Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 93(5): 702-707 (2021)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2021.930702

特集Special Review

心筋の頑健性と超硫黄分子代謝Myocardial robustness and supersulfide metabolism

1九州大学大学院薬学研究院生理学分野Department of Physiology, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Kyushu University ◇ 〒812–8582 福岡県福岡市東区馬出3–1–1 ◇ 3–1–1 Maidashi, Higashi-ku, Fukuoka 812–8582, Japan

2自然科学研究機構生命創成探究センター(生理学研究所)心循環シグナル研究部門Division of Cardiocirculatory Signaling, National Institute for Physiological Sciences & Exploratory Research Center on Life and Living Systems, National Institutes of Natural Sciences ◇ 〒444–8787 愛知県岡崎市明大寺町字東山5–1 ◇ 5–1 Higashiyama Myodaiji, Okazaki, Aichi 444–8787, Japan

発行日:2021年10月25日Published: October 25, 2021
HTMLPDFEPUB3

心筋は,動物が生まれてから死ぬまで入れ替わることなく,常に拍動し続けるきわめて頑健な細胞である.最近の研究から,システインパースルフィド(CysSSH)やポリスルフィド(CysSnH)に代表される硫黄原子が複数連なった,電子授受能に優れた分子種(超硫黄分子)が,ミトコンドリアの形態機能維持を介して心筋のストレス抵抗力に寄与することが明らかになってきた.本稿では,超硫黄分子によるミトコンドリアのエネルギー代謝や品質管理維持の分子制御機構および心臓におけるその病態生理学的意義について,筆者らの最新の知見を紹介する.

1. はじめに

ヒトの心筋は,100年近くもの間,細胞増殖して入れ替わることなく収縮弛緩運動を続けるきわめて頑健な細胞・組織である.そのため,他の細胞種とは異なる独自のストレス適応機構を備えている.特に心筋細胞は,チオレドキシンやグルタチオンをはじめとするシステイン(Cys)ベースの抗酸化システムが発達しており,求核性の高い含硫アミノ酸であるCysが,心筋細胞の還元力を規定すると考えられている.ヒトゲノムには約214,000個ものCysがコードされており,そのうち10~20%程度がレドックス活性の高いCys(生理的pHの状態でプロトンが解離したチオール基)を持つと考えられている1).このCysチオール基がさまざまな活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)や活性酸化窒素種(reactive nitrogen oxide species:RNS),およびROSやRNSと生体内の脂質や核酸との反応から生成する親電子性を持った二次代謝物(親電子物質)と共有結合することで,センサータンパク質の構造や機能(たとえば酵素活性など)を変化させ,これがシグナルとなって下流のエフェクター分子に伝達される2, 3).こうした一連の反応がレドックスシグナルの基本概念として数多くの研究がなされてきた.筆者は,細胞内情報伝達における重要なシグナルスイッチ分子であるGTP結合タンパク質(Gタンパク質)のレドックス感受性に着目し,Cys修飾による活性化の分子メカニズムと心臓におけるその病態生理学的意義を明らかにしてきた(図1).具体的には,細胞膜上の7回膜貫通型受容体と共役する三量体Gi/oファミリータンパク質αサブユニット(Gαi/o)のCys(ラットGαi-2のCys287とCys326)の酸化修飾によるβγサブユニットの遊離が,心筋の内因性保護シグナル経路の活性化に寄与すること4)や,低分子量Gタンパク質H-Rasのパルミトイル化修飾を受けるC末端のCys184が親電子修飾を受けることで,H-Rasがラフトから遊離し,心筋の早期老化を誘導すること5)などを報告してきた.ところが最近の研究から,これらレドックス感受性CysのSH基が,いずれも電子授受能の高いポリスルフィド鎖を形成していることが新たに明らかとなり,これまで明らかにしてきたレドックスシグナル制御機構とは異なる様式でシグナル伝達に寄与する可能性が示されつつある.本稿では,ミトコンドリア品質管理に関わるdynamin-related protein(Drp)1のレドックス制御を例に,心臓の頑健性制御における超硫黄分子の役割を紹介する.

Journal of Japanese Biochemical Society 93(5): 702-707 (2021)

図1 Gタンパク質のシステイン修飾による活性化と心筋細胞応答

三量体Gタンパク質(Gαi/o),低分子量Gタンパク質H-Ras, ダイナミン様Gタンパク質Drp1は,いずれもC末端の可変領域にレドックス感受性のCysを持ち,このCysが親電子修飾あるいは脱硫黄化されることでさまざまなシグナル応答が引き起こされる.

2. ミトコンドリア品質管理と心筋の頑健性

収縮弛緩運動に多くのエネルギーを要する心筋においては,その供給源となるミトコンドリアの品質が頑健性を決定する要素となる.ミトコンドリアの長さや密度が酸素消費能と密接に関連すると考えられている.たとえば,ヒトが4か月間の耐久運動を続けると,骨格筋のミトコンドリア電子伝達鎖が密な超複合体を形成し,酸素消費量を増加させることが報告されている6).一方で,高血糖や低酸素状態など,嫌気的代謝が優位に働かなければならない環境に細胞がさらされると,ミトコンドリアは積極的に分裂する7).すなわち,細胞は環境に応じてミトコンドリアを分裂・融合させることで,システミックなエネルギー代謝を的確に調節しているといえる.ミトコンドリアの分裂は分裂促進Gタンパク質Drp1やミトコンドリア外膜上に存在するDrp1結合タンパク質(Fis1やMff, MiD49, MiD51など)によって調節され,融合は融合促進Gタンパク質[Mitofusion-1(Mfn1),Mitofusion-2(Mfn2),Optic atrophy-1(Opa1)]によって調節されている(図2).ミトコンドリア分裂を担うDrp1は細胞質に存在し,GTP結合型(活性型)となるとミトコンドリア外膜に移行する.ミトコンドリア外膜に集積し多量体化したDrp1はリング状構造を形成し,GTPase活性を利用してミトコンドリアを分裂させる.一方で,ミトコンドリアの融合は外膜に存在するMfn1, Mfn2と内膜に存在するOpa1によって仲介される.機能不全になったミトコンドリア断片は自食[マイトファジー(mitophagy)]により分解される.健全なミトコンドリア断片はMfn1, Mfn2, Opa1を介して融合し,再利用される.近年,ミトコンドリアの分裂・融合の異常が虚血再灌流障害8)や心筋症9),ハンチントン病10),アルツハイマー病11),筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)12),糖尿病合併症13)といったさまざまな疾患と関連することが明らかとなり,ミトコンドリア品質管理維持がさまざまな難治性疾患の画期的な治療になる可能性が期待されている.

Journal of Japanese Biochemical Society 93(5): 702-707 (2021)

図2 ミトコンドリアの品質管理制御に関わるGタンパク質とその欠損による心臓の機能変化

ミトコンドリアの分裂,融合は三つのGタンパク質群によって的確に制御されており,これらはすべてレドックス感受性を持つ.どのGタンパク質を欠損させても心不全を呈することから,ミトコンドリアの品質管理が心筋の頑健性維持に必須であると考えられる.

心臓におけるミトコンドリア品質管理の重要性については,Drp1やMfn1/2欠損マウスの表現型から明らかにされている14).Drp1欠損マウスの心臓は,拡張型心筋症様の表現型を示す.この心筋では,顕著なミトコンドリア融合・伸長,マイトファジー亢進とミトコンドリア消失,心筋ネクローシスが観察される(図2).一方,Mfn1/Mfn2両欠損マウスの心臓は遠心性心肥大様の表現型を示す.この心筋では,ミトコンドリア分裂亢進,マイトファジー低下を伴うミトコンドリア蓄積,心筋細胞の肥大(拡張)が観察される.興味深いことに,Drp1/Mfn1/Mfn2トリプル欠損マウスの心臓は,求心性心肥大様の表現型を示し,その心筋では異種ミトコンドリアの混在,マイトファジー障害を伴う巨大ミトコンドリアの蓄積,サルコメア構造のゆがみ等が観察された.こうした知見からも,ミトコンドリ分裂・融合を介する品質管理制御機構が心筋恒常性維持にきわめて重要な役割を果たすことが明確に示されてきている.

3. ミトコンドリアの電子伝達における超硫黄分子の役割

ミトコンドリア内膜では,電子供与体から電子受容体へ電子を移動するレドックス反応により自由エネルギーをプロトン濃度勾配に変換し,このプロトン濃度勾配を利用してATP合成酵素がATPを生成し,細胞質に輸送する.好気性生物は,電子供与体として,有機物質のニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)やフラビンタンパク質,コハク酸,グリセロール3-リン酸等を利用しているが,原核生物がエネルギー源とする硫化水素(H2S/HS)からの電子供与を可能とする酵素(sulfide:quinone oxidoreductase:SQR)も備えている(図3).一方,電子受容体として,好気性生物は電子求引性の強い分子状酸素を利用することで,効率よくH勾配を作り出しATPを産生する.嫌気的環境下では,硫黄(硫酸イオン)や二酸化炭素,硝酸塩などが電子受容体として用いられる.一方で,高濃度のH2S/HSはシトクロームc酸化酵素の鉄イオンに作用し酵素活性を阻害することで電子伝達を負に制御する.すなわち,硫黄は多様な化学的構造・特性をとることで,エネルギー代謝を制御しうる重要な原子であるといえる.我々は,東北大・赤池孝章教授らとの共同研究を行う中で,Cys由来の超硫黄分子種が電子受容体として働くことで低酸素ストレス下の心筋ミトコンドリアのエネルギー代謝能の保持に寄与することを新たに見いだした.近年,低温プラズマ照射がもたらす生物学的効果が注目を集めている.我々は,細胞培養用のDMEM培地に低温プラズマ照射を1~3秒与えた培地でラット新生仔心筋細胞を培養することで,低酸素/再酸素化障害が著しく抑制されることを見いだした.この心筋保護効果はCys含有バッファー液にプラズマ照射した場合でも再現され,メチオニンや他のアミノ酸にプラズマ照射したバッファー液では再現されなかった.Cysに低温プラズマ照射することでCysSSHなどの還元型超硫黄分子が形成されること,この溶液を心筋細胞に曝露することで,低酸素ストレス曝露によって生じるATP産生量および超硫黄分子量の低下,ミトコンドリア膜電位の消失,乳酸およびH2Sの蓄積が顕著に抑制された.この現象はプラズマ照射Cysバッファー液と等価のNa2S4を処置しても再現されたことから,還元型の超硫黄分子が虚血心筋保護作用に必要であることが示された.この知見は,ミトコンドリア呼吸代謝において内因性のH2Sと超硫黄分子が真逆に作用することを示唆している.

Journal of Japanese Biochemical Society 93(5): 702-707 (2021)

図3 ミトコンドリア呼吸代謝における超硫黄分子の役割

CARS2等から供給される超硫黄分子は酸素と協調的に働き,副産物としての活性酸素を生成させずに電子を受容する.虚血時にSQR(sulfide:quinone oxidoreductase)の発現量が低下し,それに伴って硫化物の蓄積や電子伝達系の阻害が起こると考えられる.

4. Drp1のCys脱硫黄化と心筋の脆弱化

我々は,心疾患の主要なリスク因子となる環境化学物質(=親電子物質)を代謝・消去する機構の解明を目指して,赤池教授らと10年以上にわたり共同研究を展開してきた5, 15–17).親電子物質の感知・代謝は,求核性の高い硫黄を含む分子によって主に仲介される.当初は硫化水素アニオン(H2S/HS)が求核置換基として親電子物質の直接的な代謝・消去を担っていると考え,実際に低濃度のNaHSを投与したマウスで心筋梗塞後の心不全が著しく改善されることを報告した5).しかし,その過程で,H2S/HSそのものではなく,H2S/HS処置によって細胞内で生成される超硫黄分子が求核物質の分子実体となることを明らかにし,その主たる生成酵素が,Cysパースルフィド(CysSSH)を形成するミトコンドリア局在型のcysteinyl-tRNA合成酵素(CARS2)であることを明らかにした15).CARS2を欠損させたHEK293T細胞では,野生型と比べてミトコンドリア面積および数の減少と,それに伴う膜電位や酸素消費速度の低下が観察された.また,Drp1タンパク質のCys624(ヒト・マウスでいうCys644に相当)がCARS2依存的に超硫黄化(ポリ硫黄化)されること,Drp1は脱硫黄化に伴ってGTPase活性が約3倍上昇することを見いだした.CARS2欠損HEK293T細胞ではDrp1の超硫黄化レベルが著しく低下しており,この細胞に野生型CARS2遺伝子を導入するとミトコンドリア分裂とDrp1活性化が顕著に抑制され,これに伴って膜電位や酸素消費速度の低下も回復することがわかった.CARS2のtRNA合成酵素活性だけを阻害した変異体(CD)を発現させても同様の回復効果が認められたのに対し,CARS2のCysSSH生成活性に必要なpyridoxal phosphate(PLP)結合部位のリシンを置換した変異体(KA)を発現させてもミトコンドリア分裂抑制効果は認められなかった.以上の結果より,ミトコンドリア品質管理を制御するDrp1が超硫黄分子により活性調節されていることが明らかとなった.これまでGタンパク質の活性サイクルは,GTP/GDP exchange factor(GEF)とGTPase activating protein(GAP)のバランスでのみ的確に調節されるものと信じられてきたが,我々はタンパク質中の超硫黄分子がGタンパク質の活性を調節するというまったく新しい概念を提唱した.一方,ミトコンドリア融合促進Gタンパク質Mfn1, Mfn2, Opa1では顕著な超硫黄化シグナルが観察されなかった.タンパク質によって定常状態の超硫黄化レベルが異なることを考えると,Mfn1, Mfn2, Opa1などのタンパク質Cys超硫黄鎖は,翻訳後速やかに脱硫黄化されている可能性が考えられる.

Drp1超硫黄鎖がミトコンドリア分裂活性を負に制御することから,心筋細胞におけるDrp1脱硫黄化の病態生理学的役割について検討した.環境中には有機水銀やカドミウムなどの遷移金属,タバコ副流煙や排気ガス中に含まれるアルデヒドやキノン類など,健康に悪影響を与えるさまざまな親電子物質が存在している.こうした環境化学物質の複合的曝露の総量(エクスポソーム)がさまざまな疾患のリスク予測につながるという考えが環境省を中心に広まりつつある.たとえば,マグロやクジラに含まれる微量のメチル水銀(MeHg)は水俣病の原因親電子物質であるが,ヒトでは水俣病の主症状である神経障害の発症閾値用量より50倍低い毛髪水銀量しか検出されないにもかかわらず,心筋梗塞発症リスクが2.5倍も増加することが疫学調査から明らかにされている.神経毒性を誘発しない低用量のMeHgを1週間マウスに曝露させ続けた結果,体重量や尿排泄・食事摂取量,活動機能に何ら変化がなかったものの,大動脈狭窄による圧負荷で誘発される突然死および心不全が顕著に増悪することがわかった16).MeHg曝露心筋細胞ではDrp1の超硫黄化レベルが有意に低下しており,これに伴ってDrp1活性の有意な増加とミトコンドリア過剰分裂が観察された.MeHgは硫黄原子と反応することで,親電子性を持たない代謝体(MeHg)2Sを形成し,生体から解毒・代謝される.MeHg曝露によるDrp1超硫黄鎖の硫黄枯渇およびミトコンドリア過剰分裂は,心筋細胞に活性硫黄の基質であるNaHSを24時間処置しておくことでほぼ完全に解除された.Drp1の脱硫黄化は,Drp1のGTPase活性そのものに影響を与えず,Drp1のGEFとして働くアクチン結合タンパク質filaminとの相互作用を増強させることでミトコンドリア分裂を促進することも明らかとなった(図1図417).Drp1活性はリン酸化による制御がよく知られているものの18),MeHg曝露したマウス心臓で,Drp1リン酸化レベルはほとんど変化しなかった.以上の結果は,環境汚染物質の長期的曝露によるDrp1タンパク質超硫黄鎖の硫黄枯渇がミトコンドリア分裂を誘発し,血行力学的負荷に対する抵抗性を減弱させる原因となることを強く示唆している.

Journal of Japanese Biochemical Society 93(5): 702-707 (2021)

図4 Drp1タンパク質超硫黄鎖の脱硫黄化によるミトコンドリア分裂と心筋脆弱化

環境中の親電子物質によるDrp1タンパク質の超硫黄鎖が脱硫黄化されることで,Drp1とfilaminとの相互作用が惹起され,その結果,ミトコンドリア過剰分裂や心筋早期老化が引き起こされる.

5. タンパク質超硫黄化の病態生理的意義

上述のとおり,CysSSHは翻訳時にタンパク質に取り込まれ,タンパク質の成熟化,活性調節などに寄与する生理的役割が示されつつある.その一方で,硫黄分子は容易にカテネーションを起こしうる化学的特性を持つため,タンパク質の超硫黄鎖は「脱硫黄化」だけでなく「過硫黄化」される可能性が考えられる.しかし,過硫黄化の生理的役割についてはまだよくわかっていない.我々は,低酸素ストレス+超硫黄分子を曝露させたラット・マウスの心筋において,Drp1の超硫黄化が増強し,それに伴ってDrp1の多量体形成が惹起されることを見いだしている.これらDrp1凝集体は,細胞内のミトコンドリアとは異なる,p62陽性画分で形成されることも見いだしている.Drp1多量体形成は,GTPase活性を欠損させたDrp1ドミナントネガティブ変異体を発現させた細胞株でも見受けられる.実際,多量体化Drp1はGTPと結合しなかった.Drp1過硫黄化による多量体形成のメカニズムやミトコンドリア品質管理との関係については,より詳細な解析が必要であるものの,重度な病態心筋においてのみDrp1多量体化が観察されることを考えると,病態特異的な応答かもしれない.現在,Drp1過硫黄化に関わるCys過硫黄化を特異的に機能欠損させたマウスを作出中であり,その表現型解析を通して,Drp1多量体化が生理的に意味のある「新奇シグナル」なのか,単なる「病態の結果」なのかを見きわめていく必要があるだろう.

6. おわりに

これまでH2Sが一酸化窒素や一酸化炭素に続く第三のガス状シグナル伝達分子と考えられ,多くの論文が掲載されてきた.しかし,赤池教授らが世界に先駆けて超硫黄分子を検出する最先端技術を開発し,その活性実体がH2Sではなく超硫黄分子であることが明確に示されてきた.さらに,超硫黄分子の生成・代謝を担う責任酵素も同定され,その遺伝子欠損マウスを用いた解析から,超硫黄分子の生物学的意義が次々と明らかにされてきている.特にミトコンドリアのエネルギー代謝やタンパク質・細胞小器官(オルガネラ)の品質管理との関係はきわめて重要であり,我々の研究成果からも,心疾患との関連が示されてきた.今後は,超硫黄分子の特性を活かした医療技術を開発し,硫黄研究の医学的重要性を確立させたい.

引用文献References

1) Jones, D.P. (2015) Redox theory of aging. Redox Biol., 5, 71–79.

2) Nishida, M., Nishimura, A., Matsunaga, T., Motohashi, H., Kasamatsu, S., & Akaike, T. (2017) Redox regulation of electrophilic signaling by reactive persulfides in cardiac cells. Free Radic. Biol. Med., 109, 132–140.

3) Nishida, M., Kumagai, Y., Ihara, H., Fujii, S., Motohashi, H., & Akaike, T. (2016) Redox signaling regulated by electrophiles and reactive sulfur species. J. Clin. Biochem. Nutr., 58, 91–98.

4) Nishida, M., Maruyama, Y., Tanaka, R., Kontani, K., Nagao, T., & Kurose, H. (2000) G alpha(i) and G alpha(o) are target proteins of reactive oxygen species. Nature, 408, 492–495.

5) Nishida, M., Sawa, T., Kitajima, N., Ono, K., Inoue, H., Ihara, H., Motohashi, H., Yamamoto, M., Suematsu, M., Kurose, H., et al. (2012) Hydrogen sulfide anion regulates redox signaling via electrophile sulfhydration. Nat. Chem. Biol., 8, 714–724.

6) Greggio, C., Jha, P., Kulkarni, S.S., Lagarrigue, S., Broskey, N.T., Boutant, M., Wang, X., Conde Alonso, S., Ofori, E., Auwerx, J., et al. (2017) Enhanced respiratory chain supercomplex formation in response to exercise in human skeletal muscle. Cell Metab., 25, 301–311.

7) Tanaka, T., Nishimura, A., Nishiyama, K., Goto, T., Numaga-Tomita, T., & Nishida, M. (2020) Mitochondrial dynamics in exercise physiology. Pflugers Arch., 472, 137–153.

8) Archer, S.L. (2013) Mitochondrial dynamics–mitochondrial fission and fusion in human diseases. N. Engl. J. Med., 369, 2236–2251.

9) Wai, T., García-Prieto, J., Baker, M.J., Merkwirth, C., Benit, P., Rustin, P., Rupérez, F.J., Barbas, C., Ibañez, B., & Langer, T. (2015) Imbalanced OPA1 processing and mitochondrial fragmentation cause heart failure in mice. Science, 350, aad0116.

10) Song, W., Chen, J., Petrilli, A., Liot, G., Klinglmayr, E., Zhou, Y., Poquiz, P., Tjong, J., Pouladi, M.A., Hayden, M.R., et al. (2011) Mutant huntingtin binds the mitochondrial fission GTPase dynamin-related protein-1 and increases its enzymatic activity. Nat. Med., 17, 77–382.

11) Cho, D.-H., Nakamura, T., Fang, J., Cieplak, P., Godzik, A., Gu, Z., & Lipton, S.A. (2009) S-nitrosylation of Drp1 mediates beta-amyloid-related mitochondrial fission and neuronal injury. Science, 324, 102–105.

12) Joshi, A.U., Saw, N.L., Vogel, H., Cunnigham, A.D., Shamloo, M., & Mochly-Rosen, D. (2018) Inhibition of Drp1/Fis1 interaction slows progression of amyotrophic lateral sclerosis. EMBO Mol. Med., 10, e8166.

13) Jheng, H.F., Tsai, P.J., Guo, S.M., Kuo, L.H., Chang, C.S., Su, I.J., Chang, C.R., & Tsai, Y.S. (2012) Mitochondrial fission contributes to mitochondrial dysfunction and insulin resistance in skeletal muscle. Mol. Cell. Biol., 32, 309–319.

14) Song, M., Franco, A., Fleischer, J.A., Zhang, L., & Dorn, G.W. 2nd. (2017) Abrogating mitochondrial dynamics in mouse hearts accelerates mitochondrial senescence. Cell Metab., 26, 872–883.

15) Nishimura, A., Shimoda, K., Tanaka, T., Toyama, T., Nishiyama, K., Shinkai, Y., Numaga-Tomita, T., Yamazaki, D., Kanda, Y., Akaike, T., et al. (2019) Depolysulfidation of Drp1 induced by low-dose methylmercury exposure increases cardiac vulnerability to hemodynamic overload. Sci. Signal., 12, eaaw1920.

16) Akaike, T., Ida, T., Wei, F.Y., Nishida, M., Kumagai, Y., Alam, M.M., Ihara, H., Sawa, T., Matsunaga, T., Kasamatsu, S., et al. (2017) Cysteinyl-tRNA synthetase governs cysteine polysulfidation and mitochondrial bioenergetics. Nat. Commun., 8, 1177.

17) Nishimura, A., Shimauchi, T., Tanaka, T., Shimoda, K., Toyama, T., Kitajima, N., Ishikawa, T., Shindo, N., Numaga-Tomita, T., Yasuda, S., et al. (2018) Hypoxia-induced interaction of filamin with Drp1 causes mitochondrial hyperfission-associated myocardial senescence. Sci. Signal., 11, eaat5185.

18) Dorn, G.W. 2nd. (2016) Mitochondrial fission/fusion and cardiomyopathy. Curr. Opin. Genet. Dev., 38, 38–44.

著者紹介Author Profile

西田 基宏(にしだ もとひろ)

九州大学大学院薬学研究院教授.自然科学研究機構(生命創成探究センター)生理学研究所教授(クロスアポイントメント兼任).博士(薬学).

略歴

1973年兵庫県に生る.2001年東京大学大学院薬学系研究科博士課程修了.学振PD, 生理学研究所(岡崎統合バイオサイエンスセンター)助手,九州大学大学院薬学研究院講師,准教授を経て2013年8月より現職.

研究テーマと抱負

心臓の頑健性破綻を制御するシグナル伝達機構の解明.

ウェブサイト

http://www. nips.ac.jp/circulation/

趣味

水泳,飲みニケーション.

This page was created on 2021-09-09T11:54:44.267+09:00
This page was last modified on 2021-10-14T15:06:29.000+09:00


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。