タンパク質合成におけるtRNA修飾の構造機能相関
東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻 ◇ 〒113–8656 東京都文京区本郷7–3–1東京大学工学部3号館
発行日:2025年6月25日
地球上の生命は,DNAに書かれた遺伝情報をもとにタンパク質を合成する.4種類の塩基が三つ組で一つのコドンとなり,アミノ酸を指定するという考え方は,「セントラルドグマ」として生命科学の根幹をなす,最も美しい原理の一つである.しかし,64通りの遺伝暗号をどのような仕組みで正確に解読しているのかは,古典的なテーマでありながら,いまだ完全には解明されていない.リボソーム上では,mRNA上のコドンがtRNAによって解読されるが,コドンの正確かつ効率的な解読は,タンパク質合成の精度や生産性に直接関わる重要な仕組みである.特に,tRNAのアンチコドンに存在する修飾が,コドン解読において重要な役割を演じていることが知られているが,最近の研究により,修飾側鎖がどのような仕組みでコドンを認識するか,についての分子基盤が明らかになってきた.さらに,tRNA修飾によって適切な翻訳速度を保つことが,mRNAの安定性やプロテオスタシスの維持に直接関与していることも判明している.本稿では,タンパク質合成におけるtRNA修飾の役割について概観するとともに,最新の知見について解説する.
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