Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 94(2): 218-229 (2022)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940218

特集Special Review

寄生虫ミトコンドリアの多様な代謝系抗寄生虫薬開発からミトコンドリア病の解析までDiversity of mitochondrial metabolism from parasites: From drug development to tool for analysis of mitochondria diseases

1長崎大学熱帯医学研究所シオノギグローバル感染症連携部門分子感染ダイナミックス解析分野Department of Molecular Infection Dynamics, Institute of Tropical Medicine (NEKKEN) ◇ 〒852–8523 長崎県長崎市坂本1–12–4 ◇ 1–12–4 Sakamoto, Nagasaki 852–8523, Japan

2長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科School of Tropical Medicine and Global Health, Nagasaki University ◇ 〒852–8523 長崎県長崎市坂本1–12–4 ◇ 1–12–4 Sakamoto, Nagasaki 852–8523, Japan

3東京大学大学院医学系研究科生物医化学教室Department of Biomedical Chemistry, The University of Tokyo ◇ 〒113–0033 東京都文京区本郷7–3–1 ◇ 7–3–1 Hongo, Bunkyo-ku, Tokyo 113–0033, Japan

4長崎大学熱帯医学研究所宿主病態解析部門感染生化学分野Department of Host-Defense Biochemistry, Institute of Tropical Medicine (NEKKEN) ◇ 〒852–8523 長崎県長崎市坂本1–12–4 ◇ 1–12–4 Sakamoto, Nagasaki 852–8523, Japan

発行日:2022年4月25日Published: April 25, 2022
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寄生虫のエネルギー代謝経路は多様であり,各宿主内の寄生環境部位の炭素源と酸素濃度の変化に伴いエネルギー代謝経路を巧妙に変化させ,環境に適応している.その中でも特にミトコンドリアを中心としたエネルギー代謝経路は重要な役割を担っている.このような観点から,ミトコンドリア機能は,還元力のエントリーポイントである脱水素酵素群の「上流経路」,ユビキノン(Q)プール,最終電子受容体に電子伝達を行う「下流経路」(ここまでを合わせて「呼吸鎖電子伝達系」と呼ばれる)と,酸化的リン酸化・基質レベルのリン酸化による「ATP合成」に分けられる(図1参照).本稿では,寄生虫が生活環を維持するためにきわめて重要なミトコンドリア機能の多様性を解説し,さらに宿主とは異なるミトコンドリアが格好の創薬標的になること,そしてこの「特性」を利用して進めているミトコンドリア病の発症機構に関する研究を紹介したい.

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