Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会
Journal of Japanese Biochemical Society 94(6): 875-881 (2022)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2022.940875

特集

選択的スプライシングと,がんのワールブルグ効果

1宮城県立がんセンター研究所がん薬物療法研究部 ◇ 〒981–1293 宮城県名取市愛島塩手字47–1

2東北大学大学院医学系研究科腫瘍生化学分野 ◇ 〒980–8575 宮城県仙台市青葉区星陵町2–1

発行日:2022年12月25日
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解糖系酵素ピルビン酸キナーゼM(PKM)には構成的活性型のPKM1, 条件的活性化型のPKM2という二つのスプライシングアイソフォームが存在し,大半のがんがPKM2を選択的に発現する.かつて,PKM2はワールブルグ効果の形成を通じて腫瘍細胞に代謝上の有利をもたらすとされたが,PKM2欠損マウスの表現型は“がん促進”だった.筆者らは,Pkmの選択的スプライシング制御を固定化した新たな遺伝子改変マウス群を作製し,がんや代謝制御におけるPKM1・PKM2の役割を再訪した.マウス発がん試験や細胞移植実験などによって,真に腫瘍促進的なのは,PKM2ではなく,むしろPKM1の方であることがわかった.実際にPKM1を高発現し,その生存・増殖をPKM1に依存する高悪性がんの存在も明らかになってきた.

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