Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 94(1): 14-25 (2022)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940014

総説Review

血管系疾患に潜むカルパインシステムの制御異常Pathogenic implication of vascular calpain systems

昭和大学医学部生化学講座Department of Biochemistry, SHOWA University School of Medicine ◇ 〒142–8555 東京都品川区旗の台1–5–8 ◇ 1–5–8 Hatanodai, Shinagawa-ku, Tokyo 142–8555, Japan

発行日:2022年2月25日Published: February 25, 2022
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カルパインはストレス依存的な細胞内プロテアーゼであり,限定的プロテオリシスを介して基質の活性や安定性を調節する.同分子は哺乳動物で15のホモログを有するスーパーファミリーを構成するが,中でも従来型カルパインに分類されるカルパイン-1および-2は,多種多様な分子病態学的研究で責任分子と位置づけられてきた.同分子は血管系疾患の分野でも網膜症や腫瘍血管を代表とする増殖性血管病変,ならびに動脈硬化症や動脈瘤に代表される変性疾患に関与することが報告されている.また,非従来型サブタイプであるカルパイン-6が,マクロファージのmRNA成熟に影響を及ぼし,動脈硬化症の原因となることが明らかとなった.本稿では,従来型カルパインおよびカルパイン-6に関する最新の知見を基に,上記疾患群の病理病態をとおしてカルパインシステムの作動原理を議論したい.

1. はじめに

カルパインは遺伝子内にCysPCモチーフを有するシステインプロテアーゼのスーパーファミリーを指す1).哺乳動物では15種のホモログが存在し,生体内での分布や病態生理学的な機能も多様であるが(表1),細胞内(基本的には細胞質)に局在するのは共通の性質と考えられる.これらの中で従来型アイソザイムに分類されるカルパイン-1および-2は特に知名度が高く,1970年代から世界中で酵素学,生理学,分子病態学などの領域をまたいでさまざまなアプローチで研究されてきた.従来型カルパインは発見当初からカルシウム感受性を持つことが知られており(カルパインの名称自体がカルシウムとパパインの造語),低酸素,メカニカルストレス,炎症性サイトカイン,ならびに成長因子などの細胞外ストレスにより細胞内カルシウム濃度上昇を介して活性が調節される2).従来型カルパインは特定のアミノ酸配列を認識するというわけではなく,その基質特異性はあまり高くない3).一方で基質内の切断部位は厳密であり,ウエスタンブロットで解析するとその断片はしばしば単一バンドとして検出される(限定的プロテオリシス)4, 5).カルパインにより断片化された基質タンパク質は,断片化前の完全長のタンパク質とは異なる生理活性や安定性を示す場合もある.その結果,カルパインによるタンパク質切断は基質タンパク質のバリエーションを生み出し,細胞機能に影響を及ぼすと考えられている.このような特徴から,従来型カルパインは多くの疾患において責任分子として解析されてきたが,上述のとおり活性化に関わる因子や基質が多岐にわたるため,その生理的機能を一義的に定義することは難しい.そのような事情から,本稿では少し病態を絞った形で,血管系疾患の原因分子としてのカルパインファミリーを議論したい.なお,カルパイン自体の分子生物学的側面やその阻害剤開発については,2016年に本誌に掲載された反町洋之先生の総説にわかりやすく詳説されているので5),そちらをご参照いただきたい.

表1 カルパインスーパーファミリーの体内分布と病態生理学的役割
分類分子種発現部位阻害物質結合サブユニット関連疾患文献
従来型カルパイン-1全身カルパスタチンカルパイン-s1血管系疾患等多数*36),13),22)*4
カルパイン-2全身カルパスタチンカルパイン-s1血管系疾患等多数*36),13),22)*4
非従来型カルパイン-3主に骨格筋カルパイン-3筋ジストロフィー88–91)
カルパイン-5全身硝子体網膜症95)
カルパイン-6胎盤—*1骨格筋過形成66)
骨格筋(胎児)動脈硬化症70)
心筋(胎児)
カルパイン-7全身
カルパイン-8消化管カルパスタチンカルパイン-9消化管出血92–94)
カルパイン-9消化管カルパスタチンカルパイン-8消化管出血92–94)
カルパイン-10全身2型糖尿病85–87)
カルパイン-11主に精巣
カルパイン-12主に毛包,皮膚魚鱗癬96)
カルパイン-13全身カルパイン-13*2
カルパイン-14主に食道食道炎97)
カルパイン-15全身
カルパイン-16主に精巣
*1もともとプロテアーゼ活性を持たない.*2リコンビナントタンパク質の実験から細胞内でもホモ二量体を形成すると推測されている.*3一例としては,網膜症,腫瘍血管新生,創傷治癒,動脈硬化症,大動脈解離などの疾患が挙げられる(本文参照).その他,脳梗塞,心筋梗塞,アルツハイマー型認知症などの変性疾患,ならびにがん細胞およびがん微小環境制御への関与も報告されている.*4疾患が多岐にわたるため関連総説をあげた.

2. 血管の発生におけるカルパインの寄与

大部分のカルパインアイソザイムについてはこれまでノックアウトマウスが作出されてきたが,その結果を参照する限り血管の発生において同分子群の寄与は小さいことが判明している6).発端として,2000年にCapns1(カルパイン-s1遺伝子)ノックアウトマウスが作出され,同マウスは胎生致死の表現型を呈した7).従来型のカルパイン-1および-2はそれぞれ同名の触媒サブユニットと共通の制御サブユニットであるカルパイン-s1とのヘテロ二量体で構成されており(図1),制御サブユニットを欠失した場合,触媒サブユニットの安定性は著しく低下することが知られる7).すなわち,Capns1ノックアウトマウスは従来型カルパインの活性を大部分喪失しており,上記の胎生致死の表現型は従来型カルパインが胎仔の生存に必須であることを示唆している.興味深いことに,上記論文では胎仔の血管形態に異常が報告されている.翌年にはCapn1(カルパイン-1遺伝子)欠損マウスが作出されたが,血小板機能(血餅の収縮異常)以外に表現型は認められなかった8).さらに2006年にはもう一方の触媒サブユニットであるCapn2(カルパイン-2遺伝子)ノックアウトマウスが胎生致死の表現型を呈することが報告された9).カルパイン-2はヒト臍帯静脈血管内皮細胞やマウス肺微小血管内皮細胞に高発現しており,遊走や管腔形成に関与すると考えられている.発生の段階で血管内皮成長因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)を代表とするカルパイン活性化因子が内皮細胞に作用することも考慮すると,この時点では従来型カルパインが血管の発生に関与すると考えていた研究者も多かったと思う.しかし,2011年に反証的な論文が報告された.すなわち,母体側のCapn2の発現をヘテロに維持した状態で,Cre/loxPシステムならびにMeox2プロモーターを用いて胎盤葉上層由来細胞(すなわち胎仔側のすべての細胞)においてCapn1およびCapn2を完全に欠損させた場合(すなわちMeox2Cre/+Capn1−/−Capn2−/flox),胎生致死の表現型は出現せず,胎仔側の血管形成にも異常は認められなかった10).さらに,Tie2プロモーターを用いて血管内皮細胞/マクロファージ特異的にCapn2を欠損したマウスにおいても胎仔は生存し,目立った血管系の異常は検出されなかった.一連の結果は従来型カルパインが母体の胎盤形成に関わることを強く示唆しており,一方で胎仔の血管発生における寄与は低いと解釈される.なお,我々もTie2プロモーターを用いてカルパインの内因性阻害因子カルパスタチンを血管内皮細胞とマクロファージに導入し,従来型カルパインの活性を低下させたマウスを作出したが,網膜血管網の発生や成獣における末梢臓器の血管網に形態的な異常は認められず11),上記結論を支持している.培養細胞との相違の理由は現在のところ不明であるが,カルパインが欠失した際に何らかの代償的機構が働いているか,または生理的条件下では予期しない活性化を防止する何らかのインターロック的機構が機能している可能性があげられる.

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図1 血管系疾患の責任分子としてのカルパインシステムとそのドメイン構造

カルパイン-1および-2は血管内皮細胞,血管平滑筋細胞,マクロファージなどに遍在し,成長因子,リゾリン脂質,アンジオテンシンIIなどの作用で活性化する.従来型カルパインは,血管線維化,大動脈解離,動脈硬化症を増悪することが知られる.内因性阻害タンパク質カルパスタチンは従来型カルパインを特異的に阻害するが,成長因子の作用で発現が低下する.特に血管内皮細胞におけるカルパスタチンの発現低下は,腫瘍血管ならびに網膜症などの増殖性血管病変に関与する.一方,カルパイン-6は生理的条件下で血管壁に存在しないが,骨髄から動脈硬化病変に動員された単球がマクロファージに分化する過程で誘導され,同細胞に動脈硬化原性を付与する.その活性化にはマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)およびTNF-αが関与している.CysPC:cysteine protease domain, calpain-type, PC1/2:protease core domain 1/2, CBSW:calpain-type β-sandwich domain, PEF:penta-EF-hand domain, GR:Gly-rich domain, C2:C2 domain.

3. カルパインは血管が病的な状態になると制御不全に陥る

我々を含めた循環器系のカルパイン研究者は,従来型カルパインが動脈硬化,動脈瘤,糖尿病性血管炎,網膜症,腫瘍血管など多種多様な血管系疾患に関わることを報告してきている12–14).同分子が発生段階の生理的な血管制御に関与しないことを勘案すると,上記疾患群では生体側の恒常性破綻による細胞外ストレスの増加が起点となり,血管でカルパインが制御不全に陥るとのシナリオも考えられる.従来型カルパインは内因性阻害因子のカルパスタチンとの発現バランスにより活性が制御されるので(図1),我々は星細胞腫,結腸腺がん,肺腺がんなどの腫瘍で形成される腫瘍血管と正常血管のカルパイン・カルパスタチン発現を検討した11).その結果,がん血管ではカルパスタチンの発現が低下していることが明らかとなった.腫瘍細胞は低酸素状態におかれるとVEGFを大量に産生し,血管内皮細胞を腫瘍組織に誘引することが知られているが,VEGF,上皮成長因子およびインスリン様成長因子などの成長因子はいずれも内皮細胞のカルパスタチン発現を負に制御することが判明した.成長因子自体は生理的な血管新生や血管発生においても主体的な役割を果たすので,腫瘍血管新生には付加的なファクターが存在すると考えた.腫瘍内には高濃度の炎症性サイトカインが存在しているが,これらのサイトカインは成長因子とは異なる機構を介して血管新生応答を促進する.そこで,炎症性サイトカインが上記ファクターとして機能するのではないかと考えた.培養血管内皮細胞にさまざまな炎症性サイトカインを負荷し,その感受性を検証したところ,IL-6のみカルパインの脱抑制により応答が亢進した.IL-6のシグナル伝達はJAK/STAT系(Janus kinase/signal transducer and activator of transcription)を介するため,関連分子の配列を精査したところ,同機構の内因性阻害因子のsuppressor of cytokine signaling(SOCS)にプロリン(P)グルタミン酸(E)セリン(S)トレオニン(T)に富むアミノ酸配列が保存されていることが判明した.PEST配列はタンパク質分解に関わるアミノ酸配列で,半減期が2時間以上の分子はほとんどの場合PEST配列を持たないとの報告もある.このようなタンパク質分解は,プロテアソームを主体として進行することがしばしば報告されているが15–17),カルパインもPEST配列を認識し,同配列が切断された場合,基質が不安定化した事例もある.たとえば,ATP結合カセット輸送体A1にもPEST配列が存在するが,カルパインにより同部位が切断されると不安定化し,最終的には分解される18).我々がSOCS3のアラニン変異体を作製して酵素実験でカルパイン感受性を検討したところ,多くの変異体がカルパインにより分解されるなかで,一部のPEST変異体はカルパイン耐性を呈した.このカルパイン耐性SOCS3を培養血管内皮細胞に強制発現させたところ,カルパイン感受性の変異体と比べてIL-6誘発性の管腔形成を阻害する活性が高かったため,カルパインによるSOCS3分解がサイトカイン誘発性血管新生の閾値になっていると考えている.まとめると,成長因子の作用により脱抑制された従来型カルパインがSOCS3を切断・不安定化し,結果としてIL-6シグナルを増感するので,成長因子シグナルと並行する形で血管新生が過剰になると考えられる(図2A).なお,この現象はマウス担がんモデルおよび酸素誘発性網膜症モデルにてin vivoでも再現されており,内皮細胞におけるカルパスタチンの導入は結果として腫瘍血管の形成や網膜血管の過剰形成を改善することも判明している.このように,従来型カルパインは細胞外部の環境に依存して活性化した場合のみ,血管制御に関与すると考えられる.網膜症19, 20)やがんの発症進展21, 22)は,薬理学的阻害剤の投与によっても阻害することが可能であり,カルパイン阻害剤は上記疾患の治療薬としても応用可能ではないかと推測される.

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図2 血管系疾患におけるカルパインシステムの作動原理

(A)病的血管新生における血管内皮カルパインの役割.VEGF-Aの作用でカルパスタチンの発現が低下し,従来型カルパインが脱抑制されると,JAK/STAT系の内因性阻害分子SOCS3が不安定化・分解される.その結果として,環境中の炎症性サイトカイン(特にIL-6が想定される)に過剰に反応し,血管新生シグナルが重複することで,病的血管新生が引き起こされる.(B)創傷治癒における血管内皮カルパインの役割.創傷治癒に伴う血管新生の際にもカルパスタチンの発現低下が認められるが,環境中に炎症性サイトカインが存在しないため,血管新生は過剰にならない.一方で,血管内皮カルパインは,PDGF-BBシグナルを介して筋線維芽細胞の分化誘導を亢進させ,創傷治癒に伴う線維化反応の維持に寄与している.(C)動脈硬化症におけるカルパインの役割.血管内皮カルパインは内皮細胞間接着の責任分子であるVE-カドヘリンの傍細胞膜部位を切断し,血管内皮バリアを不安定化する.結果として,動脈硬化病変へのマクロファージ動員が増加する.一方,非従来型のカルパイン-6はマクロファージ細胞質にてCWC22を捕捉し,結果としてmRNAスプライシングを低下させる.Rac1スプライシング異常により,細胞内の飲胞の交通ならびにリサイクルが低下し,飲作用(ピノサイトーシス)による非変性LDLの細胞内貯留が増加することで,動脈硬化症が進展する.(D)アンジオテンシンIIによる血管老化におけるカルパインの役割.血管平滑筋カルパインは,アンジオテンシンIIによるNF-κBシグナルの亢進,細胞骨格系の断片化,ならびに細胞外マトリクス分解系を促進し,血管断裂に寄与する.VEGF:vascular endothelial growth factor, SOCS3:suppressor of cytokine signaling 3, JAK/STAT:Janus kinase/signal transducer and activator of transcription, PDGF:platelet-derived growth factor, MMP:matrix metalloproteinase, TNF-α:tumor necrosis factor-α, M-CSF:macrophage colony-stimulating factor, eIF4A3:eukaryotic initiation factor 4A3, IκB:inhibitor of κB, NF-κB:nuclear factor-κB.

生理的な状態で造成された血管は血管内皮細胞の周囲に周皮細胞や細胞外マトリクスの裏打ちが形成されることで成熟する23, 24).腫瘍血管や網膜症の毛細血管瘤は血管新生応答が収束せず,未成熟な状態が維持されるため,異常な血管網が形成される.がんや網膜症と異なり,創傷治癒において炎症は厳密に制御されており,修復の後期に血管新生が亢進する際には炎症応答が収束し,最終的には成熟した血管網が再構築される25).我々はこの点に着目し,マウス創傷治癒モデルにてカルパインの生理的血管新生への寄与を評価した.Tie2プロモーターを用いて血管内皮細胞にカルパスタチンを導入したところ,創傷治癒の遅延が検出されたが,新生血管の密度や組織中の血管マーカーCd31の発現量に変化は認められず,生理的血管新生における血管内皮従来型カルパインの寄与は小さいと解釈された26).なお,この創傷治癒の遅延は,血管内皮細胞のカルパインが,同細胞のPDGF産生を起点として線維芽細胞の線維化応答を亢進することに起因する(図2B).一方で,全身的なカルパスタチンの導入により,創傷治癒に伴う血管新生が低下するとの報告もあり27),カルパインが血管内皮細胞以外に由来する何らかの血管新生制御因子を調節する可能性は否定できず,この点は検討の余地があると考えられる.まとめると,血管内皮の従来型カルパインは成長因子を主体とする生理的血管新生に対する寄与は小さいが,血管新生が進行する際に導入因子が重複し過剰になると活性化し,正常な血管形成を妨げると考えられる.

4. カルパインは血管の老化に関与する

血管の病態にはさまざまな分類があるが,前述した腫瘍血管や網膜症のような増殖性の病態と,線維化のような変性を伴う病態に区別することができる.従来型カルパインは後者にも寄与すると考えられており,実際これまでに動物実験を主体とした多数の報告がある.比較的古いものとして,2003年に高血糖による微小血管炎を検討した事例がある28).ラットにD-グルコースを投与すると,微小血管にて血管壁への白血球の接着や接着因子ICAM-1・VCAM-1の発現上昇が認められたが,これらはカルパイン阻害剤の投与で改善した.同時に,阻害剤により血管内皮由来の一酸化窒素合成酵素の安定性が改善したので,従来型カルパインが一酸化窒素の産生を負に制御することで血管炎が増悪したと考察されている.同じ研究グループから糖尿病モデルラット(Zucker diabetic fatty rat)においてもカルパインによる一酸化窒素の産生低下が報告されている29).血中グルコース濃度の増加は血管内皮細胞の細胞内カルシウム濃度を上昇させるため30),糖尿病において同分子が過剰亢進するとの解釈には合理性がある.興味深いことに,高血糖誘発性のカルパイン活性化は,2型糖尿病患者で高値を示すホモシステインの作用でさらに増強される31).ホモシステインは冠動脈疾患のリスク因子であることから32),従来型カルパインは糖尿病における冠動脈疾患の合併を説明する鍵になる可能性がある.

粥状動脈硬化症は冠動脈疾患の直接的なリスク因子であり,血管老化の指標の一つでもある.動脈硬化プラークの病理的な特徴としては内膜の肥厚があげられ,病変が進行するとコレステロールの沈着,石灰化ならびに死細胞コアを伴うようになる33).このような病理像は,脂質異常症(特に高LDLコレステロール血症)を発端として血管内膜でマクロファージが泡沫化され,やがて同細胞は死に至り,細胞中のコレステロールがそのまま血管壁に沈着することに起因する.病変内のマクロファージやコレステロールの量はプラーク安定性の指標と考えられており,不安定プラークは剥離して塞栓症を引き起こし,冠動脈疾患を誘発する.動脈硬化症の研究領域では現在でもこのような古典的な学説が支持されているが,ここ10年は炎症や免疫系を中心に研究が進んできた.中でも抗IL-1β抗体であるカナキヌマブ(Canakinumab)を用いたCanakinumab ANtiinflammatory Thrombosis Outcome Study(CANTOS)試験の成功で,2000年前後から提唱されてきた動脈硬化症を血管炎として解釈する一連の研究が結実した34).前述のとおり動脈硬化症は血管内膜にマクロファージが浸潤することで発症すると考えられているが,これが血中の単球に由来する場合は内膜表層の血管内皮細胞のバリアを通過する必要がある.血管内皮細胞は上皮様の単層構造を呈し,その細胞間には大きく分けて三つの様式の細胞間ジャンクション,すなわち1)アドヒアランスジャンクション,2)タイトジャンクション,3)ギャップジャンクションが形成される35).これらの結合様式の中で,バリア機能に関わるのはアドヒアランスジャンクションとタイトジャンクションであり,前者は主に末梢の血管,後者は血液脳関門でのバリア形成に寄与すると考えられている36).アドヒアランスジャンクションは隣り合った細胞の血管内皮型(VE)-カドヘリンがホモフィリックに結合することで構成される37).カドヘリンファミリーは発現する細胞種によって多様なサブタイプが存在するが,我々が動脈硬化の検討に着手した時点では,少なくとも上皮型(E)-カドヘリン38)および神経型(N)-カドヘリン39)が従来型カルパイン感受性であることが報告されていた.そこで,我々はカルパインが末梢の血管にてVE-カドヘリンを切断し,内皮バリアの破綻を誘発するとの作業仮説を立て,酵素実験を行った40).VE-カドヘリンのリコンビナントタンパク質にカルパイン-2を加えると,完全長VE-カドヘリン(125 kDa)の直下に95 kDaおよび30 kDaのフラグメントが検出された.この95 kDaフラグメントは,Ldlr欠損マウスの大動脈でも検出され,高コレステロール血症の発症に伴い増加したが,さらにマウスにカルパイン阻害剤カルペプチンならびにALLMを投与することで減少した.VE-カドヘリンは1回膜貫通型の膜タンパク質であるが,エピトープマッピングを行ったところ切断部位は膜直下に絞り込まれた.同部位に対応するアラニン変異体を複数作製したところ,このうちの一つが酵素実験にてカルパイン耐性を示した.カルパイン耐性VE-カドヘリンを血管内皮細胞に導入したところ,カルパイン感受性の対象で検出されるカルパイン依存的なアドヒアランスジャンクションの崩壊や内皮バリアの機能低下は認められなかった.一連の結果から,カルパイン-2はVE-カドヘリンの傍細胞膜部位を切断し,アドヒアランスジャンクションを不安定化することで,内皮バリアを低下させると解釈している(図2C).カルパインによるVE-カドヘリンの切断・分解についてはいくつかの研究グループにより再現されている41–44).たとえば,肺血管内皮細胞においてカルパインがVE-カドヘリンを切断するが,これは肺血管透過性亢進42)や,内皮細胞の鉄依存性細胞死(フェロトーシス)43)の原因になると考えられている.また,TGF-β1刺激の負荷でも血管内皮細胞においてカルパイン依存的なVE-カドヘリンの切断が検出される場合があるが,これは内皮–間葉系形質転換に寄与するようだ44).このように,カルパインによるVE-カドヘリン切断は,さまざまな病態生理学的な局面で血管内皮細胞の機能を定義することが判明している.

上述のとおり血管内皮の従来型カルパインは病的な環境で過剰に活性化し,さまざまな血管系疾患を引き起こすが,動脈硬化症の場合の導入因子は明らかになっていなかった.動脈硬化症の主要な原因の一つに高LDL血症があるが,これは単にLDLの量が増えることだけが問題ではなく,同複合タンパク質に含まれるリン脂質の組成も発症リスクに影響する45, 46).酸化ストレスやホスホリパーゼなどの酵素によりLDLが変性を受けると,リン脂質の片方のアシル基が脱落し,リゾリン脂質が形成される47).一部のリゾリン脂質は血管内皮細胞において活性を示すことが知られていることから48, 49),我々は血管内皮細胞において従来型カルパインに対する酸化ストレス誘発性ならびに分泌性ホスホリパーゼA2誘発性変性LDLの作用を検討した40).これらの変性LDLを培養血管内皮細胞に負荷したところ,カルパイン-2の発現誘導が認められたが,カルパイン-1およびカルパスタチンの発現変動は認められなかった.このような発現パターンは,病的血管新生のようなカルパスタチンが低下する脱抑制とは異なるが,カルパイン/カルパスタチン比の不均衡がカルパインの活性化を招いたと解釈している.免疫組織化学的アプローチでも検討したところ,健常マウスおよびヒト大動脈においてカルパイン-2の組織内の偏りは認められなかったが,重症度の高い動脈硬化病変において血管内皮細胞において発現増加が確認された.なお,我々を含む複数の研究グループは,動物実験を用いてカルパイン阻害剤が動脈硬化症の進展抑制に有効であるが,脂質異常症は改善しないことを報告しており40, 50–52),これは従来型カルパインによる動脈硬化促進作用は血管壁の側に原因があることを示唆している.脂質異常症治療薬のシンバスタチンの作用でカルパイン活性が低下することも報告されており53, 54),カルパインはスタチンの血管保護作用を説明する理由になるかもしれない.

血管の老化に関わる主要な因子の一つとしてアンジオテンシンIIが知られているが,このような生理活性ペプチドの応答にも従来型カルパインが関与すると考えられている.アンジオテンシンIIはレニン–アンジオテンシン系の亢進により分泌され血圧の維持に寄与することが有名であるが,慢性的な血中濃度の増加は血管壁にて血管平滑筋の線維化を引き起こし,血管硬度(vascular stiffness)の増加によりむしろ血圧コントロールを低下させる55).たとえば,細動脈において血流量の増加は血管内皮細胞からの一酸化窒素の産生を促し,血管容量を増加させて圧を緩和するが56),血管の線維化は血管平滑筋の拡張能を低下させて圧の緩和を妨げる57).アンジオテンシンIIは血管肥厚を引き起こすが,この際,血管内腔では平滑筋の異常増殖に起因する血管中膜の肥厚による同心性の狭窄を伴い,これは粥状動脈硬化症の病理像とは明らかに異なる.過去の報告から,全身的なカルパスタチンの導入はアンジオテンシンII誘発性の血管線維化を改善することが知られている58).同時に,血管平滑筋の増殖型への形質変換も抑制するので,アンジオテンシンII誘発性の血管肥厚も改善される.逆に,カルパイン-1の導入は加齢性の血管線維化と石灰化を促進させると報告されている59).分子機構に関しては不明な点も多いが,カルパスタチン導入により血管平滑筋において転写因子である核内因子κB(NF-κB)およびnuclear factor of activated T-cells(NFAT)の活性が低下し,その結果として同分子が支配する細胞外マトリクスのターンオーバーが制限されると考察されている(図2D).なお,NF-κBの活性調節は,従来型カルパインが同分子の内因性阻害因子であるκB阻害因子の切断分解に寄与するとの過去の報告を参照すると合理性がある60).興味深いことに,κB阻害因子もPEST配列を有しており,これが分解に寄与すると考えられている61).上述の血管線維症モデルはマウスにアンジオテンシンIIを数週間持続投与することで作製されるが,脂質異常症モデルのApoe欠損マウスやLdlr欠損マウスに同様のストレスを負荷するとしばしば大動脈解離が観察されるようになる[同モデルは米国で患者数の多い大動脈瘤(aortic aneurysms)と表記される場合が多いが,実際には血管の断裂(dissection)を伴う場合が多い].カルパインの薬理学的阻害剤ALLNの投与はこのような大動脈解離を改善することが知られており,その薬理学的メカニズムとしては上述の血管線維化モデルと同様にNF-κBを介する細胞外マトリクス分解系の活性低下が原因と考察されている52).この場合の責任細胞については海外のグループがさまざまなカルパインのコンディショナルノックアウトマウスを駆使して検討しており,血管平滑筋カルパインによるフィラミンAおよびタリンなどの細胞骨格系タンパク質の断片化ならびに細胞外マトリクス分解系の亢進が血管の剛性を低下させるが(図2D),マクロファージなどの骨髄由来細胞の寄与は小さいとの結論に至っている62, 63).なお,同様に大動脈解離を発症する遺伝性疾患マルファン症候群の病変部におけるプロテオミクス解析でも,カルパイン-2の発現増加が報告されている64).まとめると,カルパインは高血糖,高コレステロール血漿,ならびにレニン–アンジオテンシンの亢進など生活習慣病のリスク因子の下流で活性化もしくは発現が増加し,血管の老化を促進する働きがあると考えられる.したがって,カルパイン阻害剤は血管のアンチエイジングに有用ではないかと推測している.

5. カルパイン-6は血管マクロファージの運命を左右する

これまで従来型カルパインによる血管制御として,血管内皮細胞や血管平滑筋の機能を中心に概説してきたが,特に動脈硬化症の病理病態を説明する上ではマクロファージなどの免疫系の細胞も重要である.我々は,カルパイン-6がユニークな機構を介して動脈硬化症やマクロファージ形質を制御することを明らかにしてきた.カルパイン-6は非従来型のカルパインに分類され,CysPCドメインの活性中心に存在するシステイン残基がリシンに置換されているので,プロテアーゼ活性を持たない(図1).分子構造も従来型カルパインとは異なっており,制御性サブユニットと結合するpenta-EF-hand(PEF)ドメインを持たず65),ヘテロ二量体型は報告されていない.発現分布も非常に独特で,マウスにおける解析から胎生期の骨格筋および心筋に発現することが明らかとなっているが66),これは出生後に消失すると考えられており,持続的に発現するのは胎盤のみと考えられている67).カルパイン-6欠損マウスは出生後も骨格筋容量の増加や,損傷骨格筋の修復促進が報告されており66),発生段階で骨格筋に何らかの機能を付与する可能性がある.このように,カルパイン-6は「発生段階のみで機能するカルパイン」と解釈されてきたが,実は細胞レベルでみると出生後も発現が検出される事例がある.たとえば,骨髄由来細胞には本来カルパイン-6は発現していないが,マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)およびNF-κB活性化受容体リガンド(RANKL)の刺激で同細胞群から破骨細胞が分化誘導される際に発現増加が報告されている68).また,がん幹細胞に低酸素刺激を負荷すると,幹細胞多能性因子Oct-4, Nanog, Sox2を介してカルパイン-6が誘導され,同細胞の老化の進行を軽減するとの報告もある69).我々は骨髄由来細胞にてカルパイン-6を誘導できるRANKL以外のサイトカインを探索した.その結果,同細胞にM-CSFとTNF-αを同時に負荷すると,培養3日前後でカルパイン-6タンパク質の発現が検出された70).動脈硬化モデルマウスおよびヒト動脈硬化病変にて免疫組織化学的検討を行ったところ,カルパイン-6は泡沫化して肥大化したマクロファージに強く発現したが,比較的重症度の低い組織では検出されなかった.動脈硬化モデルマウスで単球の挙動を追跡したところ,動脈硬化病変に動員された直後の単球にはカルパイン-6は発現しておらず,病変内で誘導されることが明らかとなった(図2C).そこで,動脈硬化モデルマウスLdlr欠損マウスとCapn6欠損マウスを交配し,二重欠損マウスを作出した.同マウスで高コレステロール食負荷により脂質異常症を誘発したところ,野生型と比べて動脈硬化の形成が抑制されることが判明した.骨髄由来細胞の寄与を検証する目的で,カルパイン-6の骨髄キメラマウスを作製したところ,全身的な欠損マウスと同様の表現型が再現されたため,マクロファージに発現しているカルパイン-6が実際に機能しているものと解釈した.

このように,カルパイン-6が動脈硬化症を制御することは明らかとなったが,いかなる分子機構が介在するのか不明瞭であった.カルパイン-6はプロテアーゼ活性を持たず,従来型カルパインのように生理活性タンパク質をプロセシングするようなシナリオは描けないため,分子機構としてはタンパク質間の相互作用が想定される場合が多い.過去の報告では,カルパイン-6が微小管の安定化に関与するとの報告がなされている71).実際,カルパイン-6はRho GTPaseの制御因子であるGEF-H1を捕捉し,微小管上で共局在して細胞骨格を安定化させるが,カルパイン-6をノックダウンすると微小管が不安定化し,細胞質にリリースされたGEF-H1が細胞の可動性を亢進する.我々は骨髄細胞から誘導したカルパイン-6陽性マクロファージにて検討を行い,同分子の欠損がマクロファージの遊走も促進することを明らかとした.この際,Rho GTPaseの発現を検討したところ,Rac1のタンパク質発現がカルパイン-6の発現と負の相関を示す傾向が見いだされた.このようなRac1の発現抑制はDNAアレイや定量的PCRによって検証したRac1のmRNA発現とは挙動が一致せず,単に転写調節の結果を反映するものではないと想定された.そこで,カルパイン-6が転写因子以外の制御因子と相互作用していると考え,カルパイン-6免疫沈降物のプロテオミクス解析を行った.その結果,いくつかの結合タンパク質が検出されたが,中でも我々が着目したのはcomplexed with CEF1 protein 22(CWC22)と称されるスプライシングファクターであった.スプライシングファクターであれば,mRNAの量的変化を介さずにタンパク質発現に影響を及ぼす可能性があると考えたからである.このCWC22は,mRNAスプライシングの初期の段階でエクソン接合部複合体のメンバーでDEAD-boxヘリカーゼの一種であるeIF4A3を未成熟mRNAに結合させる輸送タンパク質と考えられており72),eIF4A3がmRNAの構造変化を引き起こすことでスプライソソームによるmRNAプロセシングが進行すると考えられる73).実際,CWC22をノックダウンするとスプライシング効率が大きく低下することも報告されている74).我々の検討では,骨髄由来マクロファージにおいてカルパイン-6欠損により回復したRac1タンパク質は,CWC22のノックダウンにより再び発現低下に転じた70).なお,マウスRac1には完全長(米国立生物工学情報センターデータベースでisoform1と定義)以外に第4エクソンを欠失するスプライスバリアント(同データベースでisoform2と定義)が報告されている.骨髄由来マクロファージにおけるTNF-α刺激はisoform1およびisoform2のmRNA発現比を低下させたが,カルパイン-6欠損によりこの比率が正常化したため,Rac1のスプライシング調節にCWC22が寄与すると解釈した.上記のmRNA代謝制御に加え,カルパイン-6はCWC22の細胞内挙動にも影響を及ぼすことが明らかとなった.実際,TNF-α存在下で分化誘導した骨髄由来マクロファージではCWC22の局在は細胞質が主体となるが,カルパイン-6の欠損により核局在が顕著になった.このようなカルパイン-6欠損によるCWC22核局在はマウス動脈硬化病変の泡沫化マクロファージでも認められた.さらに,ヒトでは重症度の高い動脈硬化病変(すなわちマクロファージでのカルパイン-6発現が高い症例)では,マクロファージのCWC22が細胞質型の局在パターンを呈することも判明している.一方,CWC22の生理作用も検討すべく,我々はゲノム編集を用いてCwc22欠損マウスを作出したが,ホモ接合型は胎生致死の表現型を呈した(未発表データ).ヘテロ接合型にてLDL受容体(Ldlr)を欠損させ,動脈硬化症を誘発すると,野生型よりも病変形成が促進する傾向があった(未発表データ).したがって,カルパイン-6に起因するマクロファージの動脈硬化促進作用の少なくとも一部は,CWC22によるスプライシング調節異常が原因と解釈している(図2C).

ここまでカルパイン-6がmRNAスプライシング異常を介してマクロファージの運動性を促進することを概説してきたが,このような細胞動態だけでカルパイン-6欠損の抗動脈硬化作用を説明するのは難しい.我々は,動脈硬化症においてしばしばセントラルドグマのように説明されるマクロファージのコレステロール代謝に着目した.マクロファージがLDLコレステロールを取り込む際に主要な役割を担うのはクラスAスカベンジャー受容体やCD36であるが75),発現解析の結果カルパイン-6はこれらの受容体の発現には寄与していなかった.実際,骨髄由来マクロファージにおいて酸化LDLの取り込みを検討したが,野生型とカルパイン-6欠損マクロファージの間に差異は認められなかった.一方,同細胞に高濃度の非変性LDLを負荷したところ,カルパイン-6の欠損でコレステロール取り込みが低下した.この現象は,カルパイン-6が受容体を介さない非特異的な非変性LDLの取り込み,すなわち「飲作用」に寄与することを示している.飲作用はエンドサイトーシスの一種で,細胞膜の自発的な陥入により,細胞が細胞周囲の微粒子を水と同時に取り込む現象であり76, 77),細胞骨格や細胞動態を制御するカルパイン-6の性質ともよく符合する.なお,カルパイン-6欠損マクロファージにて低下した飲作用は,さらにRac1をノックダウンすることで回復させることが可能であったため70),カルパイン-6欠損はRac1を介して飲作用を抑制すると考えられる.飲作用により生じる飲胞をラベルし,細胞内の移動速度を定量したところ,カルパイン-6の欠損により減速したため,同分子は飲胞の細胞内交通に関与するものと考えられる.飲胞も他のエンドソームと同様に,発現するRabタンパク質によりその機能が定義されるが78),カルパイン-6の欠損により飲胞におけるリサイクリングエンドソームマーカーRab11の発現が亢進し,一方で前期エンドソームマーカーのRab5やリソソームマーカーの発現は低下した70).前述のLDL取り込み実験の結果も踏まえて,カルパイン-6欠損マクロファージではエンドソームのリサイクル,すなわち細胞外へのリークが亢進しており,リソソームを経由するLDLの細胞内貯留が妨げられていると解釈される.飲作用活性はLdlr欠損マウスの動脈硬化病変でも蛍光ナノ粒子の取り込みとして検出可能であるが79),マクロファージ飲作用活性はin vivoにおいてもカルパイン-6欠損により低下した70).動脈硬化症をカルパイン-6関連疾患としてまとめると,同分子は単球が動脈硬化病変に動員された段階でTNF-αの作用により誘導され,これが細胞質でCWC22を捕捉することでRac1のスプライシングを阻害し,結果として同細胞の飲作用を亢進すると考えられる.飲作用を介して取り込まれた非変性LDLがマクロファージの泡沫化を促進し,動脈硬化病変を肥大化すると考えられる(図2C).泡沫化の原因として飲作用を検討する事例は現状では一部に限られているが,比較的低濃度(50~100 µmol/L)で飽和してしまう受容体依存的な酸化LDL取り込みに対して,細胞外濃度に比例して直線的に増加する飲作用の方が高濃度LDLを含有する動脈硬化病変の特徴を反映しやすいとの解釈も存在する80).また,生体内の酸化LDLの量を実際に定量すると,培養マクロファージの泡沫化に要する量に満たないとの報告もあり81),今後は動脈硬化症の病態を理解する上で飲作用の解析も必要ではないかと考える.

これまでスプライシング異常は遺伝性疾患(スプライソパチー)ならびに悪性腫瘍の領域で議論される場合が多く82),制御因子や責任遺伝子の突然変異に起因すると考えるのが一般的である.代謝性疾患の領域でも,次世代シーケンスの機能向上に伴いスプライスバリアントが検討されるようになったが,同疾患群は非遺伝的要因の寄与が大きいため,必ずしもメインストリームではなかった.我々はスプライシング制御因子であるCWC22がカルパイン-6発現の影響を受けることを解明し,これが代謝性疾患である動脈硬化の原因となりうることを証明した.この結果は,遺伝子変異に起因しない「後天的なスプライシング異常」が存在し,これが生活習慣病の直接的な原因となる可能性を示している.後天的スプライシング異常は,制御因子自体は正常であることから介入の余地があると想定され,今後応用も視野に入れて検討を続けていきたい.

6. おわりに

本稿では血管における従来型カルパインの役割に焦点を当てたが,同分子は他の多種多様な疾患でも責任分子として報告されている6, 22, 83, 84).これらの中で,神経変性疾患や脳梗塞など細胞死が伴うような病態では,カルシウム依存的な細胞変性を仲介する分子として比較的単純に定義することができる.一方で,血管系疾患に多い慢性疾患では,病態の遷延化に伴い反応機構が複雑化するためか,現在でも明確な病態生理学上の定義はなされていない.また,カルパインの表現型は多数の基質制御の総体として現れると解釈できるが,最近報告されている多くの研究が表現型に沿った形で単一(もしくは2種か3種程度)の基質を調査する内容に落とし込まれており,少なからずパターン化されてしまっているような印象がある.もちろんショットガンプロテオミクス解析のような形で基質の安定性を検討することは可能であるが,この手法はカルパインの特徴である「限定的プロテオリシス」を必ずしも反映していない点には注意が必要である.今後,基質断片を網羅解析するプロテオーム技術およびバイオインフォマティクス技術が開発されれば,従来型カルパインを含む限定分解酵素はあらたな局面を迎えると期待する.一方,本稿では非従来型カルパイン-6も取り扱ったが,名称はカルパインであるものの,その挙動や機能は従来型と大きく異なっている.非従来型については,2型糖尿病特有の一塩基多型が検出されるカルパイン-1085–87),肢帯型筋ジストロフィー2A型の責任遺伝子産物と考えられているカルパイン-388–91),ならびに消化管特異的な発現を示すカルパイン-8,-992–94)の解析は比較的進んでいるが(表1),その他のアイソザイムについてはまだ報告は少ない.特に非従来型については今後思わぬ発見があるのではないかと期待している.

謝辞Acknowledgments

本研究はリソースの提供や測定などの面で多くの研究者に支えられてきました.スペースの関係で全員お名前をご紹介できませんが,共同研究していただいた先生方,大学院生・教室員の皆様にこの場を借りて深謝いたします.特に,本稿で紹介したカルパインの分子的基盤の大部分は著者(宮崎拓郎)が共同研究を通して反町洋之先生(東京都医学総合研究所,2018年1月逝去)からご教授いただいたものです.故反町先生には研究支援の面でもいろいろとお心遣いいただき,あらためて御礼申し上げる次第です.また,村上誠先生(東京大学疾患生命工学センター)と同研究室の武富芳隆先生には著者(宮崎拓郎)が駆け出しのころから研究支援や脂質解析に関するアドバイスをいただいております.この場を借りて心より御礼申し上げます.

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著者紹介Author Profile

宮崎 拓郎(みやざき たくろう)

昭和大学医学部生化学講座 准教授.博士(薬学).

略歴

1976年に岡山県に生る.99年昭和大学薬学部卒業,2001年同大学院薬学研究科修了,04年昭和大学RI共同研究室技術員,09年博士(薬学),11年昭和大学医学部生化学講座助教,15年同講師,19年より現職.

研究テーマと抱負

カルパインファミリーを標的として,主に循環器・代謝系疾患の解析をおこなってきました.現在は,カルパイン-6のmRNAスプライシング制御を中心に検討を続けています.分子の新しい作動原理に興味があります.

ウェブサイト

http://www10.showa-u.ac.jp/~biochem/Takuro_Miyazaki/Takuro_Miyazaki.html

趣味

犬の散歩とラーメン屋巡り.

宮崎 章(みやざき あきら)

昭和大学医学部生化学講座 教授.医学博士.

略歴

1958年熊本市生れ,84年熊本大学医学部卒,91年医学博士,92年熊本大学医学部生化学第二講座助手,95~97年米国ダートマス大学医学部留学,98年熊本大学講師,2002年より現職.

研究テーマと抱負

コレステロール・リポタンパク質代謝,動脈硬化の分子機構.健康に留意して,2024年3月の定年まで穏やかに過ごしたいと思います.

趣味

B級グルメ.

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