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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 94(3): 329-340 (2022)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940329

総説Review

脂質由来ラジカル・酸化リン脂質の検出と構造解析Detection and structural analysis of lipid-derived radicals and oxidized phospholipids

九州大学大学院薬学研究院Faculty of Pharmaceutical Sciences, Kyushu University ◇ 〒812–8582 福岡市東区馬出3–1–1 ◇ 3–1–1 Maidashi, Higashi-ku, Fukuoka 812–8582, Japan

発行日:2022年6月25日Published: June 25, 2022
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最近,酸化リン脂質が注目されている.リン脂質内の不飽和脂肪酸は,容易に酸化され酸化リン脂質を生成する.あまりにも容易に酸化されるため,これらは単なる副生成物,あるいは不飽和脂肪酸は酸化反応に対する単なるバッファーとも考えられてきた.しかし,最近になって,酸化リン脂質およびその代謝産物が炎症反応などに関与している可能性が報告され,特に,2012年に提唱された細胞死「フェロトーシス」の原因分子として考えられたことで,ますます注目されている.しかしながら,これら酸化リン脂質は反応性が高いために適切に測定する技術が制限されていた.研究を加速するには,やはり分子そのものの検出が必要不可欠であろう.そこで本稿では,脂質過酸化反応の連鎖反応中心である脂質由来ラジカルの検出と構造解析,ならびに酸化リン脂質に対する構造解析技術について記載する.

1. はじめに

リン脂質やその代謝産物は,生体内で細胞膜の構成成分として,さらには代謝,シグナル伝達調節に関わる因子などとして,生体内機能維持に重要な役割を果たしている.一方で,リン脂質内に含まれる多価不飽和脂肪酸は,二重結合に挟まれたメチレン基を有するために,細胞小器官で発生する活性酸素や,細胞外のさまざまな要因により容易に酸化され,酸化リン脂質(oxPLs)を生成する.これまで,不飽和脂肪酸があまりにも容易に酸化されることから,酸化リン脂質は酸化障害の結果生じた単なる副生成物,あるいは不飽和脂肪酸は酸化障害のバッファーであるとも考えられてきた.しかし最近になって,これら酸化リン脂質やその代謝産物が炎症反応やさまざまな疾患の原因分子として作用することが報告され始めている.たとえば,脂質過酸化反応依存的な新たな細胞死機序「フェロトーシス」が2012年に報告された1).本細胞死は,脂質過酸化物と遊離鉄の蓄積が原因であり,虚血性再灌流障害2)や神経変性疾患3)などさまざまな疾患への関与も指摘されている.一方で,酸化型1-palmitoyl-2-arachidonoyl-sn-glycero-3-phosphocholineがマクロファージと樹状細胞の免疫応答の調節4)に,エポキシ化ω3脂肪酸がアレルギー5)に関係していることも報告された.また,酸化リン脂質の主要な成分である脂肪酸アルデヒドを持つリン脂質(リン脂質アルデヒド)は,酸化LDL中で生成しマクロファージに認識される6).後述するが,リン脂質アルデヒドは,酸化反応による酸素分子の結合と脂肪酸鎖の切断による鎖長の短縮反応の過程で生成される.そのため,脂肪酸部位全体としての水溶性が増す.その結果,水溶性環境(細胞表面)に移行しやすくなり,CD36などスカベンジャー受容体に認識7)されるという,「lipid whisker model」8)も提唱されている.また,これら脂肪酸アルデヒド,リン脂質アルデヒドは,タンパク質中のアミノ酸(リシンやヒスチジンなど)と容易に反応して複合体を形成する.たとえば,複合体であるω-(2-carboxyethyl)pyrroleは,血管新生の誘導因子9)として滲出型加齢黄斑変性患者網膜組織10)で検出されている.

このように,最近になって酸化リン脂質が炎症や細胞死などに関与することが明らかになりつつあるものの,酸化脂質そのものと生体内成分との反応性が高く,あるいは生成量が微量であり,かつ種類が多様であるため,測定できる手法は限られている.そこで,本稿では,我々の最近の知見を中心に酸化脂質の測定法について記載する.

2. 脂質過酸化反応

検出方法について述べる前に,脂質過酸化反応について簡単に記載する.不飽和脂肪酸は,酸化反応を受けやすい.これは,不飽和脂肪酸内bis-allylic carbonsの水素原子の結合乖離エネルギーが,一般的なアルキル基のC-H結合(約100 kcal/mol)に比べて小さいことによる11).そのため,以下のような脂質過酸化連鎖反応が生じる(図1).

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図1 脂質過酸化反応およびその代謝産物

不飽和脂肪酸は,活性酸素などにより容易に酸化され,脂質由来ラジカルが生成する.また,脂質過酸化物やタンパク質との反応により複合体が生成し,これらが,炎症反応や細胞死誘発などに関与しているとの報告が相次いでいる.

  1. (1)不飽和脂肪酸(LH)から水素原子が引き抜かれ「脂質由来炭素中心ラジカル(L·)」が生成し,連鎖反応が開始.
  2. (2)生成したL·は,直ちに溶存酸素分子と反応し(kperox=109 M−1 s−112),脂質ペルオキシルラジカル(LOO·)を生成.
  3. (3)LOO·は,周囲の不飽和脂肪酸から水素原子を引き抜き,脂質ペルオキシド(LOOH)とL·を生成し,酸化障害が伝搬する(kp=101–2 M−1 s−113)
  4. (4)その後,LOOHは脂質ペルオキシルラジカルやアルコキシルラジカルなどの酸素中心ラジカルに開裂し,フリーラジカル反応が広範に伝幡する.さらに,生成した脂質由来酸素中心ラジカルは,4-ヒドロキシ-2-ノネナールなどのアルデヒド体,またケトンやエポキシド体などへと分解される.

このように不飽和脂肪酸はひとたび酸化されると,脂質由来ラジカルが常に存在している状態となり,脂質過酸化代謝産物が大量に生成されることになる.加えて,リン脂質は生体内において,疎水性相互作用により密集(凝集)し存在することから,これら連鎖的伝搬反応は急激に拡大する.また,位置異性体,立体異性体,などを考慮すると,酸化リン脂質の数は数百種類存在するであろう14).さらに,反応性が高く,それ自身が細胞毒性や変異原性を有する.加えて,アルデヒド体は,活性酸素種よりも生体内半減期が長く,細胞内外へ拡散できる.近年では,これらアルデヒド体とタンパク質との複合体が疾患と密接に関連することも報告されている.

このように,脂質過酸化反応は脂質由来ラジカル形成という質的変化の一点に端を発するが,脂質分子の機能障害,過酸化物の蓄積,さらにはタンパク質複合体形成など多様な病態ステージに影響を及ぼしていることになる.これら脂質過酸化物やその代謝産物と疾患との関連を解析するためには,やはり検出技術開発が不可欠である.これまで,脂質過酸化物やその代謝産物であるアルデヒド体およびそのタンパク質複合体については,質量分析装置を用いた検出15, 16)や抗原抗体反応を利用した方法17)など,有用な手法が数多く報告されている.そこで,脂質由来ラジカルおよび脂質過酸化産物の測定などについて述べる.

3. 脂質由来ラジカルの測定

1)スピントラップ法

L·やLOO·などの脂質由来ラジカルは,脂質過酸化連鎖反応の中心であり,反応性がきわめて高い.現在報告されている代表的な測定法としては,1)スピントラップ法,2)蛍光プローブ法,の二つがあげられる.1)スピントラップ法とは,ラジカル種を安定な反応付加体へと誘導体化を行う方法である.たとえば,N-tert-butyl-α-phenylnitrone(PBN)やα-(4-pyridyl-1-oxide)-N-tert-butylnitrone(POBN)といったニトロン化合物は,特に炭素中心ラジカル種と反応し,より安定なラジカル付加体を形成する.これら付加体を,電子スピン共鳴装置にて検出し,さらにliquid chromatography-tandem mass spectrometry(LC/MS/MS)を組み合わせることで,脂質由来ラジカルの構造解析が可能となる.実際に,Qianらは,ω6系不飽和脂肪酸のリノール酸とアラキドン酸,あるいはω3系のリノレン酸とドコサヘキサエン酸の,酵素酸化反応において生成する脂質由来炭素中心ラジカルの検出に成功している18, 19)

2)蛍光プローブ法:BODIPY骨格のプローブ

近年では,抗酸化分子の高い酸化還元応答性を利用した脂質由来ラジカル検出蛍光プローブの開発も進められている.このプローブでは,先のスピントラップ法とLC/MS/MSの組合わせで得られるような脂質由来ラジカルの構造情報を得ることはできない.しかし,高感度な蛍光分析法であり,細胞イメージングも可能であることから,幅広く応用されている.

Krumovaらは,フェノール性抗酸化分子[chromanol(ビタミンEの活性部位)]の酸化還元電位が脂質由来ラジカル(特にLOO·)と反応前後で大きく変化することに着目し,これらを蛍光スイッチとした脂質由来ラジカル検出蛍光(BODIPY based)プローブ,H2B-TOHを開発した20, 21)図2A).本プローブは,通常,抗酸化分子部位からBODIPYへの光誘起電子移動(PeT)により消光しているが,反応後抗酸化分子部位のHOMOレベルが低下するため,PeTが起こらず発光する20).また,蛍光プローブの特徴を生かし,培養細胞内脂質由来ラジカルの蛍光イメージング22)や,脂質由来ラジカルと抗酸化分子との反応の速度論的解析23)も進められている.

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図2 脂質由来ラジカル検出蛍光プローブ

(A) H2B-TOH, (B)C11-BODIPY, (C)NBD-Pen. それぞれのプローブは,脂質由来ラジカル(炭素中心ラジカル,アルコキシルラジカル,ペルオキシルラジカル)などと反応し,蛍光がTurn-On,あるいは波長が変化する.

一方,Drummenらは,抗酸化分子であるカロテノイドとBODIPYを連結させたratio metric蛍光プローブC11-BODIPYを報告した24)図2B).本プローブは,カロテノイドとBODIPY部位とのπ電子共役が,ラジカル反応により切断されることで,励起蛍光波長が大きくシフトする[595 nm(非酸化型)/520 nm(酸化型)].このような光応答性を利用することで,培養細胞中の脂質由来ラジカルの解析も可能である.このC11-BODIPYとペルオキシルラジカルとの反応速度は,6.0×103 M−1s−1と推定されている25).一方,本プローブは,近年精力的に研究が進められているフェロトーシス1)の研究分野において広く利用されており,培養細胞中脂質由来ラジカルの蛍光イメージングも可能である26, 27).さらに最近では,これら上記のプローブに,ミトコンドリア移行性を付与した蛍光プローブも開発されている28, 29)

3)蛍光プローブ法:NBD-Pen

上述した手法は非常に有用であり,多くの研究に利用されている.一方で,動物実験などへの応用研究,また脂質由来ラジカルの構造情報などについては,さらなる改良が必要である.そこで我々は,脂質由来ラジカルを直接捉え,かつ蛍光イメージング可能な検出プローブの開発を進めた.まず,着目したのが,分子内に安定な不対電子を有する有機スピン化合物,ニトロキシド化合物である.このニトロキシド内の不対電子は,水溶液中でも安定に存在する(代表的なニトロキシドであるTempolは,少なくとも数か月間水溶液中で安定に存在している).ニトロキシドと炭素中心ラジカルとの反応は,主にlaser flash photolysisや熱分解性アゾイニシエーターを用いて速度論的解析が進められている30).一般的にニトロキシド化合物は,特に炭素中心ラジカルときわめて高い反応性(拡散律速反応に近い速度,k=108–9 M−1 s−130–32)を有し,スピントラップ剤と炭素中心ラジカルとの反応(k=105 M−1 s−1程度)33, 34)に比べてはるかに大きく,酸素分子35)とほぼ同程度の反応性である.また,ニトロキシド内のラジカルと炭素中心ラジカルとの反応は,ラジカル–ラジカルカップリング反応であり,より安定なアルコキシルアミン付加体を形成する36).こうした反応特性より,ポリマー化学の研究分野における光安定剤(ヒンダードアミン光安定剤の活性種)をはじめ37),生物物理学におけるスピンプローブ,有機化学における合成反応中間体の解析,さらには抗酸化物質などとしても応用されている38)

代表的なニトロキシド化合物であるTEMPOは,炭素中心ラジカル種に対して高い反応性を示す一方で,アスコルビン酸などの抗酸化分子とも反応し39, 40),非常磁性のヒドロキシルアミンへと還元される(k=101–2 M−1 s−1).これら抗酸化分子はラジカル分子よりも生体内に多く存在するため,ラジカル解析の障害となりえる.そこで我々は,ピペリジン系ニトロキシドのα位への置換基修飾合成法を開発し41),脂質由来ラジカルに対して高い反応選択性を有するニトロキシド誘導体を開発した42).また,ニトロキシドは周囲に存在する蛍光原子団をスピン交換や光誘起電子移動により消光させる43–45)ことから,酸化還元物質に対する蛍光プローブの発光制御部位としても活用されている46)

以上の点を踏まえ,我々は,脂質由来ラジカルと反応し付加体形成することで蛍光発光するプローブ「NBD-Pen」を開発した47)図2C).本プローブは,過酸化水素や,スーパーオキシド,ヒドロキシルラジカルなどの活性酸素とは,ほとんど反応しない(図3A).一方で,リノール酸(LA),αリノレン酸(ALA),アラキドン酸(AA)などを基質とし,リポキシゲナーゼや,AAPHやAMVNなどアゾ化合物の刺激により生成した脂質由来ラジカルと反応し,蛍光発光する(図3A).このとき,NBD-Pen蛍光強度は,ほぼAA>ALA>LAの順であったが,これはおそらく基質である不飽和脂肪酸内の二重結合の数の差によるためであろう.

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図3 脂質由来ラジカル検出蛍光プローブ(NBD-Pen)の(A)反応性および(B, C)疾患モデルへの応用

(A) NBD-Penは,脂質由来ラジカルと反応すると蛍光消光が解除され,蛍光を発光するようになる.このNBD-Penは活性酸素とは反応せず,リポキシゲナーゼあるいはアゾ化合物刺激により生成した脂質由来ラジカルと反応し蛍光強度が上昇した.H2O2:過酸化水素,ClO:次亜塩素酸,O2−·:スーパーオキシド,·OH:ヒドロキシルラジカル.LA:リノール酸,ALA:αリノレン酸,AA:アラキドン酸,AAPH, AMVN:アゾ化合物.(B)ジエチルニトロソアミン誘発肝がんモデル動物の肝臓切片,(C)光照射網膜障害モデル動物の網膜組織切片.それぞれの疾患モデル動物にNBD-Penを投与し,組織切片を蛍光観察した.

では,NBD-Penは,本当に脂質由来ラジカルと反応して蛍光発光しているのであろうか? 本プローブのn-オクタノール/水分配係数(log Po/w)は2.46であり47),用いた蛍光団NBD基は環境応答性蛍光団である.以上から,本プローブの大部分は,少なくとも脂溶性環境下に存在していると考えられる.一方で,本プローブは,10 µMまでの濃度でHepG2細胞などに対して毒性を示さない.さらに本プローブの特徴は,動物モデルの組織切片中での蛍光イメージングが可能な点である.以下,実際に疾患動物モデルで脂質由来ラジカルを検出した結果を示す.

化学発がん物質であるジエチルニトロソアミンは,シトクロムP450で代謝され,その際に炭素中心ラジカルが生成することが報告されている48, 49).このジエチルニトロソアミンを動物に投与し,1時間後にNBD-Penを腹腔内投与した.その後肝組織切片を作成し,蛍光イメージングを行ったところ,蛍光強度が有意に増加し(図3B),P450阻害剤であるSKF525Aの投与で蛍光強度は減弱した.さらに,別の疾患モデル動物として,網膜障害モデルでの例を示す.眼,特に網膜組織ではドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸が多く存在する50).さらに網膜組織は酸素消費量が高く51),常に光を浴びており,網膜障害への酸化脂質の関与が想定されている.そこで,光照射網膜障害モデル動物を作製し,NBD-Penを投与したところ,網膜切片中での蛍光強度が上昇し(図3C),脂質由来ラジカル阻害剤の投与で蛍光強度は有意に減弱した52).このことから,脂質由来ラジカルは確かに疾患モデル動物でも生成しているといえる.その他,酸化LDL中での検出も可能であった53)

4)脂質由来ラジカルは疾患発症の原因か?

では,生体内で生成した脂質由来ラジカルは,疾患を誘発,あるいは進展する原因分子なのであろうか? それとも結果として生成した産物なのだろうか? もし,原因であれば,脂質由来ラジカルの捕捉により,疾患発症や進展は軽減されるはずである.そこで,NBD-Penの蛍光団を外した脂質由来ラジカル捕捉剤OH-Pen(化合物1),あるいは脂質由来ラジカルとの反応性をブロックしたOH-PenNOMe(化合物2)を新たに合成した47).先に述べたように,ジエチルニトロソアミン投与1時間後に脂質由来ラジカルが生成していることを,NBD-Penを用いて示した(図3B).そこで,ジエチルニトロソアミン投与1時間後にNBD-Penの代わりにOH-Penを動物に投与したところ,ジエチルニトロソアミン投与で上昇した肝組織中の酸化脂質由来アルデヒド体であるマロンジアルデヒド,4-ヒドロキシ-2-ノネナール,アクロレイン,また炎症や細胞死のマーカーである8-OHdG, ALT, TUNEL, PCNA, IL-6,いずれも有意に減少した47)図4).しかしながら,脂質由来ラジカルと反応性を持たないOH-PenNOMeの投与では,抑制効果はまったくなかった.さらに,ジエチルニトロソアミン投与1時間後にOH-PenあるいはOH-PenNOMeを一度投与し,そのまま3か月間動物を飼育したところ,ジエチルニトロソアミン投与で上昇した肝foci数は,OH-Pen投与で有意に減少した(図5A).一方で,OH-PenNOMeでは効果はまったくなかった.興味深いことに,NBD-Penで蛍光強度の上昇がみられなかったジエチルニトロソアミン投与24時間後にOH-Penを投与しても肝foci数はほとんど変わらない.以上の結果は,ジエチルニトロソアミン投与初期に脂質由来ラジカルが生成し,何らかの経路により肝発がんの原因になりうることを示すものである.また,同様の検討を先の光照射網膜障害モデル動物でも実施し,脂質由来ラジカル捕捉剤の投与で網膜障害を有意に軽減することも明らかにしている52)図5B).

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図4 ジエチルニトロソアミン誘発肝障害に対する脂質由来ラジカルの関与

脂質由来ラジカルが生成していたジエチルニトロソアミン投与1時間後に,脂質由来ラジカル捕捉剤OH-Pen(化合物1),あるいは捕捉作用がないOH-PenNOMe(化合物2),をジエチルニトロソアミン投与1時間後に注射し,24時間後の脂質過酸化代謝産物および炎症・組織障害指標を測定した.8-OHdG:8-ヒドロキシデオキシグアノシン(DNA酸化の指標),ALT:アラニンアミノトランスフェラーゼ,TUNEL:TUNEL染色(DNA断片化を検出),PCNA:proliferating cell nuclear antigen.

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図5 脂質由来ラジカル捕捉剤による疾患抑制効果

(A)ジエチルニトロソアミン誘発肝がん.ジエチルニトロソアミン投与3か月後の肝臓.OH-Pen投与により肝foci数は有意に減少した.(B)光照射後,7日目の網膜組織.網膜細胞が減少した.脂質由来ラジカル捕捉剤(CPC-Pen)投与により網膜細胞減少を有意に抑制した.INL:内顆粒層,ONL:外顆粒層,RPE:網膜色素上皮細胞.

これまで脂質過酸化反応の連鎖反応の起点である脂質由来ラジカルが疾患に関与していることが想定されていた.しかし,それを証明する適切な手法は,特に動物実験では制限されていたように思われる.今回,脂質由来ラジカルが生成している時期に阻害剤を投与すれば疾患発症を軽減できることがわかり,脂質由来ラジカルの疾患発症への関与,あるいは阻害剤投与タイミングに関する情報が得られたのではないかと考えている.なお,今回OH-Penを用いた検討を紹介したが,蛍光プローブでも同様に疾患の発症を軽減できる.

5)脂質由来ラジカルの構造解析

脂質由来ラジカルが化学発がんや光照射網膜障害モデル動物の発症に関与することがわかった.では,それら疾患に関与すると考えられる脂質由来ラジカルの構造情報はどのようなものであろうか? NBD-Penの開発コンセプトは,脂質由来ラジカルとラジカル-ラジカル反応により共有結合を形成するということである47).そのため,NBD-Pen内の不対電子が消失し,蛍光発光する.すなわち,NBD-Penは,脂質由来ラジカルと反応し蛍光性付加体を形成する.このことは,この付加体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分離し蛍光検出にて保持時間を確定,その保持時間で質量分析を行えば,結合した脂質由来ラジカルの構造を解析できるはずである54)図6).そこで,先の実験と同様に,NBD-Penをアラキドン酸/リポキシゲナーゼと反応させ,HPLCにて蛍光検出したところ,クロマトグラムのうちに複数の蛍光ピークが観察された.このピークは,リポキシゲナーゼの濃度依存的に上昇した.また,リポキシゲナーゼ阻害剤の添加により有意に減弱した.そこで,刺激の種類により蛍光ピークの強度が変わるどうかを検討した.アゾ化合物であるAAPH,あるいは二価鉄,さらにその組合わせで刺激したところ,クロマトグラム中の蛍光ピーク強度が刺激の種類によって大きく変動した(図7).そして,蛍光強度が上昇した保持時間で溶出される物質に対して質量分析を行ったところ,·C5H11や·C12H19Oなど炭素鎖が短い断片化ラジカル体が複数生成していることがわかった.

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図6 NBD-PenとHPLC蛍光検出質量分析(LC/FL/HRMS/MS)システムによる不飽和脂肪酸由来ラジカルの構造解析

(A) NBD-Penは脂質由来ラジカルを効率的に捕捉し,安定なNBD-Pen-脂質由来ラジカルアダクトを生成する.(B)蛍光プローブとLC/FL/HRMS/MSの組合わせにより,クロマトグラムの蛍光ピークの保持時間で質量情報を取得する.

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図7 NBD-Penと脂質由来ラジカル付加体の蛍光クロマトグラム

アラキドン酸を,AAPH,二価鉄,あるいはAAPH+二価鉄で刺激し,NBD-Penにて脂質由来ラジカルを捕捉し,LC/FL/HRMS/MSシステムにて解析した.断片化ラジカルが生成しており,刺激の種類によってNBD由来の蛍光強度は大きく異なった.

では,基質であるアラキドン酸からどのようにして炭素鎖が短い断片化ラジカルが生成したのであろうか? これまで,たとえば,β切断ではアルキルラジカルが,またジオキセタン開裂やホック開裂では,オキソアルケニルラジカルが生成するなど,生成機構がいくつか報告されている55)図8).さらに,用いる基質としてアラキドン酸の代わりにω3系のドコサヘキサエン酸などを用いた場合には,二重結合の位置が異なるため,生成する断片化ラジカルの質量が水素2個分違うことが想定される.そこで,これらの開裂パターンから,生成するであろう断片化ラジカルパターンを推測し,質量分析を行った54).また,重水素化した脂肪酸も利用した.その結果,たとえばリノール酸やアラキドン酸などのω6系では,·C5H11や·C9H15Oが,一方αリノレン酸やドコサヘキサエン酸などのω3系では,·C5H9や·C9H13Oなどの質量が水素2個分小さい脂質由来ラジカルが生成していた(図9).またMSピークエリアから生成したラジカル量を半定量すると,刺激の種類によって生成するラジカル種が大きく異なっていた.現時点で,実際に測定できた脂質由来ラジカルは132種類であり,そのうち111種類はこれまで報告がない新規のラジカルであった.

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図8 n-6およびn-3系不飽和脂肪酸に由来する断片化脂質由来ラジカルの生成パターン

(A) β切断によりアルキルラジカルが生成する.(B)ジオキセタン開裂により,オキソアルケニルラジカルが生成する.また,n-6およびn-3系によって,生成する断片化ラジカルの分子量は異なる.

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図9 n-6およびn-3系不飽和脂肪酸由来断片化ラジカル

(A)各種不飽和脂肪酸を基質とした際のNBD-Pen-C5H11およびNBD-Pen-C5H9の抽出イオンクロマトグラム.(B)n-6およびn-3系由来断片化ラジカル生成の切断部位と分子式.

以上の結果より,脂肪酸の酸化により断片化ラジカルが複数生成していること,またその生成機構はβ切断やジオキセタン開裂であり,検出した断片化ラジカル体から開裂パターンを推測できることが示唆された.さらに基質である脂肪酸がω3系かω6系かを区別することもできそうである.そこで,実際に疾患モデル動物において,どのような脂質由来ラジカルが生成しているか測定した.その結果,ジエチルニトロソアミン投与1あるいは4時間後に断片化ラジカルが合計12種類有意に生成しており,阻害剤OH-Penの投与により減少した54).また,その多くはアルキルラジカルであった.さらに,そのMSピークエリアから半定量したところ,大部分はω6系由来ラジカルであった.

このように脂質由来ラジカルの検出・構造解析が可能になった.しかし,検出できた物質は分子式にとどまっており,立体構造などは不明である.また標品がないため,半定量にとどまっている.今後,重要な分子については,標品の合成などが必要であろう.一方で,以前より,酸化ストレス疾患などで,呼気中に揮発性炭化水素の生成が報告されている56, 57)が,これは,これら断片化ラジカルから生成しているのかもしれない.

4. 酸化リン脂質

1)酸化リン脂質の構造ライブラリー

脂質由来ラジカルの検出および構造解析を通じて,これら分子が疾患の発症などに関与している可能性が示された.では,脂質過酸化連鎖反応の代謝産物である酸化脂質の検出は可能であろうか? そこで我々は,細胞膜の構成成分であり,代謝,シグナル伝達の調節など,重要なプロセスに関与しているグリセロリン脂質に着目した.リン脂質は,多価不飽和脂肪酸を含むため,容易に酸化されて酸化リン脂質を生成する.特に肝臓や腎臓に豊富に存在するホスファチジルコリン(PC)由来のoxPCsは,細胞死や炎症反応に関与している.こうした酸化リン脂質は,エポキシドや,ヒドロキシド,ヒドロペルオキシド,アルデヒド,カルボン酸など,構造が多様な物質へと分解される(図1).しかしながら,実際に動物モデルや臨床試料から検出される内因性oxPCsの数は,予想よりもはるかに少ない.現在,脂質データベースであるLIPID MAPS(www.lipidmaps.org/)に登録されているoxPCsは,53種類である.この報告されている酸化リン脂質の数の少なさは,酸化リン脂質が複雑なラジカル反応を経て生成した微量物質であり,そのためその化学構造の推定が難しく,測定が困難なことに起因する.しかし,酸化脂質の生成機構を考えると,その数が非常に多いことが容易に想像できる.また,脂質過酸化連鎖反応の起点である脂質由来ラジカルが少なくとも132種類検出できた54)ことを考えても,多くの酸化リン脂質が生成しているのは間違いない.実際に,Anthonymuthuらは,既知の脂質構造から生成しうる総数と比較して,同定された酸化脂質の数はごくわずかであると述べている58)

これら酸化脂質の測定には,質量分析装置が用いられているが,酸化リン脂質の構造情報を獲得するには,質量電荷比(m/z)値やフラグメンテーションパターンによる各分子のタンデム質量分析(MS/MS)パラメータが必要である.そこで,我々はこれら課題を解決するため,質量分析によるノンターゲット分析に着目した.本手法は,構造未知の化合物の同定に有用である.さらに,近年の高分解能質量分析計(HRMS)やデータ処理技術の発展により,膨大な数のMSMSピークを包括的にアノテーションすることが可能となっている.

そこで我々は,まず,PC16:0/PUFAをAAPHまたはAAPH+heminで酸化し,試料から脂質を抽出した後,両方の抽出液を混合し,HPLCと高分解能質量分析計を組み合わせ(LC/HRMS)分析した59)図10).そして,HRMSスペクトルの中からoxPCs由来のピークを選択するために,酸化(O)/非酸化(N)の強度比が2.0を超えるシグナルを選択した.その後,HRMS/MSスペクトルにPC基と二つの脂肪アシル基に由来する三つの典型的なプロダクトイオンを確認し,酸化リン脂質とした.その結果,リノール酸,アラキドン酸,ドコサヘキサエン酸の3種類のPC16:0/PUFAに由来する155種のoxPCsを同定した59).その中で,意外にも103種のoxPCは,これまでに報告のない新規のoxPCsであった.また,酸化型PC16:0/PUFAの構造情報をもとに,酸化型PC18:0/PUFAおよび酸化型PC18:1/PUFAの構造として,最終的に465種のoxPCsのMS/MSライブラリーを構築した.また興味深いことに,oxPCsの生成量および種類は,用いる刺激の種類によってかなり変動するようである.これまで,酸化剤が異なれば生成している酸化物の種類が違うことは想定されてはいた.今回の結果を踏まえても,用いる酸化剤や基質が異なれば,細胞や動物実験で結果が違うのは当然かもしれない.

Journal of Japanese Biochemical Society 94(3): 329-340 (2022)

図10 酸化脂質のノンターゲット解析

酸化脂質サンプル(O)と非酸化脂質サンプル(N)をLC/MSにて測定し,O/Nが2以上のものをピッキング.その後,LC/HRMS/MS解析を行う.

2)疾患モデルでの酸化リン脂質の解析

先の脂質由来ラジカルの場合と同様に,動物モデルでも酸化リン脂質は検出できるだろうか? 解熱鎮痛薬であるアセトアミノフェンは,肝シトクロムP450 2E1(CYP2E1)の作用により代謝され,通常グルタチオン抱合系により無毒化される.しかし,過剰摂取により肝毒性を示す.最近の研究では,脂質過酸化物がアセトアミノフェン誘発性の肝細胞死に関与していることも報告されている60)

実際に,アセトアミノフェンを動物に投与すると,70種類のoxPCsが生成していることが,先の酸化リン脂質ライブラリーをもとに明らかになった59)図11).また,このoxPCsは,酸化酵素の阻害剤投与により,顕著に減少した.興味深いことに,アセトアミノフェン投与後の時間によって,生成するoxPCsの種類および量が大きく変動していた.さらに,一部のoxPCsがALT値の増加前に上昇していることは,その後の肝細胞死に対するoxPCsの関連性を示唆している.

Journal of Japanese Biochemical Society 94(3): 329-340 (2022)

図11 アセトアミノフェン投与マウスにおける内因性oxPCsの網羅的解析

アセトアミノフェン投与1, 2, 4, 8, 24時間後にマウス肝臓サンプルを脂質抽出し,oxPCs生成量のヒートマップを作成した.

3)酸化リン脂質の質量イメージング

では,oxPCsは肝臓のどの部位で生成しているのであろうか? 近年,質量イメージング(MALDI-MS/MS/MSI)の開発や応用が精力的に進められている61–63).特に,酸化リン脂質のような低分子や,抗体を作製できないような分子の位置情報を明らかにするには,質量イメージングがきわめて有効であろう.MALDI-MS/MS/MSIではレーザーを利用するが,oxPCsの可視化を行う際,レーザー照射によりリン脂質が酸化されうることが判明した.これは,質量イメージングを行う上で重大な問題である.すなわち,酸化アーチファクトとしてのoxPCsか,本来生体内で生成したoxPCsかを区別できない可能性がある.しかし,酸化反応が生じている間18O含有空気(N2 79.5%,18O2 20%,CO2 0.5%)を利用すると,酸化反応時には18Oが利用され,レーザー照射による酸化アーチファクトとしての大気中16Oとは区別できる.実際にin vitroの実験で,18O標識により,MALDI-MS/MS/MSIによるoxPCsの検出および画像化の際に生じる酸化アーチファクトを除外できた59)

そこで,アセトアミノフェンを投与後,マウスを2時間18O2空気にさらした(図12).その結果,バックグラウンドノイズが少なく,内因性のoxPCの分布を可視化することに成功した.この生成量は,18O2空気吸入の時間によって変化した.また,生成部位は,アセトアミノフェンの代謝酵素であるCYP2E1が高発現している静脈領域,グルタチオンの枯渇部位とよく一致していた.

Journal of Japanese Biochemical Society 94(3): 329-340 (2022)

図12 MALDI-MS/MS/MSIと18O標識による内因性oxPCsの可視化

マウスは,アセトアミノフェン投与後2時間18O2を含む空気下で飼育したのち,質量イメージングを行った.酸化脂質の生成部位とアセトアミノフェン代謝酵素CYP2E1の発現部位(免疫組織化学染色)がよく一致した.

以上より,構築したoxPCsのHRMS/MSライブラリーとin-vivo 18Oラベル化により,アーチファクトとしてのバックグラウンドノイズを軽減し,oxPCsを選択的に可視化することが可能となったといえる.また実際に,疾患モデル動物の組織におけるoxPCs形成部位に関する重要な情報を提供することも可能となった.

5. おわりに

脂質由来ラジカルや脂質過酸化物などの酸化リン脂質は,疾患の発症や進展への関与が指摘されている.また,近年では脂質過酸化反応依存的な細胞死であるフェロトーシスが新たに提唱され,酸化リン脂質研究がさらに盛んになっている.一方で,反応性に富み生体内寿命がきわめて短いことや,脂溶性環境下で生成するものであることから,その測定には制限があったといえる.本稿では,脂質過酸化反応の起点である脂質由来ラジカルに対する蛍光プローブを開発し,蛍光検出とその構造解析,またノンターゲット分析にて酸化リン脂質の構造解析を行った我々の最近の知見を中心に紹介した.実際に,これまでに報告例がない100種類を超える新規の構造を明らかにし,データベース化も進めている.今後は,これら酸化リン脂質の詳細な分子構造に加え,どのように疾患の発症や進展に関与しているのか,など,脂質の酸化という質と量の変化に着目し,生理的および病理学的意義の理解を深めていきたいと考えている.

謝辞Acknowledgments

本稿は,著者の研究室の研究成果を中心にまとめたものです.これまで一緒に研究を進めていただいた研究室メンバー,ならびに共同研究者の方々に深く感謝いたします.

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著者紹介Author Profile

山田 健一(やまだ けんいち)

九州大学大学院薬学研究院教授.博士(薬学).

略歴

1994年九州大学薬学部卒業.99年同大学院薬学研究科博士課程修了,博士(薬学).99~2002年米国NCI-NIH博士研究員,02年九州大学大学院薬学研究院助手,05年同助教授(後に准教授).13~17年JSTさきがけ「疾患代謝」.16年同大学教授.17~23年AMED-CREST「脂質」研究開発代表者.

研究テーマと抱負

酸化脂質が,疾患にどのように関わっているか,またその創薬研究に興味を持っている.一緒に研究をしてくれる若手を募集中.

ウェブサイト

http://bukka.phar.kyushu-u.ac.jp/

趣味

スポーツ観戦,旅行

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