物が持つTAMとは基質特異性に関わる領域の構造が異なった.よって,本遺伝子はイネのPAL遺伝子における変異に起因し,微生物が持つTAM遺伝子の水平移動ではないと結論した.

This page was created on 2021-05-14T11:16:41.758+09:00
This page was last modified on 2021-06-14T09:12:49.000+09:00


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。