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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 93(5): 708-716 (2021)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2021.930708

特集Special Review

超硫黄分子の化学と代謝超硫黄生物学の創成とオミックス先制医療への展望Chemistry and metabolism of supersulfides: Perspective for supersulfide biology and omics medicine

東北大学大学院医学系研究科環境医学分野Department of Environmental Medicine and Molecular Toxicology, Tohoku University Graduate School of Medicine ◇ 〒980–8575 仙台市青葉区星陵町2–1 ◇ 2–1 Seiryo-machi, Aobaku, Sendai, Miyagi 980–8575, Japan

発行日:2021年10月25日Published: October 25, 2021
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近年,システインパースルフィドなどの超硫黄分子が生体内で大量に合成され,多彩な生理機能を発揮していることが明らかとなった.これを口火にして超硫黄分子の多彩な生理活性が国内外で大きな注目を浴びている.超硫黄分子は,酸素や活性酸素と類似した反応性を有する反面,酸素にはみられない化学的反応性を有する.一方で,生体内では加水分解平衡と求核・親電子反応によって複雑な反応性と分子形状をとっているため,これまでその実体には不明な点が多かったが,最近,その最先端計測技術である超硫黄オミックスが開発されたことで,超硫黄分子の主たる生合成経酵素として,タンパク質翻訳酵素であるシステイニルtRNA合成酵素が同定された.すなわち,細菌・原核細胞から真核細胞・哺乳類・ヒトまで種横断的,普遍的に発現されている超硫黄分子が生命に必須の硫黄依存型エネルギー代謝系,すなわち硫黄呼吸の担い手であることが明らかとなってきた.

1. はじめに

硫黄は,酸素と同じ元素周期表の第16族に属する元素であり,酸素に比べて,第一イオン化エネルギーが小さく電子親和性は大きい.これは,硫黄が酸素よりも電子を放出しやすくかつ電子を受け取りやすいことを意味する.さらに,硫黄は酸化還元反応を繰り返すことで直鎖状に連結した分子構造(カテネーション)を形成しやすく,単一の元素でカテネートするのは硫黄だけであるが,一つの元素により構成される単純な物質であるにもかかわらず自然界では多彩な同素体が存在している.一方,生体内では豊富に共存する水分子による加水分解と溶存酸素や活性酸素,還元・酸化物質により容易に直鎖構造が分解されて,また不用意なサンプル操作や試薬処理によるアーテファクトにより分解除去されるため,生体における硫黄代謝物の実体,特に,生合成系・代謝動態や生理機能はこれまで不明な点が多かった.このような状況において筆者らは,硫黄カテネーションの分解を最小限にとどめて,当該反応性分子を検出・定量する高精度で精密な解析技法を開発してきた.この最先端技術を用いることにより,システインパースルフィド(CysSSH)やグルタチオンパースルフィド(GSSH)などの活性硫黄あるいは超硫黄分子と呼ばれる多様な硫黄代謝物が,生体内に豊富に存在することを明らかにし,その代謝経路・合成酵素を同定する過程で,超硫黄分子がミトコンドリアにおいてエネルギー代謝を営むことを発見した1–8).さらに,超硫黄分子は他の生体分子にはないきわめてユニークな化学的特性を持つことで,低分子画分のみならず,生体のタンパク質高分子画分にあっても主要な側鎖として種々のタンパク質の構造・機能を制御していることも明らかとなりつつある.加えて超硫黄分子が,これまで活性酸素や親電子物質によりもたらされると考えられてきたレドックスシグナルの真の担い手として多彩な生理機能を発揮しているという知見も得られている6, 7, 9–12).このように近年,活性硫黄分子という用語では表現しきれない多様な化学的,生物学的機能が明らかにされ,また,これまで取り扱ってきた活性硫黄分子の範疇を超える多彩な分子種の存在が明らかになってきたことから,これらの分子種を,活性硫黄分子を再定義して超硫黄分子と総称することとした.また最近筆者らは,超硫黄代謝の精密分析を基盤にした生体情報モニタリングを先進的な医療技術に応用することで先制医療の開発にも取組んでいる.そこで本稿では,生命進化を通じて普遍的に発現され生物種横断的な生命素子である超硫黄分子の多彩でユニークな化学特性と生理機能の発見の経緯を解説することで,超硫黄生物学により創成される革新的なパラダイムによって開拓されつつある生命科学研究の巨大な潮流について紹介し,さらにその社会実装に向けた展望について議論する.

2. 超硫黄分子の化学:加水分解平衡に依存した反応性(Hydrolysis Equilibrium Theory of Supersulfides)

超硫黄分子は,プロトン化されると求電子(親電子)物質(RSSH)として機能し,脱プロトン化されると求核物質(RSS)として機能する.パースルフィドのpKa値は,対応するチオールのpKa値よりも低く,たとえばGSSHのpKa値は5.45であり,GSHのpKa値8.94よりも3.5オーダー低いことが報告されている13).これらのpKa値から,GSSHの大部分は生理的pH条件下で脱プロトン化されたパーチオレート(GSS)のかたちで存在しているのに対して,GSHはそのままプロトン化された状態にある.このような硫黄伸長・カテネーションによるpKa値の低下は,隣接する原子に非共有電子対が存在することによるα効果によって説明されている14).すなわち,パースルフィドのチオールは,生理的なpHではチオレートに解離しているため,求核的な高い反応性を示すが,通常のチオールは解離していないので,結局は,GSSHの方が生理的pHではるかに強力な求核性・還元性を示す.実際は,GSSHのpKa値を正確に求めることは難しいので,このpKa値のみで生体内でのGSSHのすべての挙動を推察するのは正しくはないかもしれないが,細胞や組織によって差異はあるものの,通常GSSHは細胞内に10 µM前後(細胞・組織によってはそれ以上100 µM程度)存在し,GSHは,数mM存在する.よって,チオレートの量から見積もられるGSSHの生体内(細胞内)での機能的な濃度はGSHのチオレートの100倍程度過剰であるということになり,GSHを軽く凌駕するGSSHの生体内での還元・抗酸化機能の優位性がうかがえる.

一方,酸化型ポリスルフィド(RSSSR)は,親電子的な酸化型ジスルフィドとは異なり,複数の硫黄側鎖の電子(電荷)密度(charge density:δ+/−)が不均一に,多くは,δとδが交互に並んで分布しているため,水分子(あるいは水酸基)との加水分解による平衡状態にある.このような加水分解は,通常,単一なジスルフィドでは中性からアルカリ性(pH 9程度まで)の水溶液中では起こらないが,超硫黄・ジスルフィドの場合は,これが生理的な分子環境で定常的に生じているため,しばしば,共存する求核・親電子物質と複雑な連鎖反応が起こり,硫黄原子の数が増減しながら転移・組換え・伸長・分解を繰り返している(図13, 10, 15).すなわち,超硫黄の加水分解平衡は,pHの上昇に伴って水酸化物イオン(OH)濃度が高くなることで右向きにシフトしその分解が促進され,さらに,親電子性物質により還元型パースルフィドがアルキル化され消費されることで加水分解平衡が顕著に右にシフトする15, 16).このような加水分解平衡におけるポリスルフィドと親電子性物質の反応において,最終分解産物としてR-S-R(ビスアルキル化物:2個の置換基Rで挟まれた硫黄分子)が生成する.このビス体が,硫化水素(H2S)のアルキル化産物とまったく同一のものであったことから,内外の研究者らが生体内での超硫黄分子の生成と生理機能が硫化水素によるものと誤認するに至る深刻な落とし穴に陥ってきた3).実際,生体内の主要な硫化水素産生酵素と見なされてきたシスタチオニンβ-シンターゼ(cystathionine β-synthase:CBS),シスタチオニンγ-リアーゼ(cystathionine γ-lyase:CSE)や3-メルカプトピルビン酸硫黄トランスフェラーゼ(3-MST)などはいずれも,遊離型の硫化水素を産生せず,主としてCysSSHなどの還元型パースルフィドを産生していることが証明されている.一方で,ポリスルフィドと求核性(還元性)物質が好気的な条件で進んだ場合,還元・酸化の連鎖反応による超硫黄伸長(カテネーション)が引き起こされる.すなわち,親電子性物質や求核性物質により,加水分解平衡にシフトが起こり,超硫黄分子の分解やカテネーションなど多彩でダイナミックな反応が誘発・促進される.超硫黄分子の化学的特性はこれまで不明な点が多かったが,このように一見複雑に思われる超硫黄も実際は比較的単純な原理に支配されて挙動していることがわかってきており,今後,その全容を理解することにより超硫黄の真の代謝機構や生理機能が解明されていくであろう.実際,筆者らは,超硫黄オミックスという先端技術の確立を端緒にして,これまで未知の領域であった超硫黄の化学と生物学のフロンティアを開拓している.

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図1 超硫黄分子の加水分解平衡:親電子性物質と求核性(還元)物質との反応

3. 超硫黄オミックス:超硫黄代謝解析の革新的オミックス技術

筆者らはこれまで超硫黄分子の統合メタボロームすなわち超硫黄オミックスの開発に取組んできたが,前述の議論から明らかなように,超硫黄オミックスの確立には超硫黄の加水分解平衡の解明が必要不可欠である. すなわち,加水分解平衡の視点から,実際はどのようなアルキル化剤も親電子性がある限りこの加水分解平衡を右へシフトさせるので,真に高精度の超硫黄計測は困難である.しかしながら,超硫黄の捕捉剤としてさまざまな親電子性アルキル化剤を比較検討するなかで,幸運なことに,超硫黄の加水分解平衡を大きくシフトさせることなく超硫黄のチオール(–SH基)をアルキル化し安定な付加体に誘導体化するプローブに巡り会うことができた.それが,β-(4-hydroxyphenyl)ethyl iodoacetamide(HPE-IAM)であり,本化合物が超硫黄分子の分解を抑えつつ誘導体化することを見いだした3).さらに,安定同位体の標準物質を内部標準として用いる定量的な質量分析法と組み合わせることにより,硫黄代謝物の精密・定量メタボローム,すなわち,超硫黄オミックスを確立した2, 3).このような最先端オミックス技法を用いることにより,CysSSHやGSSHを精密に同定・定量し,それら一連の超硫黄代謝物が生体内にサブミリモルオーダーで存在することを証明した1–6).加えて,HPE-IAM,チロシン,スクロースなどのヒドロキシフェニルまたはヒドロキシル基を含む化合物が,ポリスルフィドを安定化することを明らかにしており10),ごく最近はHPE-IAMに続く次世代型超硫黄安定化プローブとして,N-iodoacetyl L-tyrosine methyl ester(TME-IAM)の開発にも成功している(図27).超硫黄分子は,低分子画分のみならずタンパク質のシステイン側鎖にも硫黄カテネーションを形成した状態で豊富に存在することがわかっており2, 3, 6, 11, 17–19),この加水分解平衡理論をタンパク質超硫黄化(ポリスルフィド化)の解析にも応用することができる6, 11)

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図2 超硫黄オミックスプローブの開発

一方,ポリスルフィド化タンパク質の検出法,すなわち超硫黄プロテオームとして,筆者らはこれまでに,超硫黄分子のユニークな化学的反応性に基づいた“タグ-スイッチ法”を報告している2).この方法では,メチルスルホニルベンゾチアゾール(methylsulfonyl benzothiazole:MSBT)により,タンパク質中のポリスルフィドの末端を含む–SH基を標識(タグ化)し,その後,もう一つのタグ化試薬であるシアノ(CN)-ビオチンにより超硫黄側鎖をビオチン化する.これはシアン化合物がポリスルフィド中の硫黄側鎖と反応(シアノ分解反応)する性質を利用しているが,その反応効率が必ずしも高くないというのが欠点でもある.とはいえ,この方法を用いることで,ポリスルフィド化されたシステインにビオチンを導入(タグ-スイッチ化)することができるし,タンパク質の電気泳動後,ウェスタンブロッティングすることで,網羅的な超硫黄タンパク質のスクリーニングやプロテオームに応用できる.

これに加えて筆者らは,親電子性ビオチン標識試薬を用いた超硫黄タンパク質の検出法を開発している3).この方法ではまずビオチン標識試薬ビオチン-ポリエチレングリコール-マレイミド(biotin-PEG-MAL:BPM)でタンパク質中の超硫黄をビオチン化する.次に還元剤またはBPMより強い親電子性を持ったアルキル化剤[p-クロロ水銀安息香酸(p-chloromercuribenzoic acid:PCMB)など]で処理すると,ポリスルフィド中の超硫黄側鎖と反応(アルキル化)し,結合していたBPMは遊離される.PEGの数が多い高分子量のBPM(2 kDa程度)を用いると,結合しているBPMの数,すなわち,超硫黄化されているシステイン残基数に依存する分子量変化を,SDS-PAGEで移動度の変化としてゲルシフトアッセイにより確認することができる(biotin-PEG-MAL labeling gel shift assay:PMSA).また,BPM化したタンパク質を固定化アビジン樹脂に吸着させ,還元剤でポリスルフィドを切断することで,超硫黄化タンパク質を溶出することができる(超硫黄タンパク質キャプチャー法)3).先に述べたように,HPE-IAMやTME-IAMなどの親電子性アルキル化剤の側鎖を置換・修飾することで超硫黄分子との反応性が変化する知見が得られており,現在,超硫黄分子の分解を抑制しながら効率よく誘導体化する,より優れた超硫黄化タンパク質検出方法の開発を進めている.

4. 超硫黄分子の生体内生成機構

タンパク質のポリスルフィド化は,当初,リン酸化,アセチル化,グリコシル化,S-ニトロシル化などと同様に翻訳後修飾の一つであるとみなされていた.しかし,前節のタンパク質超硫黄化検出法により,大腸菌内組換えタンパク質や動物培養細胞内タンパク質のほぼすべてが超硫黄化されていることがわかってきた.このことから,「タンパク質超硫黄化は,翻訳後ではなく,翻訳時にすでに起こっている」という着想に至った.そこで,リボソーム画分の新生タンパク質の側鎖解析を行ったところ,たとえば,グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)の翻訳・合成動態解析から,いずれのシステイン側鎖においても70%以上が超硫黄化されていることを確認した3).そこで,翻訳関連酵素であるシステイニルtRNA合成酵素(cysteinyl-tRNA synthetase:CARS)に着目して解析したところ,本酵素がシステイン(CysSH)を基質にCysSSHを効率よく産生することが判明した3).哺乳類においては,細胞質に局在するCARS1およびミトコンドリアに局在するCARS2が存在するが,両酵素ともCysSSH合成活性(cysteine persulfide synthase:CPERS)を有していた.ゲノム編集技術CRISPR-Cas9システムを用いてCARS2ヘテロ欠損マウスを作製し,肝臓および肺組織を用いて硫黄メタボローム解析を行ったところ,野生型に比べてCysSSH量が約半分に減少していた.筆者らは以前に,超硫黄分子合成酵素として,システイン代謝酵素であるCBSや,CSEを同定している2).CBSやCSEは,シスチンを基質としてCysSSHを産生するが,両酵素がほとんど発現していない心筋の細胞や組織においても超硫黄分子の産生は認められている.また,CARS2ノックアウト細胞において,CBSやCSEをノックダウンしたところ,細胞内の超硫黄分子量に大きな変化は観察されなかった3).これらの結果は,CARS2が,哺乳類細胞における主要な超硫黄分子の供給源であることを示している.すなわち,CARSは翻訳のマスター酵素であると同時に超硫黄分子の主要な産生酵素として機能するというきわめて重要で新しい硫黄代謝機構が明らかとなった3)

大腸菌,ヒト,マウスのCARS組換えタンパク質の解析により,CARSは細菌から哺乳類まで生物種横断的にCysSSH合成活性を有することが明らかとなった3).CARSのCPERS活性はシステインを基質とし,通常の翻訳活性であるアミノアシルtRNA合成活性には不要であるピリドキサール-5′-リン酸(pyridoxal-5′-phosphate:PLP)を要求する.そこで,大腸菌CARS(Escherichia coli CARS:EcCARS)のPLP結合部位であるK73/76(KIIKモチーフ)およびK266/269(KMSKモチーフ)のリシン残基の変異体を作製し,アミノアシル化活性とCPERS活性への影響を解析した(図33).その結果,アミノアシル化活性が正常であるのに対して,CPERS活性が有意に減少していた.反対に,アミノアシル化反応の活性中心システイン(C28, C209)の変異体を作製し解析したところ,アミノアシル化活性が減少するのに対して,CPERS活性は保持したままであった.さらに,KIIKモチーフを細胞および個体レベル(マウス)で欠損させたところ,CARSのアミノアシルtRNA合成活性は保持しながら,CysSSHおよび関連硫黄代謝物の生成が停止した3).つまり,パースルフィド合成活性には,CARS本来のアミノアシルtRNA合成活性とは異なるアミノ酸残基が関与していることが証明された.

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図3 CARSの遺伝子構造と異生物種間アラインメント

5. ヒト・哺乳類における硫黄呼吸の発見

現在,多くの生命がエネルギー代謝において酸素を利用しているが,生命の起源である原始細胞が誕生した約38億年前の地球は無酸素で嫌気的な環境であった.そのため,通常の好気性生物が使う酸素分子の代わりに,自然界に存在した硫黄分子が電子受容体としてエネルギー産生に用いられたと考えられている.すなわち,酸素を使ったエネルギー代謝である酸素呼吸が生物界に出現する以前の生命進化の起源において,硫黄を使った硫黄呼吸が営まれていたものと推察されている.ミトコンドリアの電子伝達系(electron transport chain:ETC)においては,電子供与体であるNADHから最終的な電子受容体である酸素分子に電子が移動する際に,ミトコンドリア内膜にプロトン勾配が生じることで膜電位が形成され,その膜電位に依存してATP合成が行われエネルギー代謝が営まれている.CARS2がミトコンドリア局在酵素であることから,CARS2破壊細胞やCARS2変異細胞(CPERS活性欠損変異体)のミトコンドリア機能を解析したところ,ミトコンドリア膜電位形成が顕著に損なわれていた3).これは,超硫黄分子が膜電位形成を介してミトコンドリアのエネルギー代謝に貢献していることを示している.加えて最近,酵母におけるミトコンドリアのエネルギー代謝にCARSが寄与する知見を得ている20).つまり,ETCの電子受容体が,通常の酸素呼吸の酸素分子ではなく超硫黄分子であるとする,ヒト・哺乳類における硫黄呼吸の発見であり,生物界における硫黄呼吸の再発見である(図4).

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図4 哺乳類・ヒトにおける硫黄呼吸のメカニズム:S-Oハイブリッド呼吸

Q:補酵素Q.

生命進化の初期の原始細胞のみならず,現代においても,硫黄そのものを電子受容体として利用している細菌が存在する(たとえば,ピロリ菌の仲間Wolinella succinogenesや超好熱性細菌Aquifex aeolicusなど).また,硫黄酸化細菌(Thiobacillusなど)は,sulfide:quinone oxidoreductase(SQR)によって無機硫黄化合物を酸化しエネルギーを生産している.したがって,このような原始的な代謝システムが哺乳類における硫黄呼吸の起源なのであろう.SQRによる硫化物の酸化は,補酵素Q(coenzyme Q:CoQ)を介してミトコンドリアのETC複合体IIIに電子を供与し,これによりATP合成を促進すると考えられている.そこで,ミトコンドリアのエネルギー生産におけるSQRの役割を解明するために,CRISPR/Cas9システムによりミトコンドリアのSQRを欠損した変異マウスを開発した8).SQR変異マウスは正常に生まれたが,野生型マウスに比べ成長が著しく遅延し短寿命であることがわかった.さらに,SQR欠損によって低酸素に対する脳の感受性が高まるのに対して,神経細胞におけるSQR過剰発現は,低酸素が誘発する硫化物の蓄積,生体エネルギー障害,および虚血性脳損傷を抑制した.加えて筆者らはこれまでに,超硫黄分子が電子供与体および受容体として機能し,ミトコンドリアのATP生成を促進する可能性を示してきた3, 21).したがってこれらの結果は,SQR依存的なRSSHの酸化によってRSSSRが生成されるとともにETCに電子が供与され,酸化されたRSSSRがETCから電子を受け取ることによってRSSHへと還元される可能性を示しており,超硫黄分子によるエネルギー代謝サイクルを形成していることが示唆される.また,CARS2に由来するCysSSHは,SQRやethylmalonic encephalopathy 1 protein(ETHE1)などの触媒作用により,亜硫酸や硫酸,またはその他の硫黄酸化物に代謝されることを明らかにしている3, 21).すなわち,実際は,超硫黄分子が電子を受け取った後に酸素分子と反応し酸化されることで,結局は電子は酸素に渡されて,最終的には硫黄酸化物としてミトコンドリア外,さらには細胞外に排出されるので,ヒトを含めた高等生物においては,硫黄と酸素によるハイブリッド呼吸が営まれているものと思われる(図4).

6. 超硫黄化によるタンパク質品質管理と機能制御

生体内で働く酵素やタンパク質の酸化還元状態は,その高次構造や生理機能の発現動態に大きな影響を及ぼしており,タンパク質中のシステインはレドックス制御系の司令塔として動いている.タンパク質システイン(P-SH)は,活性酸素などにより,スルフィン酸(P-SO2H)やスルホン酸(P-SO3H)へと過剰に酸化されると不可逆的に著しい機能障害がもたらされる.これに対して,タンパク質に含まれるシステインパースルフィド(P-SSH)は,P-SHよりも酸化されやすい一方で,酸化されたパースルフィドは硫黄カテネーションにより複数のジスルフィド結合(–S–S–)を持つため,還元的な解離が可能であり,可逆的に修復することができる14).加えて,タンパク質超硫黄化は,CARS/CPERSによる翻訳共役型パースルフィド供給によって翻訳時にすでに起こっており,タンパク質中に大量の超硫黄が蓄積されていることからも,タンパク質酸化還元状態の調節に大きく貢献していることが予想される3).実際に筆者らは,不可逆的な酸化であるP-SO2HやP-SO3Hとは異なり,システインパーチオスルフィン酸(P-SSO2H)やパーチオスルホン酸(P-SSO3H)は可逆的に容易に修復され,これにより過度な酸化による損傷と劣化から逃れていることを証明した(図56).さらに,この超硫黄化によるタンパク質の保護効果は,活性酸素だけでなく親電子物質による不可逆的な修飾・変性効果に対しても観察されている17–19).通常,酸化されたシステインは,生体内の主要な還元系システムであるグルタチオン・チオレドキシン系により還元され修復される.そこで,グルタチオン・チオレドキシン系を破壊したマウスのタンパク質システインを解析した結果,対照の野生型マウスに比べてP-SHが減少し,過剰に酸化されたP-SSO3Hが増加した.これは,マウスの生体内にP-SSO2HやP-SSO3Hが豊富に存在し,タンパク質の過度の酸化を防ぐことで,タンパク質の品質が管理されていることを示している.

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図5 超硫黄によるタンパク質品質管理と機能制御

タンパク質の超硫黄化・ポリスルフィド化は,タンパク質の劣化防止と品質維持に加えて,それ自体によってもタンパク質の構造・機能を制御しレドックスシグナルをつかさどる.たとえば,ダイナミン様GTP結合タンパク質(dynamin-related protein 1:Drp1)のシステイン酸化修飾によってミトコンドリアの融合・分裂は制御されるが,興味深いことにCARS2ノックアウト細胞では,Drp1の同部位システインのポリスルフィド化が減少するとともにミトコンドリア短小化などの形態異常が認められた3).また,プロテインキナーゼG型1α(protein kinase G1α:PKG1α)は,ポリスルフィド化を介したタンパク質間の架橋形成による二量体化により活性化することで,肺血管の拡張を促進し,慢性的な酸素欠乏による肺高血圧症病態の軽減効果を示す5, 22).加えて,記憶・学習をはじめとする高次脳機能に重要なカルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼ(Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase:CaMKI, II, IV)の活性が,ポリスルフィド化により制御されることから,中枢神経系における超硫黄分子のレドックスシグナル経路への関与が示唆されている17–19, 23).このように,超硫黄化によるタンパク質品質維持や機能制御は,タンパク質・酵素のレドックスシグナルをはじめとした多彩な生理機能の維持・制御にきわめて重要な役割を果たしていることがさまざまな視点から明らかにされつつある.

7. 超硫黄による細胞シグナルミメティクス

近年,超硫黄分子が種々の細胞シグナルを模倣する働きをすることが示唆されている.これまでに述べてきたように,筆者らは酸素の代わりに硫黄を使ってエネルギーを産生する「硫黄呼吸」の存在をヒト・哺乳類において明らかにしてきた(4, 63, 8).また,超硫黄分子の活性酸素センサーおよびレドックスシグナル機能として,タンパク質超硫黄化による構造・機能制御を介して多彩な生理機能を発揮することを証明してきた(図63, 5, 17–19, 22, 23).加えて,活性酸素種の検出試薬が実は超硫黄分子と親和性高く反応することが報告されており,これまで活性酸素による作用として観測されてきたいくつかの生命現象が,実は超硫黄分子由来のものである可能性が示されている(図624, 25).さらに興味深いことに,超硫黄の酸化体であるCysSSO3Hは,リン酸化セリンタンパク質のリン酸基とサイズが類似しており,化学構造に関してもどちらも四面体で負に帯電しているため,リン酸化と同様の効果を示すことが報告されている(図626).先に述べたとおり,CysSSO3Hはグルタチオン・チオレドキシン系による還元的な解離により可逆的に修復可能であるため6),この点においてもリン酸化酵素と脱リン酸化酵素によって可逆的に制御されているリン酸化修飾によるシグナル伝達と酷似している.実際筆者らも,従来用いられてきたリン酸化検出法によりCysSSO3Hが検出される知見を得ており,超硫黄シグナルがリン酸化シグナルを模倣していることを示す予備的知見を得ている.また,CysSSO3Hはグルタミン酸との構造類似性もあることから,N-メチルD-アスパラギン酸受容体(NMDA-R)アゴニストとして作用することが示唆されている(図627, 28).このように,超硫黄分子あるいはその誘導体が,さまざまな点において細胞シグナルを模倣(細胞シグナルミメティックス)している可能性を秘めており,その実態解明に向けてさらなる超硫黄研究の深化が望まれる.

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図6 超硫黄による細胞シグナルミメティクス

8. 超硫黄生物学とオミックス先制医療

超硫黄による生命現象の理解と制御という超硫黄生物学の視点から未来型医療を俯瞰することで,人類の健康,疾病,寿命をコントロールする先端医療を構築できるかもしれない.たとえば筆者らは,生体の超硫黄代謝解析の新たなアプローチとして,自然に吐く息(呼気)を用いた無侵襲的な解析(呼気オミックス解析)を進めている.呼気オミックスでは,吐いた息に含まれるエアロゾル(浮遊する数ミクロン程度の微小な液体または,固体微粒子)を冷却凝縮させた液体[呼気凝縮液(exhaled breath condensate:EBC)]として回収しオミックス解析することにより,日常的に生体情報をモニタリングするとともに,疾患のバイオマーカーとなるさまざまな代謝物や炎症性メディエーターなどの生体情報を無侵襲・非接触的かつ網羅的に分析できる(図7).実際に呼気中に含まれる超硫黄代謝物を測定したところ,近年流行中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染により,超硫黄代謝物量が大きく変動するという大変興味深い知見が得られている(Nature Commun., under revision).気道の炎症に関連する酸化ストレスは,インフルエンザおよび慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD),肺気腫,特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF),さらには肺の老化を含む慢性肺疾患の病因に関係している29–33).これまで筆者らは,ヒトの肺における超硫黄分子を測定した結果,COPDおよび関連する炎症性気道疾患の患者から得られた肺の細胞や気道上皮内層液において,超硫黄代謝物が減少していることを明らかにしている34, 35).これらの観察は,インフルエンザや新型コロナウイルス感染症を含むさまざまな疾病の酸化ストレス制御や硫黄呼吸によるエネルギー代謝の観点から,多様な生命現象における超硫黄分子の基盤的な役割と人類の生存戦略としての有益性を示している.

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図7 呼気超硫黄オミックス,非接触・空間オミックスの未来型呼気医療への展開

呼気オミックスを用いた無侵襲的な呼気医療は,日常生活のなかで健康状態を「さりげなく」モニタリングする医療技術として,先進的な未来型医療の展開につながるものと国内外から注目を浴びている.実際,超硫黄分子は生体内だけでなく居住空間を含めた自然環境に豊富に存在しており,ヒトを取り巻く超硫黄生態系という視点から,呼気や環境,ゲノム(遺伝子)といった各種オミックス解析情報のデータベースを構築することで,呼気医療による,心血管・肺疾患,生活習慣病,糖尿病などの代謝性疾患,がんなどの診断のみならず,超硫黄と呼気オミックスを活用した在宅での日常的な環境ストレスと健康モニタリングや健康管理・健康診断などの遠隔医療を通じて,未病・予防と長寿に資する個別化未来型医療の開発が期待される(図7).

9. おわりに

超硫黄分子の化学的特性から測定系を構築し,生体内生成機構を探索するなかで解明された,CARSの翻訳に共役した超硫黄代謝経路,超硫黄分子によるタンパク質劣化防止機構および機能制御についての最新の知見を紹介した.ミトコンドリアにおいて硫黄を使ってエネルギーを産生する「硫黄呼吸」の存在と,それによる老化防止・寿命延長を示す結果が蓄積されつつある3, 8, 20).実際,これまでまったく知られていなかった新規超硫黄分子代謝機構についての興味深い知見も得られてきている.たとえば,超硫黄分子が,これまで酸素分子が電子受容体とされてきた各種NADPH酸化還元酵素においても,むしろ分子状酸素より効率よく電子を受容すること,その結果,硫黄伸長・カテネーションが起こり細胞内で超硫黄の代謝維持を触媒していることもわかってきた.さらに,最新の研究により,天然にみられる環状の超硫黄分子であるS8(cyclo-octasulfur)が哺乳類・ヒトの生体内で積極的に産生されているという驚くべき事実も明らかになった.すなわち,超硫黄生物学の新たなパラダイムの創成が起爆剤となって,生命進化論や生命科学全般の幅広い領域に大きな革新の潮流が起こり始めている.

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著者紹介Author Profile

赤池 孝章(あかいけ たかあき)

東北大学大学院医学系研究科教授.医学博士.

略歴

1991年熊本大学大学院医学系研究科博士課程修了.同年同大学医学部助手.92年同大学医学部講師.93年トーマスジェファーソン医科大学客員教授.94年熊本大学医学部助教授.2001年アラバマ大学バーミングハム校客員教授.03~06年文部科学省研究振興局学術調査官.05年熊本大学大学院生命科学研究部微生物学分野教授.13年より東北大学大学院医学系研究科教授.19年より東北大学副医学部長・同医学系研究科副研究科長.

研究テーマと抱負

超硫黄生物学.

ウェブサイト

http://www.toxicosci.med.tohoku.ac.jp/index.html(東北大学大学院医学系研究科環境医学分野ホームページ),https://researchmap.jp/AkaikeT (Researchmap)

趣味

ミュージアム.

松永 哲郎(まつなが てつろう)

東北大学大学院医学系研究科環境医学分野助教.博士(農学).

略歴

2011年鳥取大学大学院連合農学研究科生物資源科学専攻修了.同年熊本大学大学院生命科学研究部(医学系)微生物学分野博士研究員.13年より東北大学大学院医学系研究科環境医学分野助教.

研究テーマと抱負

超硫黄分子によるミトコンドリアにおける硫黄呼吸の解析.

ウェブサイト

https://researchmap.jp/tetsuro_matsunaga (Researchmap)

趣味

読書.

高田 剛(たかた つよし)

東北大学大学院医学系研究科環境医学分野助教.薬学博士.

略歴

2014年昭和薬科大学大学院薬学研究科薬学専攻博士課程修了.14年昭和薬科大学薬理学研究室特任助教.19年東北大学大学院医学系研究科環境医学分野非常勤講師.同年東北大学大学院医学系研究科環境医学分野学術研究員.20年より東北大学大学院医学系研究科環境医学分野助教.

研究テーマと抱負

一酸化窒素合成酵素およびNADPHオキシダーゼによる新規超硫黄代謝機構の解明.

ウェブサイト

https://researchmap.jp/Takata_T (Researchmap)

趣味

家庭菜園.

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