Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 96(2): 152-161 (2024)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2024.960152

特集Special Review

高次脳機能の制御基盤としての海馬の糖鎖Recent research of hippocampal glycans as control substrates for higher brain functions

九州大学大学院医学研究院神経解剖学分野Department of Anatomy and Neuroscience, Graduate School of Medical Sciences Kyushu University ◇ 〒812–8582 福岡県福岡市東区馬出3–1–1 ◇ 3–1–1 Maidashi, Higashi-ku, Fukuoka 812–8582, Japan

発行日:2024年4月25日Published: April 25, 2024
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中枢神経系にさまざまな糖鎖が存在することは古くから知られていた.大脳皮質や海馬のGABAニューロンの周囲にペリニューロナルネットと呼ばれる糖タンパク質からなる特殊な細胞外マトリックス構造が形成されていることについては,多くの優れた解剖学的研究がある.しかしながら,その機能の研究は遅々として進まず,ペリニューロナルネットが神経可塑性の制限や精神神経疾患の病態に関わっていることがわかってきたのは,比較的最近のことである.また,神経発生において糖鎖が重要な役割を果たしていることについては研究の蓄積がある一方で,成体における神経新生を維持する微小環境(ニッチ)としての細胞外マトリックスに関する研究は少ない.我々は近年,海馬のペリニューロナルネットと神経新生のニッチに着目し,糖鎖の機能を明らかにすることを目的とする基礎研究に取り組んできた.本稿では,高次脳機能の制御基盤としての海馬の糖鎖の機能について,概説を行う.

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