相分離とMAPKシグナル伝達制御のクロストーク~がん治療標的としてのストレス顆粒~
近畿大学薬学部分子医療・ゲノム創薬学研究室 ◇ 〒577–8502 大阪府東大阪市小若江3–4–1
発行日:2022年8月25日
液–液相分離は“ストレス顆粒”に代表される「膜を持たない細胞内オルガネラ」の形成を介してストレス応答,遺伝子発現制御,シグナル伝達などさまざまな生理的役割を担う.特にストレス顆粒が,MAPKをはじめとした細胞内シグナル伝達ネットワークを時空間的に制御する「シグナル伝達のハブ」として,種を超えた役割を担うことが明らかになりつつある.興味深いことに,酵母からヒトに至る真核生物において,増殖やがん化をつかさどるシグナル伝達経路がストレス顆粒の形成を制御することが報告されている.さらには,ストレス顆粒の形成異常ががんの進展と密接に関わることからも,“ストレス顆粒を標的としたがん治療”というコンセプトは強い注目を集めている.本稿では,「MAPKシグナル制御機構におけるストレス顆粒の役割」,さらには新たながん治療標的としてのストレス顆粒のポテンシャルについて,筆者らの最新の研究成果をまじえて概説する.
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