Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 94(4): 537-547 (2022)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940537

特集Special Review

生物材料・生体機能発現と液–液相分離クマムシ乾眠とクモの糸Liquid–liquid phase separation seen in tardigrade anhydrobiosis and spider silk spinning

1慶應義塾大学先端生命科学研究所Institute for Advanced Biosciences, Keio University ◇ 〒997–0017 山形県鶴岡市大宝寺字日本国403–1 ◇ Nihonkoku 403–1, Daihoji, Tsuruoka, Yamagata 997–0017, Japan

2慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科Graduate School of Media and Governance, Keio University ◇ 〒252–0882 神奈川県藤沢市遠藤5322 ◇ 5322 Endo, Fujisawa-shi, Kanagawa 252–0882 Japan

3自然科学研究機構生命創成探究センターExploratory Research Center on Life and Living Systems (ExCELLS), National Institute of Natural Sciences ◇ 〒444–8787 愛知県岡崎市明大寺町字東山5–1 ◇ 5–1 Higashiyama, Myodaiji, Okazaki, Aichi 444–8787, Japan

発行日:2022年8月25日Published: August 25, 2022
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“最強生物”クマムシは乾燥に伴う可逆的な生命活動の停止である乾眠によって,宇宙真空への直接曝露を含むあらゆる極限環境に耐性を持つ.“最強素材”クモの糸は,鋼を上回る強度とナイロンを上回る伸縮性を併せ持った最もタフな素材であり,再生・生分解可能な持続可能タンパク質素材として産業的にも大きな注目を集めつつある.近年私が研究対象としているこの二つの特異な生命現象の両方において,その機能発現に液–液相分離が不可欠な役割を担っていることが明らかになってきた.本稿ではこの二つの“最強”な研究対象について紹介するとともに,液–液相分離が果たす多様な役割について議論する.

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