病的・恒常的炎症環境を創り出す直鎖状ユビキチン鎖修飾系
京都大学大学院医学研究科細胞機能制御学 ◇ 〒606–8501 京都市左京区吉田近衛町
発行日:2023年4月25日
ユビキチン鎖によるタンパク質翻訳後修飾系は,構造的に異なる複数のユビキチン鎖の形成を可能とし,多岐にわたる細胞内シグナル経路を駆動させることで多彩な細胞内生理機能に関与する.筆者らが着目する直鎖状ユビキチン鎖はTNFやIL-1β,TLRリガンドなど特定の細胞外刺激に応答して一過性に形成され,NF-κBシグナルの活性化や外因性細胞死抑制機能を果たす.炎症環境下,炎症応答シグナルを増幅させ,同時にデスリガンドによる細胞死効果を無力化する直鎖状ユビキチン鎖によるこれらの特異な機能は,個体で生じるさまざまな生理イベントにおける炎症寛容機構として重要な役割を果たしている.本稿では,この炎症寛容機構を基盤とする組織形成・恒常性維持のメカニズムや,この機構の過剰亢進・破綻に基づき発症する炎症性疾患やがんなどの病態機序について概説する.
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