Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 96(4): 531-536 (2024)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2024.960531

特集Special Review

寄生原虫赤痢アメーバが合成する超長鎖ジヒドロセラミドの役割Crucial role of very long chain dihydroceramides during Entamoeba encystation

長崎大学熱帯医学研究所・共同研究室 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科原虫生化学分野Central Laboratory, Institute of Tropical Medicine (NEKKEN), Nagasaki University ◇ 〒852–8523長崎県長崎市坂本1丁目12–4 ◇ 1–12–4 Sakamoto, Nagasaki 852–8523, Japan

発行日:2024年8月25日Published: August 25, 2024
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赤痢アメーバは,アメーバ症を引き起こす単細胞真核生物の寄生虫である.その生活環は,栄養体とシストの二つのステージからなり,シストがヒトへの唯一の感染形態である.シスト形成過程中,短時間内に膜構造や細胞小器官の劇的な変化が観察される.近年,シスト形成に伴う脂質組成の変化の網羅的解析により脂質代謝のダイナミックな変動が明らかになった.その一つ,セラミドは,アシル基が超長鎖(炭素数が26以上)のジヒドロセラミドがシスト形成期特異的に急増していた.この超長鎖ジヒドセラミドの合成・蓄積はコレステロール硫酸によって制御されており,蓄積の結果,細胞膜透過性の低下を誘導した.膜透過性低下は,宿主内外での環境変化への耐性獲得の重要な機構である.つまり,超長鎖ジヒドセラミド・コレステロール硫酸という脂質が,宿主間伝播を成立させる寄生適応戦略の一つを担っていることが明らかになった.

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