腸球菌V型ATPアーゼ反応過程の構造解析
自然科学研究機構生命創成探究センター ◇ 〒444–8585 愛知県岡崎市明大寺町字西郷中38
発行日:2024年2月25日
腸球菌(エンテロコッカス)V型ATPアーゼは,腸球菌の原形質膜にあるATP駆動型のナトリウムポンプである.その構造の複雑さから,複合体全体の構造は不明であったが,我々は位相差クライオ電子顕微鏡法を用いることにより世界で初めてその全体構造を明らかにした.本酵素では,メインの三つの構造変化に加えてその途中に反応中間体が観測され,合計六つの構造変化を繰り返す.しかし,その実態は不明であった.また,ATP活性部位とイオンチャネル部位とをつなぐ回転子がこれよりもサイズの大きなイオン輸送リングをどのように回転させるのかも謎であった.我々はクライオ電子顕微鏡法を駆使することで,これら六つの反応過程における構造変化に加えて,腸球菌V型ATPアーゼ特有の回転子の運動も明らかにすることができた.本稿では,この構造解析に至った過程を紹介する.
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