疾患関連タンパク質の液–液相分離とアミロイドの生成・脱凝集
国立研究開発法人理化学研究所 脳神経科学研究センター ◇ 〒351–0198 埼玉県和光市広沢2–1
発行日:2022年8月25日
多くのタンパク質やRNAが可逆的な液–液相分離を生じることによって2~5 µmほどの小さな粒子,液滴を形成する.特に凝集性が高く,神経変性疾患に関わるようなタンパク質は液–液相分離を起こしやすく,また,相分離は細胞内環境の変化や遺伝子変異によって不可逆的に凝集形成へと移行しうる.その不可逆的な凝集産物として,線維状のタンパク質凝集体であるアミロイドの生成があげられる.細胞内環境の違いによってさまざまな大きさや性質を持つ液滴が生成し,それが最終的に生じるアミロイドの構造多型,ひいては異なる病的影響をもたらすことも示唆される.本稿では神経変性疾患に関連するタンパク質の液–液相分離現象や,その平衡状態が偏った結果として生じるアミロイドについて,液–液相分離の広がりという観点から最近の知見を紹介したい.
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