宿主セラミドを利用する偏性細胞内寄生細菌クラミジア
国立感染症研究所 品質管理研究センター ◇ 〒162–8640 東京都新宿区戸山1–23–1
発行日:2024年8月25日
性器感染症などを引き起こす偏性細胞内寄生細菌クラミジアは,寄生細胞内で封入体と呼ばれる膜区画を形成してその中で増殖する.その際,スフィンゴミエリンやスフィンゴ糖脂質の前駆体であるセラミドを小胞体からゴルジ体に運ぶ脂質転送タンパク質CERTをハイジャックして,宿主の合成したセラミドが封入体に流れるように仕向ける.最近,クラミジア感染細胞では,宿主ゲノムがコードするスフィンゴミエリン合成酵素に依存せずにセラミドをスフィンゴミエリンに変換できること,そして,この活性は新規抗クラミジア剤の分子標的になりそうなこともわかってきた.本稿では,クラミジアの生物学的な特徴やヒト感染病原体としての基礎情報を述べた後に,クラミジアがシンプルかつ巧妙な手口でCERTをハイジャックする仕組みを紹介し,最後に,クラミジアがセラミドをなぜ必要とするのかについても考察する.
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