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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 94(4): 537-547 (2022)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940537

特集Special Review

生物材料・生体機能発現と液–液相分離クマムシ乾眠とクモの糸Liquid–liquid phase separation seen in tardigrade anhydrobiosis and spider silk spinning

1慶應義塾大学先端生命科学研究所Institute for Advanced Biosciences, Keio University ◇ 〒997–0017 山形県鶴岡市大宝寺字日本国403–1 ◇ Nihonkoku 403–1, Daihoji, Tsuruoka, Yamagata 997–0017, Japan

2慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科Graduate School of Media and Governance, Keio University ◇ 〒252–0882 神奈川県藤沢市遠藤5322 ◇ 5322 Endo, Fujisawa-shi, Kanagawa 252–0882 Japan

3自然科学研究機構生命創成探究センターExploratory Research Center on Life and Living Systems (ExCELLS), National Institute of Natural Sciences ◇ 〒444–8787 愛知県岡崎市明大寺町字東山5–1 ◇ 5–1 Higashiyama, Myodaiji, Okazaki, Aichi 444–8787, Japan

発行日:2022年8月25日Published: August 25, 2022
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“最強生物”クマムシは乾燥に伴う可逆的な生命活動の停止である乾眠によって,宇宙真空への直接曝露を含むあらゆる極限環境に耐性を持つ.“最強素材”クモの糸は,鋼を上回る強度とナイロンを上回る伸縮性を併せ持った最もタフな素材であり,再生・生分解可能な持続可能タンパク質素材として産業的にも大きな注目を集めつつある.近年私が研究対象としているこの二つの特異な生命現象の両方において,その機能発現に液–液相分離が不可欠な役割を担っていることが明らかになってきた.本稿ではこの二つの“最強”な研究対象について紹介するとともに,液–液相分離が果たす多様な役割について議論する.

1. はじめに

手塚治虫のライフワーク『火の鳥』の実質的最終話となった『太陽編』は,一見まったくつながりのないようにみえる7世紀の百済の王族の生き残りと,21世紀のレジスタンス組織のスパイの物語がクライマックスにかけて劇的に交差する一大スペクタクルである.さすがにそこまでのドラマがあるとは起こがましくもいえないが,近年私もまったく異なる二つの研究テーマが液–液相分離(LLPS)と繊維化というテーマに収束する経験をした.それが本稿にまとめるクマムシ乾眠のメカニズムと,クモの糸の紡糸メカニズムである.私は生命というものがどのように生じうるのか,という点に興味があり,物質と生命の違いは何か,そして情報からどのように生命が生じるのか,を明らかにしたいと考えている.そのために,前者は生命活動を可逆的に停止できるクマムシを,後者は遺伝子から発現して作り出される「モノ」であるクモの糸の物性を研究対象としている.しかし,クマムシとクモには,日本語名がともに「ク」から始まる八本足脱皮動物という以外には一見共通性がない.だが,飼育系すら十分に整わないこれらのいわゆる非モデル生物は,マルチオミクスのアプローチによるスクリーニングが可能な点が当研究室の手法と相性がよかった.さて,手塚のようにドラマチックな交差は期待すべくもないが,このように始まった二つの研究とLLPSの関連について以降紹介する.

(注:以下,2~3節の内容は他の総説1)の部分翻訳となっているため,必要に応じてそちらも参照されたい.)

2. クマムシと乾眠

生化学は水の存在を前提にしている.普遍的な溶媒である水は,酵素触媒作用の反応場として細胞内の代謝や生合成を可能とする.また,細胞膜を形成するリン脂質二重膜や,あるいはタンパク質の立体構造のように,親水性と疎水性によって多くの細胞内構造が形作られている.よって,水を失うことは生命活動の維持にとって危機的状況となりうるが,一部の微小な生物においては次の水場に移動するまでの時間よりもその場が干上がる速度の方が速くなるため,その場にとどまり乾燥に耐えるという戦略が進化的に選択された.これがクマムシを代表とする生物でみられる乾眠という現象である2, 3)図1).クマムシは独自に緩歩動物門を形成する体長0.3 mm程度の微小な脱皮動物で,約1200種が記載されている.都市部から深海,そしてヒマラヤに至るまで地球上に普遍的に生存しており,主に苔や地衣類などから見つけることができる.乾眠(anhydrobiosis;life without water)はクリプトビオシスの一種であり,周辺環境の乾燥に伴い体内の水分をほぼ完全に喪失し,無代謝の休眠状態に入る4, 5).しかし,この状態から吸水によって速やかに元の生命活動を再開することができ,生と死(=不可逆な生命活動の停止)の中間に位置する「第三の生命状態」といわれる4).生物は水があるがゆえに代謝を行いホメオスタシスによって恒常性を維持できるが,一方で水があるがゆえに温度や圧力などの影響を受けやすい.乾眠状態のクマムシはゆえに長期間の保存6)や30年にも及ぶ凍結7)を可能にする他,さまざまな極限環境,具体的には,−272.8°Cの超低温8),100°Cあまりの高温9),7.5 GPaの高圧や真空10),アセトニトリルなどの薬剤11),そして4000 Gyものガンマ線照射12)に耐性を示す.2009年には宇宙真空への10日間の曝露においても生存が確認され13),この驚異的耐性が注目を集めてきた.

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図1 通常状態および乾眠状態のヨコヅナクマムシの電子顕微鏡像

スケールバーは50 µm. 文献1より改変.

乾眠という現象自体は顕微鏡の発明と時期を同じくして発見されており,クマムシ自体も最初期から乾眠能力と関連して注目されてきた14).一方,乾眠自体はクマムシの専売特許ではなく,細菌や酵母,ワムシや線虫(Caenorhabditis elegans),アルテミアやネムリユスリカなどの節足動物,そして「復活植物」(Selaginella lepidophylla, Myrothamnus flabellifolia, Craterostigma planitagineumなど)などさまざまな生物種で観察されてきた15).1970年代からこれらクマムシ以外の生物の研究を通じて,これら生物が乾眠時に乾燥重量の20%にも及ぶ大量のトレハロースを蓄積することが見いだされ,乾眠とこの二糖の関係性が議論されてきた16).特に,トレハロースが他の糖と同様にガラス化しやすく,さらに,他の糖よりも高いガラス転移温度(Tg)を持つことから,乾燥に伴い細胞内をガラス状態,すなわち,粘性非晶状態に保つことで,細胞内容物を保護するという水置換仮説やガラス化仮説が提唱されてきた17).また,より近年になって,ネムリユスリカの乾眠に大量のトレハロース蓄積が必須であることや18),線虫の耐性幼虫においてもトレハロース蓄積が分子生物学的に確認されたことによって19),これら生物において乾眠とトレハロースの関係が強固に示されてきた.

だが,クマムシにおいては一般的に大量のトレハロースの蓄積はみられないばかりか,そもそもトレハロースがまったく検出されなかったり,トレハロース合成酵素が見つからないという報告がなされ20),他の乾眠生物とは異なる機構が存在することが示唆された.実際,乾燥重量の数十%にも及ぶトレハロースを合成するには数日オーダーの時間を要し,ゆっくりとした乾燥が乾眠導入に必須であるが,多くのクマムシは数十分というきわめて短い時間での乾眠導入が可能である21).一方,クマムシの安定的な実験室内飼育は2000年代に入って初めて確立され22),さらにその小ささからゲノム解析に必要なマイクログラムオーダーのゲノムDNAを得るためには数千個体を要すことから,クマムシのゲノムリソースの準備とそれに基づく分子生物学的研究は近年になってようやく可能となってきたが,特にヨコヅナクマムシ(Ramazzottius varieornatus)とヤマクマムシ(Hypsibius exemplaris)の安定的実験室内飼育とゲノムデータが確立されたことから23),これらの研究への道筋が拓かれた.

3. クマムシの乾眠機構と天然変性タンパク質

さて,ではトレハロースに依存せず,数十分というきわめて短時間での乾眠移行を可能にするクマムシ独自の分子機構はどうなっているのだろうか.ヨコヅナクマムシの初期のゲノム・トランスクリプトーム解析では,乾眠・通常時にかかわらず,常時他の生物に配列類似性がないクマムシ固有の遺伝子が大量発現していることがin silico解析によって見いだされており,さらにこれらの配列の二次構造解析から,天然変性・非構造であることが予測され,LEA(late embryogenesis abundant)タンパク質と類似した性質がある可能性が示された.LEAタンパク質はもともと植物の種で大量に蓄積するタンパク質として見いだされ,その全長にわたって構造をとらないことや,高い親水性を持つこと,そして乾燥耐性や各種ストレス耐性に関与することが示されてきた24).実際,乾眠能力を持つアルテミアやネムリユスリカではGroup 3 LEAタンパク質が乾燥に伴い大量に蓄積することが報告されており,これらタンパク質が他のタンパク質や膜の保護に寄与することや25),線虫においてはRNAiによるノックダウンにより乾眠に必須であることが示されている26).一方,これまでに多数のLEA,あるいはより広義にはhydrophilin,が発見されてきているが27),これらのグループ間の配列保存性は乏しく,たとえば同じGroup 1 LEAタンパク質とされるものでも,植物のものと細菌のものは独立かつ収斂的に進化してきた可能性が示唆されている28).よって,クマムシにおいても類似のタンパク質が独自に獲得されてきた可能性があった.

全長にわたって構造をとらず,きわめて親水性が高い,すなわち,可溶性が高いというLEAの特徴を利用して,LEAタンパク質の単離には熱可溶性アッセイが用いられてきた29).通常のタンパク質は高温処理によって凝集し沈澱するが,LEAタンパク質は沸点に近い温度で10~15分処理しても可溶性が維持されるという熱可溶性という特徴を持つ.この熱処理後の可溶画分を解析することによってLEAタンパク質を比較的容易に分離できるのである.そこで,Yamaguchiらはヨコヅナクマムシのタンパク質抽出物を92°Cで15 min熱処理し,その可溶画分をプロテオーム解析しゲノム配列をリファレンスとして参照することによって,複数の熱可溶性タンパク質を同定し,これらをヒト培養細胞にて発現させた際の局在の違いによって,cytoplasmic abundant heat soluble(CAHS)およびsecretory abundant heat soluble(SAHS)と名づけた30)CAHSおよびSAHSはクマムシゲノム中で非常に重複しており,それぞれ16と13コピー存在し,いくつかのパラログはゲノム中にタンデムに並ぶ遺伝子クラスターを形成している.それぞれきわめて発現量が高く,CAHSとSAHSパラログのみで全mRNAの約5~10%を構成する.また,CAHSはLEAに類似した両親媒性αヘリックス構造を持ち,乾燥状態を模擬したin vitro条件下で水和中のランダムコイル構造からα構造にシフトすることが確認された.続いて,同様のスクリーニングをヨコヅナクマムシのミトコンドリアに対して行うことで,ミトコンドリア局在のクマムシ特異的熱可溶性タンパク質MAHS(mitochondrial abundant heat soluble)とmitochondrial group 3 LEA protein(LEAM)が同定された31).CAHSやSAHSと異なり,MAHSとLEAMはゲノム中にそれぞれ1コピーのみ存在する.MAHSやLEAMはその局在からミトコンドリアの保護に関わっていると考えられるが,現状ではMAHSやLEAMを導入したヒト培養細胞の浸透圧ストレスが向上することが確認されている31)という知見のみに限られる.

一方,天然変性領域(intrinsically disordered region:IDR)を持ちながらも明確な立体構造を示すタンパク質も存在する.SAHSはソフトウェアによる予測上は非構造であると予測される一方,X線結晶構造解析が成功しており,脂肪酸結合タンパク質(fatty acid-binding proteins:FABPs)に類似したβバレル構造をとることが明らかになっている32).FABPはヘムやビリルビンをバレル内にトラップすることが知られており33),細胞の乾燥時にヘムによる活性酸素種の産生を抑制するためにヘムをトラップしたり,酸化ストレス時に必要な場所にビリルビンなどの抗酸化剤を輸送する役割が示唆されている.もう一つの例が放射線耐性との交差耐性から見いだされたanhydrobiosis-related Mn-dependent peroxidase(AMNP)と名づけられた抗酸化タンパク質である34).クマムシがヒトの1000倍にも達する放射線耐性を持つことはよく注目されるが,当然ながらこれは放射線耐性のために進化してきたものではなく,乾燥耐性におけるDNA損傷保護の結果獲得された副産物,すなわち交差耐性である.よって,交差耐性を用いたスクリーニングでは,必ずしも熱可溶性ではないタンパク質についても見いだすことができる.興味深いことにクマムシは通常は温度や圧力などの極限環境耐性は乾眠状態でしか持たないが,放射線耐性は通常状態でも持ち,さらに,水和状態の方が乾眠時よりも高い35).これは,水和状態でなければ働かない修復機構が存在することを意味する.これを観測するため,Yoshidaらはヤマクマムシおよびヨコヅナクマムシに紫外線(UV)やガンマ線を照射し,その後の細胞内遺伝子発現動態を時系列トランスクリプトーム解析によって観察し,修復時に大きく発現上昇する遺伝子で,かつ乾眠時にも誘導される,すなわち交差するものをスクリーニングした結果,CAHSSAHSのようにゲノム内で重複し,実に35コピーものパラログを持つ新規遺伝子AMNPが同定された.AMNPはSAHS同様末端に長いIDRを持つが,それ以外の領域の立体構造解析やin vitroアッセイにより本酵素がMn依存の新規ペルオキダーゼであることが確認され,ヒト細胞に導入することで酸化ストレス耐性を向上させることが確認された.興味深いことに,AMNPはゴルジ体に局在する.ゴルジ体はMn濃度が高く保たれることが知られており36),さらに細胞ストレス応答において中心的役割を担うことも徐々に明らかになりつつあり,やはり細胞のコンパートメントごとに多様な機能があり,さらに酸化ストレス応答が乾眠の要であることがみえつつある.

全長にわたって明確な構造をとらないながらも現状最も機能と役割に関する知見が存在する遺伝子がdamage suppressor(Dsup)である.Dsupはヨコヅナクマムシの核に局在する熱可溶性タンパク質として単離され,実に興味深いことに,この遺伝子一つを導入することによってヒト培養細胞のX線による放射線耐性を約2倍に向上させることが示された37).Dsupを発現した細胞では,X線照射後のDNA二重鎖切断が有意に抑制されており,乾燥に伴うDNAの損傷からの防御に寄与していることが示唆される.実際,Dsupをタバコに導入した場合にも,UVやX線照射によるダメージに対する耐性向上が示された38).さらに,この防御のメカニズムについては,Dsupがモノヌクレオソームに優先的に結合し,ヌクレオソームアレイに取り込まれることや,クロマチンにこのように巻きつくことで,ヒドロキシルラジカルによるDNA損傷から物理的に保護することがin vitro実験で示された39).これらのことは,クマムシ由来の新規遺伝子による応用的研究が開かれるという好例であるとともに,乾眠における防御機構というのは細胞質・細胞外・ミトコンドリア・核など,部位ごと,そして具体的なダメージの種類や防御する分子の種類によって特異性を持つ,きわめて多様かつ複雑な系であることを示唆している.

4. CAHSタンパク質の繊維化とゲル化

では全タンパク質の数%を占めるほど高発現で,ゲノム中に複数のコピーを持ち,乾眠誘導型ヤマクマムシで強く発現誘導されるCAHSの機能はなんなのだろう? RNAiによって乾眠成功率が有意に下がる例や,別のパラログでは大腸菌や酵母に導入することで乾燥耐性がわずかながら向上すること40),あるいはユビキチンなどのコントロールを上回るものではないものの,他のタンパク質をストレスからやや保護すること41),また,すぐに否定された42)がCAHS自身がガラス化する,などという断片的報告を経て,昨年Yagi-Utsumiらの報告43)によってようやくその糸口が見え始めてきた.

水をトリフルオロエタノールへ置換することによって乾燥を模した条件で,CAHSはαヘリックス構造をとることが円偏光二色性スペクトル解析によって示唆されている30).しかし,乾眠は短時間に可逆的に生じる現象であることに注目し,Yagi-Utsumiらはまず赤外分光法によって同様の構造変化が乾燥と再水和の過程で可逆的に起きるかを観察した43).すると,確かに乾燥に伴って現れるαヘリックスのピークが,再水和によって速やかにランダムコイルに戻ることを確認した.また,CAHS1は高濃度下(>0.6 mM)に置くことで可逆的にハイドロゲル化することを見いだした(図2A).乾燥は溶媒の喪失であり,よって溶質の濃度上昇を伴う現象である.このことは,濃度を徐々に上げていくに伴い,溶液核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance:NMR)スペクトルのC末端のαヘリックスに帰属されるブロードなピークが減少し,N末端の変性領域に相当する分離したピークが残るようすと一致した.よって,CAHS1は乾燥時の濃度上昇に伴い,C末端のαヘリックス領域を介して,何らかのゲルソル転移につながる分子間相互作用を起こしていると考えられた.

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図2 CAHSタンパク質のゲル化および繊維化

(A)高濃度でゲル化したCAHS1タンパク質.(B) CAHS1タンパク質の濃度変化に伴う繊維化をHS-AFMで観察したようす.(C)乾燥CAHSのTEM像.HS-AFMとほぼ同サイズの繊維構造がみえる.文献43よりCC BY 4.0に基づき改変.

この分子間相互作用を直接観察するため,Yagi-Utsumiらは直接高速原子間力顕微鏡(high-speed atomic force microscopy:HS-AFM)を用いてCAHS1の濃度を0.4 µMから3.3 µMに上昇させた際の変化を計測した43).すると,明確に数十秒という短い時間スケールで,分子レベルの繊維形成が起きること,また,同様に短時間で可逆的に脱重合も起きることが示された(図2B).このようなCAHS1の繊維化は透過電子顕微鏡(transmission electron microscope:TEM)によるin vitro乾燥タンパク質の観察や,CAHS1を発現させた大腸菌内でもみられた(図2C).次に,このようなCAHS1の変化が生細胞内でも可逆的に生じるかを検証するため,mEGFPを付加したCAHS1をHeLa細胞内で発現させ,培地に0.5 Mソルビトールや0.2 M NaClを加えることで浸透圧ストレスを与え,さらに一定時間後にこれを洗い流すことで浸透圧を元に戻す際の変化を観察した.すると,通常状態ではCAHS1は均一に細胞質に発現しているが,浸透圧調節物質を加えると速やかに複数の顆粒状に凝集するようすがみてとれた(図3).さらに興味深いことに,この凝集体は浸透圧調節物質の除去によってまた速やかに解消され,均一な発現に戻る.これらのことは,CAHS1が乾燥ストレスによって可逆的に繊維化を経て凝集し,ゲル様の構造を細胞内に作り出していることを示唆している.凝集も脱重合もそれぞれ数十秒以内に起きるきわめて迅速な変化であることもクマムシの乾眠動態と適合しており,ガラス化のように時間がかかるプロセスではなく,速やかな乾眠・復帰を実現しつつ細胞内の分子やコンパートメントを保護する機構として説得力があるモデルであると考えられる.

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図3 浸透圧ストレスによるCAHSタンパク質の可逆的凝集

CAHS1-mEGFPをHeLa細胞で発現させ,浸透圧ストレスを与えると,速やかに細胞内にCAHS1-mEGFP凝集体が生じ,培地を洗い流すことで速やかに元の均一な発現に戻る.文献43よりCC BY 4.0に基づき転載.

素過程として繊維化を介すCAHS1のゲル化や凝集がLLPSと称してよい現象なのかはYagi-Utsumiらの報告では結論づけられないが,ほぼ時を同じくして,乾眠できる節足動物であるアルテミアのLEAタンパク質がLLPSを起こすことが報告された.この報告ではin vitroおよび細胞内で液滴の形成が捉えられており,この液滴の存在が細胞の乾燥に伴う形状変化を抑えている可能性が示されている.また,Yagi-Utsumiらの報告の後に相次いで2報の論文が別種のクマムシのCAHSについて出版された.MalkiらはヤマクマムシのCAHS8が繊維化を経てゲル化することをAFMやNMRで同様に示し,Velingらはクマムシを含む多数の候補遺伝子の中からアポトーシス阻害作用を持つ遺伝子をスクリーニングする中で,光および薬剤誘導を用いてLLPS誘導させる系によって,ヤマクマムシのCAHS3,そしてリヒテルスチョウメイムシ(Paramacrobiotus richtersi)のCAHS2が細胞内に凝集体を形成することを示した.これらの挙動から,CAHSの細胞内凝集体もLLPS様の現象が起きているものと考えられる.

5. 高タフネス素材・クモの糸

行雲流水.さて,ガラっと話を変えて,クモ糸の研究に移ろう.

クモの糸は,その多様で優れた機械的特性で知られ,特に牽引糸と呼ばれるクモが移動時に利用する糸は,合成高機能繊維に匹敵する強度と,天然繊維として最高レベルの靭性(破壊に対する抵抗力)を持つことが知られている44, 45).破断強度で鋼に匹敵する約1 GPa,破断ひずみでナイロンに匹敵する30%,靭性で130~200 MJ/m3にも達するため46–48),再生・生分解可能な持続可能素材として産業的にも大きな注目を集めており,いくつかの大量生産化の試みが成功の兆しを見せつつある49).一方で,人工クモ糸の物性はまだ天然のそれを再現するには至らず,クモ糸高機能発現メカニズムの解明が求められている.

クモ糸を構成するタンパク質はSpidroin(spider Fibroin)と呼ばれ,糸を作り出す臓器である絹糸腺の種類ごとに名づけられている.たとえば牽引糸は大瓶状腺(major ampullate)で作られることから,major ampullate Spidroin,略してMaSpと呼ばれる50).円網種のクモは7種類の糸を使い分け,それぞれに対応したSpidroin遺伝子を持つが,これら遺伝子はすべて単系統であることが系統解析から明らかになっている51).よって,すべてのSpidroinは相同なN末端およびC末端配列を持ち,この間を構成するリピート配列がそれぞれの糸の物性に寄与する(図4).Spidroinは通常の遺伝子よりも10倍程度の長さを持ち,たとえばMaSpは一般的に10 kbp以上であり,グリシンやアラニンを多く含むリピートユニットが数十個連なる構造を持つ.両末端はαヘリックス主体の立体構造を形成し,C末端はジスルフィド結合によって強固に二量化し,N末端は水素結合によって二量化する.リピート領域はIDRであり溶液中では主にランダムコイル構造をとるが,繊維中ではともに配向したリピート領域のうちポリアラニンによって構成される結晶領域が剪断応力などによってβシート構造へと転移し,このβスタッキングにより強固な繊維構造が形成されると考えられている52).このように,Spidroinを構成するリピート配列はその長さゆえにクモ糸の強靭さを支えるのであるが,長大なリピート配列は短い配列を大量に読むことに長けた一般的な超並列シークエンサーとの相性が悪く,Spidroinの全長配列の解析はなかなか進まず,高精度なリファレンスが存在しないことから牽引糸の構成成分の解析も限定的であった.そこで,我々は読める長さに制限のないナノポアシークエンサーを用いて配列の全長を得た上で,リピートユニットごとにアセンブルしたショートリード配列をマッピングする長鎖リピート配列のハイブリッドアセンブリーの手法を確立し53),さまざまな系統のクモで各種Spidroinのリファレンス配列の整備を進めた.

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図4 MaSp遺伝子配列の例

保存されたN/C末端に挟まれた数十個のリピート配列から構成される3000残基以上に及ぶ長大なタンパク質である.リピート配列は省略して表示している.プロテオーム解析で検出されるペプチドが赤枠で示してある.文献55よりCC BY 4.0に基づき転載.

牽引糸を構成するタンパク質はMaSpで,これには二つのパラログMaSp1とMaSp2が存在する,ということがこれまで基本的に信じられ,最新の総説でもいまだにそう記述するものが多い50).だが,実際には配列決定の困難さから,これまで見つかっていた遺伝子がこの二つであることにすぎない.我々は上述のハイブリッドアセンブリー法を用いて大型の円網を張るコガネグモ科のクモ,特に本邦でも身近なオニグモ(Araneus ventricosus)やジョロウグモ(Trichonephila clavata)などのほぼすべてのSpidroinの完全長配列を含む高精度なゲノムを決定したが,これらに新たなMaSpファミリーパラログであるMaSp3が存在することを見いだした54, 55).また,MaSp3は大瓶状腺で大量に発現し,プロテオーム解析からも牽引糸に実際にMaSp1やMaSp2と同等量含まれている主要な構成因子であることがわかった.さらに,高精度なリファレンス配列の存在により高感度な定量プロテオミクスを行うことが可能になり,牽引糸に重量比数%とわずかながらも常に含まれるSpidroin以外の低分子量タンパク質が複数種類同定された.これらの微量クモ糸構成成分は,糸の物性とその構成量比の多変量解析により物性に寄与することが示唆されたため,少量で物性に影響できることからSpiCE(spider-silk constituting element)と名づけた54, 55)

では,実際にMaSpパラログやSpiCEはどのようにクモ糸高機能発現に寄与しているのだろうか.MaSp1/2/3をそれぞれ大腸菌により合成し,その混合フィルムを作製したところ,どの組合わせでも単体と同じ逆並行βシート構造を示すピークが観察され,この三つのパラログが分子間相互作用を持つことが示された54)図5A).さらに,MaSp1のスペクトルはどちらかというと結晶構造寄り,MaSp2は非晶構造寄りのスペクトルを示し,それぞれ強度とひずみに特化している可能性が示唆された.MaSp3はその中間的性質を示すため,タフネスに効いているとも考えられ,この三つが合わさることで強度と伸度と強靭さという三つのクモ糸に特徴的な性質を反映している可能性がある.続いて,SpiCEの効果をみるため,同様にMaSp2に1%,3%,5%のSpiCEを添加したフィルムを作製した(図5B).結果,実際のクモ糸内構成量に近いわずか重量比1%の添加でフィルムの強度が2倍以上になり,それ以上の添加でも効果は変わらなかった.SpiCEはその名のとおり少量で出来栄えに花を添えるタンパク質であったが,量に依存して物性が変わらず,またその構成量もきわめて微量であることから,SpiCE自体が構造材料になっているというよりは,構造材であるMaSp間の相互作用を促進していることが考えられる.では,そもそも天然のクモ糸はどのように紡糸され,その過程でどのようにMaSpやSpiCEが相互作用するのだろうか.

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図5 クモ糸構成タンパク質の組合わせによる物性変化

(A) MaSp1/2/3を混合し作製したフィルムのWAXS(広角X線散乱)像.いずれも逆並行βシート構造を示す(210)や(040)のピークがみられる.(B) MaSp2とSpiCEを混合し作製したフィルムとその応力-ひずみ曲線.SpiCEを1%追加することで,破断強度が2倍以上になっている.文献54よりCC BY 4.0に基づき転載.

天然のクモ糸は,Spidroinから構成されるナノファイバーが幾重にも束になった階層構造をとっている.このように,繊維全体が綺麗に配向していることが分子間の相互作用を生み強靭な糸の機能発現を実現しているわけだが,そもそも絹糸腺内で水和しているタンパク質が,どのように繊維化して糸として脱水和するのだろうか.またしても,ここでLLPSが一挙主役に舞い降りる.絹糸腺は,糸が体外に放出される部位である糸疣に近づくにつれ,徐々にpHが低下し,最上流の中性(pH=8)から酸性(pH=5)に大きくシフトする.Malayらは,まず高濃度に置かれたMaSp2がリン酸塩存在化の中性pHでLLPSを引き起こすことを見いだした56).さらに,この中性pHで形成された液滴を酸性pHに変化させると,pH=5付近で急速に液滴が繊維化することがin vitroで確認された(図6).このLLPSを経て繊維化した状態に剪断応力を加えると,剪断方向に繊維が配向する.この配向したナノフィブリルがさらに束になって糸が形成されると,幾重にも階層的に繊維構造を持つ紡糸過程が再現されるのである.MalayらはさらにN末端やC末端を欠損させたMaSpコンストラクトを作製し,同様の紡糸過程を観察したところ,C末端が繊維化に,N末端がLLPSに必須であることを突き止めた56).C末端はジスルフィド結合によって二量体化するため,おそらくMaSp1はMaSp1と,MaSp2はMaSp2と,といったように,同一パラログ間の保存された残基で結合する.一方,N末端は水素結合による相互作用のため,MaSp1/2/3分子間の結合が可能になると考えられる.よって,現状まだエビデンスが不足しているが,SpiCEはこのパラログ間の相互作用ないしLLPSを促進することで構造を強固にしているのではないかと予想している.

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図6 pHに依存したMaSpのLLPS動態

中性pHで液滴(ドロップレット)が形成され,pHが酸性にシフトするに従って繊維化を引き起こす.文献56よりCC BY NC 4.0に基づき転載.

6. 非ドメイン型タンパク質の分子生物学

MaSpのLLPSが階層的なクモ糸の繊維構造を形成する上で重要な役割を担うことはMalayらの研究で初めて明らかになったが,クモ糸のように体外で用いるものに限らず,我々の体を構成する構造タンパク質はそれぞれある程度「固体」として存在することが重要であり,水和した状態で翻訳された部品が液固転移する際には幅広くLLPSが用いられる.たとえばエラスチンやコラーゲンなどの細胞外マトリックスを形成するタンパク質など,各種構造タンパク質が液固転移する際にLLPSを介すことが報告されている57).さらに,逆にこのような性質を利用して,LLPSを起こすことが知られているが構造タンパク質ではないもの,具体的には,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因遺伝子および病態関連分子として注目されるRNA結合タンパク質FUSや,カルシウム依存性リン脂質結合タンパク質アネキシンA11なども,LLPS後に剪断応力をかけることによってシルク様繊維をin vitroで形成させられることが報告されている58).そもそも,タンパク質のような高分子の相分離は,温度や濃度,さらにはpHや剪断応力などに応じて,顆粒状,液滴状,繊維状,マトリックス状のさまざまな様式をとりうるものであることが理論的,また実験的に示されており,これらは非膜オルガネラやさまざまな構造をとる際にある程度普遍的に利用されている性質である59, 60).クマムシのCAHS1は素過程として繊維化することで顆粒状ないし液滴状の凝集体を形成するが,これも環境条件によってはさらに繊維状やマトリックス状の構造をとる可能性もある.ただし,CAHS1のユニークな特徴は凝集が速やかかつ可逆的に解ける点であり,このゾル-ゲル転移は多くの場合不可逆なクモ糸のような液固転移とは一線を画すものであるが,これはCAHS1の熱処理でも維持されるきわめて高い可溶性や,可逆的な繊維化を素過程として重合を開始することによって実現されている可能性がある.一見まるで関係のなかったクモ糸MaSpタンパク質とクマムシCAHS1タンパク質は,LLPSを起こしタンパク質凝集体を形成するという巨視的には同一なクラスに属し,たとえば可溶性という軸で対称に位置すると考えることもできるのかもしれない.

CAHS1のような熱可溶性タンパク質はそのほぼ全長にわたって構造をとらない性質を持つため,全長がIDRによって構成されている.Spidroinもその大部分を占めるリピート領域はIDRである.IDR自体は全真核生物のタンパク質の実に33%が少なくとも部分的に持つため61),バイオインフォマティクス解析が進んでおり,IDRはそうでない領域に比べ顕著に高い進化速度,特に,挿入や欠失が頻繁に起こることが確認されている62).こういった早い進化速度に対応した置換マトリックスも複数提案されており63–65),ある程度の進化的距離まではこういった手法で保存性を探すことは可能かもしれない一方で,その進化速度の速さが類似性検索を困難にするケースも見つかってきている.たとえば,近年クマムシ固有タンパク質のような,全長にわたって構造をとらない熱可溶性タンパク質Heroタンパク質が,ヒトやショウジョウバエを含め普遍的に存在していることが見いだされ,なんとそのいくつかはアミノ酸組成を維持しながら一次配列をランダムにシャッフルしても機能が維持される例が見つかった66).このことはタンパク質の機能は配列によって決まり,重要な機能を持つ配列は種を超えて保存されるという分子生物学の根底をなす概念に挑戦するものである.同様に,放射線耐性を上昇させることが可能なクマムシのDsupタンパク質は,ヨコヅナクマムシとヤマクマムシという近縁な2種のクマムシ間でさえBLAST検索でヒットしないほど配列に変異が蓄積しているが,驚くことに遺伝子のシンテニーは保存されており,DNAをヒドロキシルラジカルから防御するという機能も保存されているようである39).さらに,CAHS1は緩歩動物門の一つの綱にしか保存されておらず,もう一つの綱の乾眠可能なクマムシは配列類似性がないが構造的に類似したアナログを持つことが示された67).クモ糸においてもリピートの配列はN/C末端の配列に比べてきわめて多様性が高く,MaSpファミリーのリピート配列のコンセンサスを得ることは現実的でない.よって,このような天然変性タンパク質の探索や進化的保存関係の解析においては,従来の配列類似性に基づく方法に限定せず,アミノ酸組成や二次構造・アミノ酸性質プロファイルなどによって探索する新規な手法が必要になってくる可能性がある.分子生物学はこの20年間でゲノム配列という強力なツールを得て大きく進展し,そこには進化的・機能的に関連がある遺伝子は配列の類似性もある,つまりなんらかの「ドメイン」が存在するということをある程度前提に発展してきたが,実はまだゲノム中には配列的類似性がなく,分子間相互作用もLLPSを介すような緩やかなものしかないような未開拓領域が多数残っているのかもしれないのである.なかなかに挑戦的な事実であるが,このような「非ドメイン型タンパク質」の解析によって生命システムに対する理解がいっそう深まることを期待しつつ筆をおく.

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著者紹介Author Profile

荒川 和晴(あらかわ かずはる)

慶應義塾大学先端生命科学研究所教授.博士(政策・メディア).

略歴

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修了.博士(政策・メディア).日本学術振興会特別研究員(PD),慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究助手,同特任講師,同特任准教授,同環境情報学部准教授を経て,2022年より現職.

研究テーマと抱負

《最強生物》クマムシ乾眠を通じて物質–生命の境界を探究し,《最強素材》クモ糸高機能発現メカニズムの解析から情報–生命の連関を解明する.

ウェブサイト

http://bioinformatician.org

趣味

旅・料理・登山・プラモデル.

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