Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会
Journal of Japanese Biochemical Society 95(4): 419-427 (2023)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2023.950419

特集

腸内デザインが切り拓く新たな健康維持基盤の創出

1慶應義塾大学先端生命科学研究所 ◇ 〒997–0052 山形県鶴岡市覚岸寺字水上246–2

2順天堂大学大学院医学研究科 ◇ 〒113–8421 東京都文京区本郷2–1–1

3神奈川県立産業技術総合研究所 ◇ 〒210–0821 神奈川県川崎市川崎区殿町3–25–13

4筑波大学医学医療系 ◇ 〒305–8575 茨城県つくば市天王台1–1–1

5株式会社メタジェン ◇ 〒997–0052 山形県鶴岡市覚岸寺字水上246–2

発行日:2023年8月25日
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ヒトの腸管内にはさまざまな腸内細菌が生息しており,それらが宿主細胞と相互作用することで複雑な腸内微生物生態系を形成している.特に大腸内は,地球上において最も高密度に細菌が存在する場所の一つであるが,その理由として腸内細菌の栄養素が豊富に存在する点があげられる.食物繊維やオリゴ糖,難消化性タンパク質などの未消化物が腸内細菌のエサになるが,それらは腸内細菌により分解され,さまざまな代謝物質が産生される.これらの代謝物質が,宿主の栄養素や機能性成分として作用することで健康維持や生理機能の向上,あるいはその逆に疾患発症などに影響を及ぼすことが近年の研究で続々と明らかになっている.しかしながら,腸内細菌叢は個々人で異なるため,適切な介入方法も腸内環境に合わせて層別化する必要がある.本稿では,メタボロゲノミクスによる個々人で異なる腸内環境を基盤とした研究成果を紹介するとともに,腸内環境を「見る・知る・操る」の3段階で実現する「腸内デザイン」の展望について解説する.

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