Online ISSN: 2189-0544 Print ISSN: 0037-1017
公益社団法人日本生化学会 The Japanese Biochemical Society
Journal of Japanese Biochemical Society 97(4): 403-414 (2025)
doi:10.14952/SEIKAGAKU.2025.970403

特集Special Review

心血管系組織に対する低分子量GTP結合タンパク質RhoAの新たな分子作用機序Novel roles and functions of a small GTPase RhoA in cardiovascular physiology and pathology

滋賀医科大学生化学・分子生物学講座分子病態生化学部門Division of Molecular Medical Biochemistry, Department of Biochemistry and Molecular Biology, Shiga University of Medical Science ◇ 〒520–2192 滋賀県大津市瀬田月輪町 ◇ Seta Tsukinowa-cho, Otsu, Shiga 520–2192, Japan

発行日:2025年8月25日Published: August 25, 2025
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細胞レベルにおけるRhoAの機能は,アクチン細胞骨格の制御などを含めて,これまでの研究から多くの点が解明されてきた.しかし,その心血管系組織における役割については十分に解明されているとはいいがたい.心筋および血管平滑筋におけるRhoAコンディショナルノックアウトマウスは,それぞれ心機能障害による心不全,腹部大動脈瘤を発症することから,RhoAは心血管系組織において保護作用的に作用すると考えられる.逆に,心筋にRhoAを過剰発現させたマウスは心不全により,生後早期に死亡する.このことはRhoAの心筋障害性を示唆している.また,RhoA下流のエフェクター分子ROCKは肺高血圧の発症や増悪に関わっているとの報告がある.すなわち,RhoAとそのシグナル伝達系には心血管保護と障害という二面性がある.最後に,RhoAの分子作用機序をもとにした新たな治療薬開発など臨床医学的な応用面についても述べる.

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