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公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 97(3): 304-308 (2025)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2025.970304

みにれびゅうMini Review

受容体型チロシンキナーゼのエンドサイトーシスによる細胞の糖代謝制御Regulation of carbohydrate metabolism through endocytosis of receptor-type tyrosine kinases

北里大学医学部生化学Department of Biochemistry, Kitasato University School of Medicine ◇ 〒252–0374 神奈川県相模原市南区北里1–15–1 ◇ 1–15–1 Kitasato, Minami-ku, Sagamihara, Kanagawa 252–0374, Japan

発行日:2025年6月25日Published: June 25, 2025
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1. はじめに

「解糖系」は細胞の炭素代謝の中心に位置づけられ,個体の発生・恒常性維持,がん細胞の代謝特性獲得,幹細胞性の維持などの多くの生命現象に関与する1, 2).これまでに,解糖系を構成する輸送体や酵素群が転写,翻訳,翻訳後修飾,細胞内局在など複数のレベルで調節されることが多く報告されている3, 4).これら既報の制御に加え,最近筆者らが実施した受容体型チロシンキナーゼ(receptor-type tyrosine kinase:RTK)による情報伝達の解明を目指した研究から,思いがけず,RTK活性化に伴う細胞内小胞の生成と輸送が細胞のグルコース代謝に直接的に関与することが見いだされた5).本稿では同研究の背景・内容を概説する.

2. 解糖系

教科書に記載のとおり,「解糖系」と呼ばれる代謝経路のうち真核生物において典型的なものが1分子のグルコースを2分子のピルビン酸に異化しATPとNADHを2分子ずつ得るエムデン-マイヤーホフ経路であり,一連の反応は細胞質で起こるとされている.解糖系の最初の過程である細胞内へのグルコースの取り込みは細胞膜上の輸送体に依存しているとされ,双方向性受動輸送を行うグルコース輸送体(GLUT, SLC2A)ファミリーのうちクラスIに分類されるGLUT1~4および14と細胞内外のナトリウムイオン濃度差で駆動するナトリウム-グルコース共輸送体(SGLT, SLC5A)ファミリーが寄与する6, 7).GLUT1は全身の細胞に発現するのに対し,GLUT2~4および14ならびにSGLTファミリーはそれぞれ組織特異的な発現パターンを示す.

細胞内に移行したグルコースは,ヘキソキナーゼ(HK)によるリン酸化で細胞外への再放出が抑制され,その後,グルコース-6-リン酸イソメラーゼ(GPI),ホスホフルクトキナーゼ(PFK),アルドラーゼ(ALDO),トリオースリン酸イソメラーゼ(TPI),グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH),ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK),ホスホグリセリン酸ムターゼ(PGAM),エノラーゼ(ENO),ピルビン酸キナーゼ(PK)による反応を経てピルビン酸に至る.一方で,これら解糖系を構成する各酵素の細胞内局在は,The Human Protein Atlas(https://www.proteinatlas.org/)によると(2024年12月時点),細胞質にほぼ局在しないとされる酵素もあり,また,一部が細胞質にも局在する酵素でもミトコンドリア,細胞膜,小胞体,核,細胞内小胞など細胞質以外に局在するものも多い(図1A).特にHKに関しては,HK2の一部が細胞質に局在するといわれているものの,HK1・HK2ともにミトコンドリア外膜への局在が顕著であり(図1B),解糖系の各過程は細胞質で一様に起こるという単純なものではなさそうである.しかしながら,解糖系の各段階の反応がそれぞれ細胞内の離れた場所で起こるというモデルは非効率に思える.これに対し,解糖系酵素群(の一部)が一時的にでも複合体形成や局在化による局所濃度上昇を介して連鎖的反応を担うというモデルはよい解決策に思える.実際にトリパノソーマでは解糖系に特化したグライコソームと呼ばれる小器官が報告されている8)が,哺乳動物細胞ではそのような構造は見いだされていなかった.

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図1 解糖系酵素群の細胞内局在

(A) The Human Protein Atlas記載の解糖系酵素群の細胞内局在一覧.太字は細胞質以外を示す.(B) マウス線維芽細胞におけるHK1(上)およびHK2(下)(黄色),ならびにミトコンドリアマーカーのTOMM20(シアン)の免疫蛍光染色像.白枠内の拡大像を右に示す(文献5より抜粋・改変,Creative Commons CC BY).

3. RTKによる細胞内情報伝達と解糖系制御

上皮増殖因子受容体(EGFR),血小板由来増殖因子受容体(PDGFR),血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)やインスリン受容体などを含むRTKファミリーは,一般にそれぞれ細胞外にリガンド結合ドメイン,細胞内にチロシンキナーゼドメインを有する一回膜貫通型タンパク質で構成される.これらは細胞膜上でリガンドである細胞外の増殖因子と結合して二量体化・活性化し,細胞内ドメインのチロシン自己リン酸化と足場タンパク質や情報伝達タンパク質との会合・活性化を介して下流情報伝達経路の亢進により転写依存的・非依存的に増殖・生存・分化・運動などさまざまな細胞機能を惹起する9)

解糖系もRTKの下流情報伝達を介して制御されうることが知られており,たとえば,RTKや下流情報伝達経路が遺伝子変異・増幅等により活性化しているものも含め,多くのがん細胞では解糖系関連酵素群の発現亢進がみられ,ワールブルク効果と呼ばれる解糖系の相対的活性化に寄与している1).転写以外でのRTKを介した解糖系の一過性制御としては,インスリン刺激による細胞へのグルコース取り込みの亢進が特に有名である.インスリン受容体-PI3K経路の活性化により,非刺激時は細胞内小胞に格納されているGLUT4が細胞膜に移行し細胞表面のグルコース輸送体量が増加する10).この機構は個体の血糖値維持などエネルギー恒常性に寄与するが,GLUT4の発現は脂肪組織や横紋筋に限られ,必ずしも全身の細胞に共通ではない.一方ですでに1970年代には,他の増殖因子も細胞のグルコース代謝を急激に亢進させることが,たとえばGLUT4を発現していないマウス線維芽細胞に対するEGF刺激などで知られていた11).この変化は刺激後15分で起こり転写・翻訳を介していない可能性が高く,RTKを介した情報伝達によるGLUT4以外のグルコース輸送体や解糖系酵素の直接的な活性や局在の制御が寄与していると推測されるが,長らく詳細な分子機構は不明であった.VEGF刺激により惹起されるプロテインキナーゼCの活性化を介したGLUT1のセリン残基のリン酸化がグルコース取り込みの亢進に寄与することが報告されているが12),これが増殖因子依存的な細胞糖代謝制御の共通の分子機構であるかは不明であった.

4. RTKエンドサイトーシス

情報伝達に加えて,増殖因子により活性化した細胞表面のRTKはエンドサイトーシスによって生じる細胞内小胞(以下,エンドサイトーシス小胞)に移行する13).直径およそ100 nm程度のエンドサイトーシス小胞に移行したRTKは,小胞の輸送・成熟・融合に伴い初期エンドソームから,後期エンドソームを経てリソソームに移行するか,リサイクリングエンドソームを経由して細胞膜に戻される13).いずれにせよ一時的にでも細胞膜上のRTK量を減じることから,歴史的にはRTKエンドサイトーシスは増殖因子による情報伝達亢進に対するネガティブフィードバックであると考えられてきた.

一方で,増殖因子によるRTK活性化とエンドサイトーシスはほぼ同時に起こることから,RTKによる細胞内情報伝達が細胞膜ではなくこのようなエンドサイトーシス小胞上で惹起されている可能性が長く指摘されており14),RTKエンドサイトーシス小胞が細胞表面受容体の隔離・減弱以外にも情報伝達の起点としての生物学的機能を持つことが推察された.しかしながら,同小胞が実際にどのような分子で構成されているかの網羅的解析は,簡便かつ特異的な単離法がなかったこともあり,これまでほとんど報告されていなかった.

5. 磁性ナノ粒子を用いたRTKエンドサイトーシス小胞単離法の開発

筆者らは,RTKエンドサイトーシス小胞生成の際にその内部に入り込みうる直径10 nmの磁性ナノ粒子を用いることにより,同小胞の簡便かつ効率的な単離法を確立し(図2),マウス線維芽細胞に対するPDGF刺激をモデルとしてPDGFRエンドサイトーシス小胞構成タンパク質の網羅的同定を試みた5).質量分析とイムノブロットなどによる確認の結果,期待どおり,同小胞に多数の情報伝達タンパク質が集積していることが明らかとなり,同小胞が情報伝達の起点となるとの説を強く裏づける結果となった.ところが意外なことに,上記情報伝達タンパク質に加えて,網羅的解析やその後の免疫蛍光染色や異なる抗体の近接を検出するproximity ligation assay(PLA)により,グルコース輸送体の一つであるGLUT1やHK1/2をはじめ解糖系(エムデン-マイヤーホフ経路)を構成する酵素群のほとんどが同小胞に集積または近接していることが確認された.これらから,PDGFRエンドサイトーシス小胞には細胞膜由来のGLUT1が取り込まれて,また,同小胞の細胞質側に解糖系酵素に富んだ領域が存在していることが推定された.

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図2 磁性ナノ粒子を用いたRTKエンドサイトーシス小胞単離法

磁性ナノ粒子を付加した増殖因子で細胞を処理して粒子をエンドサイトーシス小胞に移行させた後,細胞表面に残った粒子を洗浄・除去し,細胞を破砕,磁気カラムにより粒子を含む小胞のみを濃縮する.

6. RTKエンドサイトーシス依存的な細胞グルコース取り込みの亢進

上記のとおりGLUT1がPDGFRとともに細胞膜表面からエンドサイトーシス小胞に移行することから,当初,増殖因子により細胞のグルコース取り込みが減少することが予想されたが,2-デオキシグルコースの細胞内でのリン酸化を指標とする実験により,実際には前述の歴史的なEGFによる実験11)と同様に,PDGF刺激後10分間での細胞のグルコース取り込みが顕著に増大した.検討の結果,この増大はGLUT1に依存し,また興味深いことに,PDGFRによる情報伝達ではなく,むしろPDGFRエンドサイトーシス小胞の生成・輸送という膜動態に依存していた.さらに,PDGFRエンドサイトーシス小胞がミトコンドリア近傍に輸送されること,同小胞がグルコースを含有し周囲の細胞質にグルコースを放出すること,同小胞単離画分が解糖酵素活性を持つことなどが明らかとなった.これらから,PDGFRエンドサイトーシス小胞は細胞外のグルコースを取り込みHK1/2が局在するミトコンドリア外膜近傍までグルコースを運搬し,そこにその他の解糖系関連酵素群が集積しているという結論に至った(図3).このような機構はPDGF以外の複数の増殖因子でもみられ,また,少なくとも検討したいくつかのRTK過剰発現がん細胞株でも観察されたことから,多くの増殖因子や細胞種に共通するものであることが推察される.

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図3 RTKエンドサイトーシスによる細胞の糖代謝制御

解糖系の各反応が一様に細胞質で起こるというモデル(左)に対し,今回の研究の結果から推定される膜構造動態による動的な細胞代謝制御機構(右)の模式図.RTKエンドサイトーシス小胞が解糖系酵素群が集積する小胞-ミトコンドリア近傍領域に輸送され,小胞に含まれるグルコースがGLUT1依存的に細胞質に放出される.

細胞は,非刺激時には既存モデルのような細胞表面の輸送体を介したグルコース取り込みによる糖代謝を,刺激時にはそれに並行して今回発見したRTKエンドサイトーシスに依存した糖代謝を行っていると推定される.細胞の代謝全体に対するこのような動的な糖代謝制御の重要性はその細胞の環境によることが推測され,実際にRTKエンドサイトーシスは特に低グルコース環境下では細胞の解糖系をはじめとする炭素代謝全体の維持や細胞の生存に必須であった.これらの結果は,今回発見したRTKエンドサイトーシスによる細胞糖代謝制御が生理的・病態生理学的に重要であることを強く示唆する.

7. おわりに

今回,細胞内小胞の生成と輸送という膜動態に依存し,また,これまで定常的なグルコース取り込みに寄与すると考えられてきたGLUT1に依存的な,増殖因子による動的な細胞糖代謝制御機構が明らかとなった.加えて,これまで教科書的には哺乳動物細胞でも「グルコースは細胞膜を通して細胞内に移行し細胞質で代謝される」と漠然と説明されてきた解糖系による代謝が,経路を構成する各酵素の細胞内での局在制御によって調節されうることが推察された(図3).近年,本研究のほかにも細胞内小胞への解糖系酵素の集積が示唆されてきており(文献15など),これまで細胞表面のグルコース輸送体量や解糖系酵素の発現量での説明が多かった細胞糖代謝調節の分子機構について再検討の必要性が示唆されるとともに,小胞を介したグルコース輸送の分子機構の詳細の解明が望まれる.また,生理的なグルコース濃度においても今回発見した機構が細胞の生存に重要であったことから,今後,本現象とがんをはじめとする各種疾病との関連の精査が求められる.加えて,本研究で用いた磁性ナノ粒子を用いた細胞内小胞単離法は,RTK以外にも応用可能であり,エンドサイトーシス小胞研究のさらなる進展が望まれる.

謝辞Acknowledgments

研究の遂行にあたり,北里大学 堺隆一教授,東北大学 斎藤芳郎教授,ニューヨーク大学 B. Ueberheide教授,F.X. Liang教授,B.G. Neel教授にご助力いただきました.あらためてお礼申し上げます.

引用文献References

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著者紹介Author Profile

堤 良平(つつみ りょうへい)

北里大学医学部生化学(堺単位)講師.博士(理学).

略歴

2006年北海道大学大学院理学研究科修了,博士.国立長寿医療センター研究所,生理学研究所,東京大学医学部助教,トロント大学/PMCC,ニューヨーク大学/PCC,東北大学大学院医学系研究科助教,同薬学系研究科助教,同講師,AMED出向を経て2022年より現職.

研究テーマと抱負

タンパク質の翻訳後修飾と局在制御による細胞内情報伝達機構の解析に携わってきました.今後も様々な技術を取り入れつつ未知の現象の解明に努めたいと思っています.

趣味

ジャズ音楽,転居.

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